(2012.02.29)
「健一くん」


私がそう名前を呼ぶと、彼は柔らかく微笑んで私にキスをしてくれる。健一くんはいつも、私に優しい。私が寂しい時には何も言わなくても傍にいてくれるし、悲しい時は心配するなと抱き締めてくれる。そんな彼に私は、一体どれだけのものを返せるだろうか。


「……」

「どうしたんだ、不安そうな顔をして」

「健一くんはさ……いつも私にいろんなことをしてくれるよね」

「そうか?」

「そうだよ」


だけど、だけど私は……健一くんに何もあげられていない。だからいつか二人の間の均衡が崩れてしまって、どちらかが傷つく日が来てしまう気がするんだよ。そう思うと不安を感じずにはいられない。ねぇ、健一くん。私は貴方に何ができるのかな。


「何だよ、そんなことなら心配すんなって」

「でも、私……」

「分かってないな、なまえ。俺だっていつも、お前から沢山貰ってるんだぞ?」


それぐらい気付けよ、と言って、健一くんは私の額に自分の額をくっつけた。けれど私にはやっぱり、健一くんが言うよに何かをあげた記憶はない。色々頭の中で考えながらじっと近くにある健一くんの瞳を見つめると、不意に健一くんが笑顔を浮かべた。


「俺はなまえに、たくさん愛してもらってるよ」

「え?」

「だからなまえを守る為なら全力で戦えるし、お前が寂しい時には傍にいるんだ」

「……」

「分かるか?俺にとってお前の愛情は、何よりの支えや力になるんだよ」

「健一くん……」


嬉しくて泣きそうになった私は、思わず健一くんの体に力一杯抱き着いた。健一くんは本当に、本当に優しくて素敵な人だ。整備士のあの子には悪いけど、同じ超電磁ロボのパイロットでも健一くんは豹馬くんとは大違いだと思った。大好き健一くん。貴方のことが、世界で一番好き。


「おいおい、あんまり引っ付くと色々我慢できないぞ」

「……すけべ」

「悪いか。男はみんなこうだよ」


なんておどけたように健一くんは笑うけど、彼は私が本当に嫌がることは絶対にしないのだ。そんな所も、愛おしく思う。私が好きになった人が、健一くんで本当に良かった。明日も明後日も、この人の隣にいるのが私であることを願う。




受け皿の不安

(俺も毎日不安だよ)