01 心臓に爆弾


 最近、学園でも二人でいる時間がぐっと増えた。
 宇髄から話しかけることの方がずっと多いが、以前と比べると義勇からも宇髄に話しかけたりする姿が校内で目撃されるようにもなり、完全に浮かれ切っていた義勇だった。
 朝も、宇髄が通勤のために校門を潜ると、風紀委員の顧問である義勇はさっと宇髄の傍に寄り挨拶をして、時には頭を撫でてもらえたりもする。
 一部の女子の間ではそんな二人を見てはこっそりと噂話に花を咲かせたり。
 義勇は、自分では気づいていなかったが宇髄といるとどうしても笑んでしまうらしい。気づくと、勝手に顔が緩んでいて宇髄に指摘されて気づくパターンも増え、いい傾向だと宇髄は笑ってくれた。
 そして、今週の土日にも宇髄が家に泊まりに来ることになっている。
 宇髄がくれたネックレスも、首元が見えない服を着ていたりする時は必ず学校へもつけて行き、授業などがあると外すがそれ以外はこっそりとつけて過ごしてもいた。そうすると、宇髄が喜ぶからだ。そして、義勇も嬉しい。
 美術室では、昼以外にも二人に授業が入っていなければ集まって、キスをして身体を重ね合って過ごし義勇にとっては夢のような毎日だった。そして、それがずっと続くと思っていた。
 小さな諍いから始まった、あのことがあるまでは。
 週末が近づいたある金曜日のことだった。義勇は相変わらず昼は美術室へ詰めており、先に昼食を食べ終わり絵画に勤しむ宇髄に見惚れていると、突然だった。美術室の扉が勢い良く開き、宇髄の紅色の瞳に見入っていた義勇は、身体を飛び上がらせて驚いて出入り口を見ると、そこには煉獄が立っておりずかずかと美術室に踏み込んでくる。
「やはりここだったな!冨岡、少し話があるがいいか」
「問題ない。何か用か」
 煉獄は二脚ある椅子のうちの一脚に座り、義勇も改めて空いていた椅子に座ると、早速話が始まる。
「冨岡、お前に覚えがあるか聞きに来た。というのも、端的に言えば見合い話だな。お前に見合いをする気はあるか。今時そんなことをと思われても仕方が無いが、相手が強く熱望していてな」
「見合い……?」
 そこで、宇髄の雰囲気が険悪になるのが分かった義勇だ。だが、煉獄は続ける。
「最近のことだが、出勤中……お前は自転車通勤だと記憶しているが、交差点でパンプスの踵が取れた女性に自転車を貸したことがあっただろう」
 思い起こしてみると、確かに最近、女性に自転車を貸している。というのも、出勤中に通るある交差点で、女性が花壇の縁に座り込み、折れたパンプスの踵をなんとかくっ付けようと奮闘している姿が目に入り、何しろお人よしの義勇。自転車ならば最低限で足を地面へとつけることができると言って、確かに自転車は貸した。そして、天狗の面をつけたキメツ学園の鱗滝という人物に冨岡から自転車を借りたといって返してくれればいい、そういった覚えならある。
「その女性が、お前のことを大層気に入ってしまってな。優しい上に、顏はいい。すっかりまいってしまったようで、俺の方に話が来たわけだが」
「……その人はお前のなんなんだ?」
「おお、言い忘れていた。彼女は俺のいとこで煉獄妙子という名前だ。顔もいいし、気立てもいい女性で俺からもぜひと思ってこの話を持って来たんだが、どうだ!」
「……えと、すごく言いづらいのだが、おれ、俺にはその……すきな、好きな人がいて……」
「片思いか!それはつらいな!」
「ち、違う。そうじゃなく、相手もその、俺のことを想ってくれていて、だから……み、見合いは」
 そこまで話したところで、バキッと音が立ち宇髄が絵筆を手の中でへし折り、その場に捨てたと思ったら義勇の腕を引き、腕の中に閉じ込めてしまう。
「う、宇髄!ちょ、れ、煉獄が!」
「悪ぃな、煉獄。義勇は俺と付き合ってんだ。見合いなんてとんでもねえ。ぜってえ許さねえぞ。その話は断らせてもらう」
「宇髄!」
 義勇は煉獄に背を向ける形で抱かれているため、煉獄がどんな表情をしているか確認できなかったが、一瞬、呆気にとられたようだがいつもの陽気な笑い声が飛び出す。
「そうかそうか!職場恋愛というやつだな!結構けっこう!だったら、見合いの話は俺から断っておこう。どうやら、邪魔をしてしまったようだな。はっはっはっ!お熱いことだ!」
 煉獄は笑いながら教室から出て行き、義勇と宇髄は再び二人きりになる。
 そこで、義勇は思い切り宇髄の胸を押し返した。
「なんで煉獄に言った!それに、付き合ってるって……」
「だってホントのことだろ。見合いなんて、冗談じゃねえぞ。お前には俺がいんだろ」
「それは……そうだけど。でも、黙っておいて欲しかった。だって」
 そこで、予鈴が鳴り響く。義勇は鱗滝とちょっとした約束をしてあったため、午後一番に用具室へ行かなければならない。会話はそこで強制終了され、二人の雰囲気は険悪のまま、解散となった。
 しかし、宇髄の言っていた「付き合ってる」とはどういうことなのか、問いたい義勇だ。確かに以前、宇髄に付き合って欲しいと言われてはいる。だが、義勇には付き合っているという自覚はまるで無く、いきなり放たれたその一言に動揺を隠せなかった。
 一体、いつ付き合っていることになったのか。義勇は義勇のモノで、宇髄のモノではない。
 はっきりしないもやもやした気持ちを抱えながら、義勇は用具室へと向かったのだった。
 その日は結局、義勇は宇髄に近づくことをしなかった。どうにも釈然としない。一体いつ、宇髄のモノになったというのか。宇髄は、何か勘違いをしている。

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