(2010.09.24)
※長編ヒロイン


「なまえは、俺の事好き?」

「…もう少しお互いの顔との距離をとってくれて、かつ私を壁に追い詰めるのをやめてくれたら答える」

「ハハッ、だーめ。そんな事したら、どうせはぐらかして逃げるだろ?」

「……」

「なぁ、なまえ、」


なんなの何なの何だっていうの。突然自分の事が好きかとか聞き始めたかと思えば、今度は壁に追い詰めるなんて。
一体何がしたいのか分からない。


「ブレイブ、どうしたの急に」

「どうもしないさ、ただなまえが俺の事好きか聞いてるだけだけど?」

「あのね、意味が分かんないから」


思わず、私の口から深いため息が漏れる。
まったく、相変わらず突拍子の無い事ばかりする。


「ブレイブ、分かったからひとまず退いて」

「だから、退かねぇよ」

「何で」

「なまえが好きって言ってくれないから」

「子供か」


思わず思っていた事が口をついで出てしまった。
しかし、私の失言を特に気にする素振りも見せず、ブレイブは小さくため息をつくと、更に私との距離を縮める。


「ちょ、ふざけんな近い!」


互いの体がより密着して、ブレイブの体温を嫌でも身近に感じる。
せめてさっきの距離に戻そうと試みるも、ブレイブに更に力を込められるだけで、無駄な徒労に終わる。


「ブレイブ!」

「好きって言ってくれよ」

「何で……」

「なまえ、」


私の肩に顔を乗せて、そう切なく囁くブレイブ。
あぁもう、そんな声で私を呼ばないで欲しい。


「好きだ」

「うん、」

「好きなんだよ」

「ブレイブ、」

「あいしてる」

「……」


ギュッと、ブレイブが私を抱きしめる力が更に強くなる。
お互いの息がかかる距離、触れそうで遠い、二人の距離。
この甘ったるい雰囲気に、どうにかなってしまいそうになる。


「そんなに私が好きなら、さ」

「……」

「その、あれだよ……キスしてみて」


私がそう言う事が以外だったのか、一瞬だけブレイブの瞳が揺れる。そしてすぐに、その表情に嬉しそうな笑みが広がった。


「あぁ、分かった」


その言葉を皮切りに、ゆっくりと、ブレイブの顔が近付いてきて、私は羞恥からギュッと目をつぶる。そしてその数秒後、唇に温かなものが触れた。


「っ、」


触れるだけの、長いキス。
ただそれだけなのに、重なった唇が異様に熱くて、私の体温が徐々に上昇していくのが分かる。そして同時に、私は途方もない愛に満たされたような気になるのだった。するりと、私の指に絡まるブレイブの指。それさえも、たまらなく愛しいと思う。


結局、ブレイブ以上に私は彼に依存しているのだ。


「私もね、ブレイブが好きだよ」


触れそうで遠い、二人の距離。けれど目の前には、満足そうに笑う君。
素直過ぎる君と、素直になれない私のもどかしい距離。


(それでも、きっと)



鴇様に捧げる相互記念ブレイブ夢です。
ブレイブっていうか、アンドレじゃね?という突っ込みが恐いですが、あえてブレイブと言い張る。
鴇様、こんなんでよろしかったでしょうか!