08 心臓に爆弾


 いろいろと頭の中で考えていると、勝手に身体が熱くなってくる。因みに頭も熱くなって、目を瞑っているのすらつらくなってきたところで、徐に運転席側の扉が開き宇髄が乗ってくる。その手には薬局のビニール袋があり、中から取り出されたのは茶のペットボトルだった。
「のど、乾いてないか?盛大に泣いてたから、乾いてるだろ。ほら」
「あ、ありがとう……」
 言われてみれば、かなり乾いている。急いでキャップを開け、中身の半分ほどを飲み干すと、次に袋から取り出したのは湿布薬だった。わざわざハサミまで買って、湿布を半分ほどの大きさに切ると、義勇の額にぺたりと貼り付ける。
「あ……」
「それ、痛そうだなと思ってよ。言っとくが、二度と自分でそんなことするな。誓え。絶対にするな」
「宇髄は……どうしてそんなに優しいんだ?」
 シートベルトを締めながら、宇髄はニッと笑いこんなことを言って義勇を赤面させた。
「んなの、好きだからに決まってんだろ。お前だからだよ。俺はそんなに優しくねえからな。でも、お前には優しくしてえんだ。大事にしたい。そう思ってのことだから、お前は気にすんな」
 義勇は口元を震わせ、俯いた。涙が溢れそうだ。こんなに思い遣りのある優しさに触れたのは鱗滝以外で、思わず涙ぐむとそっと、頭に手が乗り優しく撫でられる。
「さて、今度こそホテルに向けて出発だ。さっき電話してもう部屋は取ってあるから、あとはチェックインして入るだけ。……ここで、再確認だ。いいな?本当に、いいんだな?」
「い、いい。覚悟はもう決まってるし、それに……宇髄だから。俺は宇髄を信じてる」
 ぎゅっと手を握りながらそう言うと、突然だった。がばっと宇髄が覆いかぶさってきて頭をがっしりと固定され、唇を塞がれる。けれど、深いものはせずにただただ、ひたすら義勇の唇を味わうように触れるだけで、思わず開けていた目を瞑ると、感じるのは宇髄の持つ熱だった。温かいような、甘いような、熱いようでいて心地いい。
 ふと唇が離れて行き、閉じていた目を開けるとそこには端正な宇髄の顔があり、情熱的にじっと義勇を見つめてくる。
「……行くぞ」
「うん……」
 再び車が動き出し、駐車場を出て公道を走り始める。二人の間に会話は無く、ただ車内を流れる優しい女性ヴォーカルが雰囲気を柔らかなものにしつつ、少しずつ高まる興奮に合わせて音楽も佳境に差し掛かる頃、かなり高い建物が目に入り、車は駐車場へと入って停まる。
 宇髄は先ほどの薬局の袋を下げて車から降り、義勇も同じく車から降りて後に続く。
 ホテルのロビーはかなり広く、受付の女性の対応もとても丁寧で、宇髄が鍵を受け取ったのを見届け、手招きと共にエレベーターへと乗り込んだ。
 宇髄が『6』と書いたボタンを押し、エレベーターが動き出す。すぐに到着した六階は静かで、カードキーに印刷されている番号をどうやら宇髄は探しているようで、ある部屋の前で足が止まり義勇の背を押して部屋の中へと入れ、宇髄も部屋へと入りカードキーを出入り口近くにあるケースへと入れる。
 そうしたところで、義勇はくるりとうしろを振り向いてぎゅっと宇髄に抱きついた。宇髄のにおいと体温が心地いい。そこで、どうしてか何故か涙が溢れてくることに気づいた。それは止まることなく義勇の頬を濡らし、さらに抱きつくと宇髄の腕が肩にかかりそっと剥がされてしまう。
「おいおい、どうして泣くんだ。なにか怖いか」
「ちが……ちがう。またこの腕の中に入ることができて、すごく嬉しくてたまらなくて……この場所、好き。大好き。ずっとここにいたい」
 すると、ぎゅっと義勇の身体を宇髄が抱いたと思ったら、いきなりかなりの大声を出し義勇を驚かせた。
「かわいい!かわいい、かわいいっ!あー、すっげかわいい!なんでこんなにオメーはかわいいんだろうなあ!ホント、かわいすぎるぜ。派手に欲情する」
「う、宇髄っ!?」
「おまえなあ、他のやつの前でそういうこと言うなよ。絶対に言うな。俺の前だけにしろ。じゃなきゃ、襲われんぞ」
「い、言わない。だって、俺が居たいのは宇髄の腕の中だけだ。他の誰かじゃなくて、宇髄の腕の中がいい」
「あーもー、オメーってホント……かっわいいよなあ……!愛してるぜ、義勇!」
 がばっといきなり横抱きにされたと思ったら、ベッドに思い切り放り投げられ早速、宇髄が迫ってくる。
「う、宇髄!ちょ、まっ……まっ……あっ!」
 着ていたTシャツが捲り上げられる。そこで、宇髄は表情を硬くして動きを止めてしまった。
「宇髄……?」
「お前、この痕……どうした。なんでこんな……傷みてえに」
 そこで、昨日の行動を思い出す義勇だ。宇髄は顔を歪め、真っ赤に色を変えた鬱血痕を指で撫でた。顔を青くする義勇だ。まさかこんな展開になると思っていなかったため、忘れていたのだ。自分で宇髄の痕を消すようにして引っ掻き、上書きしたことを。

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