12 第七官界彷徨


「元々、美形しか相手にしなかった俺だ。だから、初めてお前を見た時、どストライクですぐ欲しくなった。けど、なんか手を出すことができなくて……汚しちゃいけないって、なんとなく思った」
「汚す……?」
「けど、やっぱり触れたくて、抱きしめたくて……キスは、でも絶対にしないって決めてた。心が揺らぐって、何処かで分かってたから。でも、女に告られてるお前見て、すげえ、心にどす黒いもんが拡がって……それが嫉妬だって気づいたのは、お前にキスしてからだ。キスしたら、心が晴れた。黒いもんが無くなってって、そしたら心に空洞ができて……お前をめちゃくちゃに抱いたら、中にはな、たくさんの愛情が詰まってた」
「愛……愛情……?宇髄が、俺に……俺を、好きってそういう……」
「そういう、好き。愛情の、好き。抱きたいの、好き。俺に抱かれ始めたら、だってお前、だんだんキレーになってって、垢抜けるというかとにかく色気とかそういうのが噎せ返るほど溢れてきて、ただ抱くだけじゃ、もう我慢できなくなった。俺は……好きなやつとは付き合いたい。恋愛がしたい。そういう気持ちを、お前に抱いてる。あの、聞くけどお前って今フリー?」
「ふりー?ふりーってなんだ」
「いや、だから付き合ってるやつっていんのかなって。因みに俺はいねえ。今はフリーだ」
「俺も……いない。いま現在も、過去にもいたことは無い。けど……宇髄は付き合うってどういうことか、分かってるのか?俺にはその……よく分からないけど」
「付き合うっていうのは、金曜だけの関係じゃなくなるってことだ。土日には二人でめし食い行ったり、どっか遊びに行ったり、互いの家に泊まり合ったり、セックスしたりする関係。それが付き合うってことだ。俺は、お前とそういう関係になりたい。独り占めしたい。誰にも渡したくない。……すげえ、好き。お前のこと、好き……」
「うずっ……んっ、んンッ!んっ……」
 突然、唇に柔らかな感触が拡がり、それが宇髄の唇だと気づいたのはすぐで、両手を取られているため、抱き返すことができないのがもどかしい。そっと目を閉じると、さらに唇の感触がリアルに感じられる。
 舌は入れられず、ただただ優しい口づけを施してくる。まるで、トロトロと思考が蕩けてゆくようだ。それほどまでに、この触れ合いは気持ちのいいもので、そっと顔が離れてゆく頃には義勇はすっかりと涙目になり、至近距離で紅色の瞳を見つめ返すのが精一杯だった。
「ん、は……うずい……」
「義勇、返事。……返事が聞きたい。今日、今すぐに聞きたい。義勇は、いや?俺と付き合うの。恋人同士になるの、いや?」
「や、やなわけない!いやなわけ……あるはず、ないっ……!だって、俺はずっと……宇髄が好きだった!」
 顔を手で隠したいが、どうしても手首を解放してもらえそうにないので、顔が熱くそして赤くなっているのを感じながら吐息の触れ合うくらいの距離にいる宇髄に向かい、言葉を発する。
「初めてお前に誘われた時……嬉しかった。だって、ずっと好きだったんだ。けど、相手はお前で……望んじゃいけない人だって分かってたから……だからきっとずっと、俺は片思いのまま、終わっていくんだろうって思ってた。じゃなきゃ、いきなり『処女が欲しい』なんて言われて頷くはずがない。他のやつなら殴ってた。けど、相手がお前なら……そう思って、あの時頷いたんだ……。勇気を出して、頷いた」
 すると、顔が近づき二度、軽くちゅっちゅっと音を立ててキスされ、両手を取っていた腕は背に回りぎゅっと抱きしめられる。
「なんかすげえ今さらだけど……今さらなんだけど、大切にする……。大事にしたい。心も、身体もなにもかも……。すげえ、好きなんだ、お前のこと」
「俺も、大好き……。お前が、好き……」
「なあ義勇、キス……していい?」
「さっきだってしただろ……なにを、今さら……」
「違う。本当の、恋人としてのキス……したい」
 義勇はその言葉に薄く笑い、宇髄の首に両腕を回しぐいっと引き寄せる。
「もちろん、いい……。俺も、したい……お前と、キス……恋人の、キス」
 ちゅ……と、音を立ててゆっくりと唇が合わさってゆく。そのキスは今日交わしたどのキスよりも、甘く義勇を溶かす。
 その快感に酔いながら、宇髄の白髪の中に手を入れ、さらさらの髪を梳く。髪からはいいかおりがして、すうっと息を吸うと肺まで宇髄でいっぱいになる。
 そっと唇が離れ、鼻と鼻を擦り合わせて二人は柔らかく笑んだ。
「好き……大好きだ……ずっと俺の、傍にいて欲しい。……愛してる」
「俺も好き……お前こそ、勝手に離れて行くなよ。できれば俺が生きている間ずっと、腕の中に入れていて欲しい。……大好き。……愛してる」

 その秘めやかな誓いは、二人の間に息づき根を生やしそして、恋し続けるのだ。愛し合い、恋し続ける。
 それが、二人の交わした約束。愛溢れる、甘い約束。

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