(2013.04.11)
「ねぇジュドー! ちょっと話が……あれ?」

巨乳と貧乳だったら、ジュドーはもちろん貧乳だよね! と事実確認の為に彼の部屋に出向いたら、残念ながらジュドーは不在だった。仕方ないので私は部屋に入って、ジュドーが戻って来るのを待つ事にした。

「ん?」

私が試しに本人不在のベッドの上にごろりと寝転ぶと、投げ出した指先に何かが触れた。不思議に思ってその何かを手に取ると、驚いた事にそれはいわゆるアダルティーなDVDだった。

「……ぶふぉっ」

見つけた瞬間、私は何とも言えない複雑な感情に吹き出した。まさかジュドーがこんなものを観ているとは思いもせず、整理のつかない頭でそのDVDをまじまじと観察する。それにしてもこれ、一体何処から手に入れたんだろう。あの子まだ十四歳だったよね、大人の階段を登るのはまだ少し速いんじゃないだろうか。

「ジュドーめ! 私じゃ満足できないっていうのかよちくしょー!」
「え?」

私が涙目でそのDVDをベッドに叩きつけたのと同時に、タンクトップ姿のジュドーが部屋に帰ってきた。そして私がソフトボールの下投げのポーズをしている所を見て、「何その格好!」と言って笑い出した。何がおかしいか!

「ジュドー! これどういう事! 何で子供の君が大人の階段をターボで登ってんの! お姉さんは悲しいよ!」
「え……あ! それ!何処にあったのさ返せ!」
「か、返せ? そんなにこれが大事か!」

私が半泣きでそう叫びながらDVDをへし折ろうとすると、ジュドーが慌てて止めにかかる。それが余計にショックで暴れると、いい加減にしなさいと大きな声で怒られた。

「……う、うわぁああん! ジュドーの馬鹿ぁ!」
「ちょ、泣くなんて狡いでしょ! 違うよなまえ、俺の話を聞いてくれよ!」
「嫌だ嫌だ! どーせジュドーだって巨乳でグラマラスな美人が好きなんだー!」
「だから違うって! これはね、この間サンシローさん達が俺に押し付けてきたの!」
「え? 本当に?」

そう言いながらジュドーが、呆れたようにため息をついた。そして私の手からエロDVDを取り上げると、これがどういう経緯で自分の手元にあるのかを私に説明してくれた。

「こういうDVDが艦長達に見つかると没収だから、抜き打ちの持ち物検査が無い俺とかウッソに色んな人達が預けにくるんだよ! だからこれは俺の持ち物じゃないの!」
「で、でもさぁ……!」
「あのね、俺がなまえ以外の女の子の裸に興味があると思うの?」
「……思いません」

私がそう渋々呟くと、ジュドーがホッとしたように胸を撫で下ろした。何だか年下の男の子に説得されるのも癪だが、私の早とちりでこうなっている以上何も言えない。

「はぁ……だから嫌だったんだよ」
「ごめんねジュドー……」
「別に良いよ。こうなる事はだいたい分かってたしさ」

ジュドーは持っていたDVDを遠くに放り投げながら、ベッドに座る。私も同じように彼の隣に腰を下ろすと、ジュドーが私の肩に頭を預けた。ここに戻ってくる前にシャワーを浴びてきたのか、ほんのり湿ったジュドーの髪からはシャンプーの良い匂いがする。

「どうしたの?」
「ん? 俺もそのうちこういうのに興味を持つようになるのかなーって」
「……私がいるじゃないか。しかも年上のお姉さんよ!」
「たまにどっちが年上なのか分からなくなるけどね」
「この野郎!」

私がジュドーの横腹を小突くと、ジュドーが苦笑いを浮かべながらゆっくりと離れていく。それを少し名残惜しいと思いながら、私はまだ幼さの残る彼の横顔を見つめた。今はまだ若く、年上の私でも傍にいてくれるジュドーだけれど、いつか大人になって私から離れていくのだろうか。それは仕方ない事のようにも思うけれど、何だか酷く寂しい。

「……でも、やっぱりジュドーには早いよ。こういう大人の世界はね」
「そうかな」
「そうだよ! だって、ジュドーはまだまだ子供だよ!」
「子供ねぇ……」

そう呟きながら、ジュドーが不意にニヤリと笑みを浮かべる。すると次の瞬間私の視界が反転して、いつの間にか私の目の前にはジュドーの顔が迫っていた。お互いの息がかかる程の近距離に、私の心臓がばくばくと脈を打つ。顔が自然と紅潮して、真っ直ぐにジュドーを見る事ができない。

「じゃあ、子供かどうか試してみる?」
「え……? え?」
「俺もね、年下だからっていつまでも生殺しには耐えらんないんだよ」

ね、お姉さん。
そう耳元で囁いたジュドーは、唖然とする私の唇に噛み付くようなキスをした。




子供と大人の境界線
(俺も男だってこと、忘れないでよ)