06 心臓に爆弾


 頬をびっしょりと濡らした義勇は、紙袋を握りしめながら宇髄に前々から聞きたかったことを問うことにした。
「いつ……?一体いつから、俺のことを」
「そうさなあ。いつだろうな、俺にも分からねえんだ。最初見た時からもう既に、惹かれてたのかもな。お前、キレーな顔してるし。眼は透き通るような青で、いつでも真っすぐで、優しくて、そういうの……知ってるから。だから、分けて欲しかったのかもしれねえな、お前の他のものに向ける所謂、愛みたいなもの」
「愛……?そんなもの、俺の中には無いぞ。無いものだ。一番、欠けているものなんだぞ」
「俺はそうは思わない。お前ともっと親しくなりたかった。傍に行きたかった。腕の中に、入れたかったけど失敗した。俺はいつも、失敗ばかりだ。大切なものほど、大事にしなけりゃならないのに、方法を間違えて……お前のこと、傷つけて……ごめんな、義勇。引っ掻き回して悪かった。けど、これっきりにするから。本当に、済まなかった。……帰るか、送る」
 宇髄は義勇に背を向けて歩き出す。その後ろ姿に、思わず義勇は抱きついていた。
「待ってっ……宇髄、宇髄好きっ……!好きだ、待って行かないでくれっ……離れて、行かないでくれどうかっ……どうか、傍に、いてくれ」
「ぎゆう……?」
「本当は、謝って欲しかっただけなんだ。金のことも、悪いと思ったから言い出しただけで、俺だって働いてるんだから立場が同等だと分かって欲しかったんだ。たった、それだけのはずだったのに、こんなに拗れてしまって漸く、気づいた。俺……宇髄のこと、好き。まだ、大好き。きらいになんてなれない。なれるはずがない。もう独りはいやだ。宇髄といたい。ずっとずっと、一緒にいたい。腕の中に、収まっていたい……宇髄の、一番近いところで、息をしていたいよ……」
 無理やり腕を外されたと思ったら、義勇はすっぽりと宇髄の腕の中に収まっていた。ふわっとかおる、宇髄のにおい。またしても、涙が溢れてくる。
「義勇……!俺も、お前が好きだ……!俺が全部、悪かった。お前のいやがること、もう止める。だから、どうか俺と……俺と、付き合ってくれねえか。俺、お前と付き合いたい。ちゃんと言わなかった、俺が悪かった。付き合ってください、義勇」
「……はいっ……俺でよければ、喜んでっ……!」
 二人、同時に身体を離しそっと顔を寄せ合う。目の前の紅色の瞳はいつもの輝きを見せており、見惚れているとふわりと唇に優しい感触が拡がる。
「んっ……ん、ン」
 今日の口づけは、特別に甘いと思う。そして、温かい。両頬を包まれ、唇を舐められる。薄っすらと口を開くと、ゆっくりと宇髄の舌が咥内へと入り込んできて舌を舐められた。義勇も同じく舐め返すと、まるで貪るようなキスが始まる。
 舌と舌とを絡め、唾液を啜り合い、心行くまで互いの咥内を蹂躙する。唇が離れる頃にはすっかりと息が上がってしまって、義勇はぎゅっと強く宇髄に抱きついた。
「……俺の家、来る……?し、寝室……」
「ぎゆう……?」
「寝室に、来る……?一緒に、横になる……?はだか。裸に、なる……?」
 精一杯の誘い文句だった。今ならば、許せる。寧ろ、今だから許せる。抱いて欲しいと思う。他でもない、宇髄に抱いて欲しい。身体の深いところまで、奥深くまで埋めて欲しいと思うのだ。
「それって……いいって、ことか。セックス、してもいいって、そういう……?」
 義勇は無言で頷き、さらに宇髄に身体を寄せて抱きつく。すると、義勇の背にも宇髄の腕が回り、二人は一部の隙間もなく抱き合った。
「ホントに、いいのか。俺は抱くぞ、本気でオマエのこと。拒否するなら今しかねえ」
「拒否なんてしない……抱いて欲しい、宇髄に。たくさん、宇髄からの愛が欲しい。宇髄だけの、宇髄が欲しい」
 そろりと背に回った腕が外され、そっと手首を握られる。
「お前んちじゃなくて、ホテル……そこでいいか。お前は絶叫系だって知ってるからちょっとな、アパートの壁じゃ薄すぎて聞こえかねねえから。……いいか」
「ば、場所は、どこでも。宇髄に抱いてもらえるなら、べつに、どこでもいい」
「じゃ、車乗るぞ。一晩でいいよな」
「うん……」
 そして、二人は車に乗り込む。そしてもう一度、軽いキスをして車が発進される。
 そこで義勇はずっとひた隠しにしてきた秘密を宇髄に知ってもらいたくなった。ずっと言えなかったことだ。言うつもりもなかったが、何故か口に出したくなったのだ。

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