07 積み木くずし


 車内は無言だったが、そば屋へ着くなり宇髄は言葉通り、いつもの宇髄に戻っており、笑顔で義勇にメニュー表を渡してくる。
「俺はやっぱ、そば屋に来たら天ざるそばかな。お前は?」
「あったかいのがいいから、俺はかき揚げそばにする」
「あとはー……じゃあ、たこの揚げたのと枝豆と揚げ出し豆腐、二人でシェアして食うか。じゃ、店員呼ぶ」
 ここのそば屋はどうやら温かな茶がお冷の代わりらしい。この寒い日に、ありがたいことだ。
 ゆっくりと熱い湯呑みを持ち、中身を傾けると宇髄がじっと義勇の方を見ていることが分かり、不思議に思いながら見つめ返すとゆるっと表情が緩み、こんなことを言ってきた。
「キレーな顔、してんだよなあ……。こういうのを、愛憎って言うのかな」
「なんの話だ」
「いや、俺はお前のこと好きだけどさ、だけど時々……ものすごく憎く思える時もあるんだよな。大抵、それはお前が俺以外のやつと話してたりする時なんだけど、今までそんな風に思ったことなかったから、やっぱ、お前は特別なんだなって」
「今はどう思ってるんだ。愛しい?憎たらしい?」
「そんなん、決まってんだろ。憎くて憎くてたまんねえよ」
「……そうか。でも、好きなんだろう?俺のこと」
「好きだな。だからこそ、ここまで憎めるんだと思う。愛してえよ?お前のこと、愛していたいけど……人間って、そんなに上手くできてねえのな。俺はそれが、すげえ悲しい」
 その後、二人は和やかとまではいかないが普通に接し、普通に晩めしを食し、宇髄が金を支払って外へと出る。
 ふと空を見上げると空気が澄んでいるからか星の瞬きがよく見え、宇髄の袖を引いて二人で顔を上に向けて空を眺める。
「空、きれいだな。満天の星空だ」
「ああ、空よりもお前の方がずっと、キレーだけどな。そのキレーな顔がイク時になるとすっげ、色っぽくなるんだよな。今日も見せてくれんだろ?」
「……まあ、そうだな。そうなるな。お前に抱かれれば」
「ホテル、行くぞ。一刻も早く二人きりになってめちゃくちゃにしてやりてえ。空なんかいいから、さっさと車乗れ」
「分かった……」
 一緒に空を眺めて楽しむことすら許されないとは。
 残念な気持ちを胸に車へと乗り込むと、運転席に座った宇髄がポケットの中をがさがさと探り、そしてあるものを義勇に差し出して来た。
「ガム、食う?」
「ん?ガム……あ、このガムって……懐かしい。フーセンガムだ」
「やるよ。食後の口直し」
 少し気分が上昇し、車の中では揃って二人でガムを噛んでは膨らませて遊んで道中を過ごした。こういう遊び心のある所も、好きな部分だ。
 久しぶりに噛んだガムはどこか懐かしい味がして、ホテルへ着くとガムのごみは宇髄の車の中に入れてあるゴミ箱へ投下され、車から出ると宇髄が後部座席のドアを開けた。そして、いつも持って出る愛用のバッグの他に中から大きくもなく、かといって小さくも無い微妙なサイズの手提げの不織布でできた黒い袋を取り出してドアを閉める。
 その途端、袋の中からカチャッといった何か硬いものがぶつかり合う音がして、いやな予感を覚える義勇だ。大体、いつも宇髄はホテルへ入る時、普段使いのバッグしか持ち出さない。何故ならバッグの中にローションを入れて持ち歩いているため、あのような不織布のバッグを持ち出したことない。今日が初めてだ。
 オートロックで車の鍵を閉め、宇髄と連れ立ってフロントを通った。やはり今回も既に部屋は予約済みで、フロントでカードキーを受け取ると義勇を手招いた宇髄はエレベーターに乗り込んでしまう。慌てて後を追う形でエレベーターに乗ると『7』という数字が押され、今日は七階の部屋だということを知る。
 エレベーターは一度も止まることなく七階まで上がり、宇髄が先導する形で部屋まで行き、まず義勇を中へ入れ、宇髄が後ろから入ってきて扉を閉めた。
 今からは風呂の時間だ。いつもの如くナマの中出しを迫られるだろうから、それなりの準備をしなければならない。
 半分溜息を吐き、そのまま歩き出そうとすると手首を取られ、強引に後ろを振り向かされる。
 視界が反転し、目の前には宇髄の整った顔がある。あっという間に唇を奪われ、宇髄の両腕は義勇の腰に回り、まるで折り込むように腕を使って腰を締め上げてくる。

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