04 積み木くずし


 そのうちにだんだんと緊張していた身体が弛緩し、立っているのも困難になった義勇の身体が傾ぎそうになるのを、宇髄が力強く受け止めてくれそのままぎゅっと後ろから抱きしめてくる。
「はあっ……は、は……うずい……ひどいぞ、こんなところで……こんな」
「気持ちよくなかった?」
「そういう問題じゃない!まったく……いい加減離せ。早く戻らないと……」
「待てよ、まだいいだろ。誰も俺たちがいなくたって気にしないって」
 そう言いつつ、両手で義勇の下腹を撫でつつうなじに顔を埋め、すうっとにおいを嗅がれる。
「んー……すっげ、いいにおい……またチンポが勃ちそうだぜ。お前のにおい、俺大好き」
「そっ……!……そ、そうか。あの、宇髄。俺、たまにはその……で、デート、デートとかしたい。お前となんか、楽しいところ行ったり……」
「ああ、そういうの。まあ、いいけど明日は金曜だろ。ガッコ終わったらめし食ってホテル行くことは確定してっから、デートすんなら土曜日な」
「……また!?今日こんなことしておきながら、また明日も……セックスなんて……」
「んだよ、不満か?お前だってこんなにザーメン吐いといてなに言ってやがんだ。いいか、明日はぜってーホテル」
「分かった……。じゃあ、次の日の土曜はどこかに連れて行って欲しい。俺はお前とセックス以外のことをしたい」
「セックス以外、ねえ……」
 宇髄の返事は、とても心が乗っているとは言い難いもので、義勇は宇髄の腕の中で小さな溜息を一つ、吐いた。その途端、ぽたぽたっと義勇の下穿きにザーメンとカウパー液の混じった液体が涙のように零れたのだった。

 しかし、身体がだるいと思う。先ほど宇髄と交わした情交により、思ったよりも身体に負荷をかけてしまったようだ。
 昼休みになってもそれは続き、義勇は通勤途中で仕入れたパンと、あとは学校備え付けの自販機で牛乳パックを買っていつもと同じ、人気の少ない階段に座りお気に入りのレーズンパンの袋を破こうとするが、どうにも食欲も湧かず仕方がないので牛乳でも飲もうと思ったが、それさえも億劫になり、二つの品を隣に置いて鉄筋丸出しの手すりに凭れかかりそっと、目を瞑った。
 すると、穏やかな眠気が義勇を誘いついつい、深く寝入ってしまうとふと、唇に違和感を感じた。覚えのある感覚だ。キスをされている。宇髄だろうか。それにしては、いつもと感触が違い過ぎる。宇髄の唇はもっと甘くてそして義勇の何もかもを奪わんとする強引さがある。
 だがこの唇はネトネトしており、柔らかすぎる。弾力がありすぎる。
 宇髄ではない。
 咄嗟に義勇は目を見開き、唇を奪った主を突き飛ばすと、そこにはいつか義勇を待ち伏せし、そして告白してきた女生徒が顔を真っ赤にして尻もちをついている。
「なにをする!人の寝込みを襲うなど、卑怯もいいところだ!それに、こんなところを誰かに見られでもしたら……!」
 宇髄に、見られたりしたら。
「大体、きみのことはキッパリと断りを入れたはずだ。何度も言うが俺は生徒と所謂、そういった関係になるつもりはないし、今後もそれは変わらない」
「せ、先生……!ごめんなさい、いきなりその……キスしちゃって。先生の寝顔があんまりきれいでかわいかったから……でも、私は本気なんです!本気で、先生のこと……」
「ハッキリ、迷惑だ。きみの気持ちは俺にとって迷惑でしかない。一度目に告白された時も同じようなことを言ったと思うが、諦めなさい。それに、勝手にキスされて俺はすごくいやな気分だ。嫌悪すら感じる」
 すると、女生徒の瞳に涙が盛り上がり、あっという間に頬がびしょ濡れになる。
「どうしても……望み、ないですか、わたし……」
「無い。それに、俺には想い人がいる。大切な、想い人だ。だからきみには靡かない。なにがあっても靡くことは無い」
「な、ならっ……その人の二番目でいいんです。二番目に、好きになってもらえれば、私は……」
「好きに一番も二番も無いだろう。順位付けなど以ての外だ。俺は、ただ……ただ」
「ただ、なんですか?」
「ただ……報われる日を静かに待ちたいだけなんだ。分かったらさっさとここから立ち去ってくれ」
 女生徒はその義勇のにべのない言葉に、口元を震わせて立ち上がり泣きながら走り去っていく。その後ろ姿を、義勇は遠い目で眺めた。後、唇がなにかネトネトしてそして人工的なかおりが漂ってくることに気づいた。それがいやで手の甲で思い切りごしごしと唇を擦ると、それはどうやらリップクリームだったようで、擦った部分がテカテカと光っている。それを振り切るように服に拭いつけ、女生徒の去って行った方向を見つめる。

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