「ヤムってね、恋愛に関しては凄い奥手なんだよ」
「えー、ピスティ、それ絶対嘘だわ。想像できねーよヤムライハが好きな人の前でおしとやかな姿とか。オエエッ」
「おしとやかっていうか、緊張して魔法のコアな話ばかりしちゃうんだよ」
「それ絶対恋愛に失敗するパターンだろ……」

前にヤムライハがコミュ障過ぎて彼女ができない俺を馬鹿にしていたが、あいつも似たようなもんじゃないか。相手が同じ魔法使い(しかもヤムと同レベルの天才で魔法オタク)ならまだしも、普通の男が魔法の話をされても何とも思わないだろうに。「へー、それで、君のパンツは何色?」ってなる。

「でね、ヤムってば振られるといつも自棄酒なんかしちゃうの」
「ほぉほぉ、可愛いとこあんじゃん」
「え、自棄酒が?」
「うん」

振られても平然としてる女より、失恋でやけになるような女の方が俺は好感が持てる。ヤムライハは前者だと思っていたが、後者なら意外に可愛いじゃないか。まぁ、モルジアナの方が断然可愛いけどな。

「あれ? なまえ、ヤムの事を可愛いって思うんだ?」
「あいつにしてはって意味だけどな」
「へーほーふーん」
「な、何だよ……俺がヤムの事を好きなんじゃないかって思ってんなら、勘違いだからな!」

ニヤニヤと俺の事を見てくるピスティ。何でちょっと可愛いって言っただけで、俺がヤムライハを好きみたいになってんだよ。これだから女子は嫌なんだ。

「でもでも、普通に男として見るヤムは可愛く見えるでしょ?」
「そりゃあ、胸もでかいし顔も綺麗だからな。でも俺はあんな奴全然好きじゃねーよ。すぐに人の事殴るし、馬鹿だのクズだのちゃらんぽらんとか言うし。人がちょっと仕事から離れてただけでサボるなサボるなうるせーし。キモいーとか、ロリコンとか言ってくる女なんか好きになる奴がいる訳ねーだろ」
「……」
「あんな鬼みたいな……ん? どうしたピスティ」

不意に俺の話を笑って聞いていたピスティが無言になる。一体どうしたんだと俺がピスティに詰め寄ると、ピスティが俺の背後を指差した。

「後ろ? 後ろに何が……ヤムライハ」
「……」
「違うんだ、これから俺はお前の良い所を言って、それでもこういうヤムライハを好きになる男もいるよきっとって綺麗に話をまとめようとな……!」
「鬼みたいな、何よ」
「そそそそそそ、それは……鬼、鬼みたいに強いヤムライハは逞しくてかっこいいって言おうとして、ぶべらっ!」
「悪かったわね、鬼みたいに強くって!」

ふん、と鼻を鳴らしたヤムライハは、俺を杖で殴ってからぷりぷり怒って行ってしまった。鬼って言われて怒るなら、もう俺をこんな風に殴らないで欲しい……




女性は花で例えよ

「でもね、ヤム。なまえは自棄酒するヤムの事は可愛いって言ってたよ」
「別に嬉しくないわ」
「今度失恋した時は、なまえに付き合ってもらえば?」
「……」




2013.05.01