(2012.02.20)

「クワトロ、なまえは可愛い子だと思わないか」

「……すまんなアムロ、私は年下には興味がないんだ」


整備士に説教をされているなまえを見ていると、あまりに年相応な彼女の姿に思わず笑みが溢れる。クワトロには呆れられたが、俺はなまえを見ているだけで心底幸せな気分になった。この間の会議の後も、ちょっとしたお礼に飴をあげただけで本当に彼女は喜んでいたのだ。その時は偶然ブライトから貰った飴をあげただけなのだが、あれ以来は常に飴を持ち歩くようにしている。彼女の笑顔を飴玉一つで見られると思えば、軍服のポケットが多少かさばるのは致し方ない。




* * *




「はぁ……」


ホワイトベース帰還後、整備士にこれでもかというくらいフィン・ファンネルについて説教を受けた。確かにあれは敵を倒すのに都合がいい分不便な所(特に整備に関して)もあるが、少しぐらい多目に見てくれてもいいのではないかと思う。実際今日の戦闘だって、フィン・ファンネルを使ったからこそ短い時間で戦いを収められたのだ。整備士には申し訳無いが、やはり俺はこれからもフィン・ファンネルを使い続ける。それよりもショックなのは、説教されている所をなまえに見られてしまったことだ。しかもその隣にはカミーユが居て、俺の精神的ダメージは計り知れない。分かってはいるが、なまえは俺なんかよりも年の近いカミーユのような男が好みなのだろうか。年の差があるというのは、それだけで世代間のギャップがあって上手くいかないと、以前誰かに聞いたような気がする。


「アムロ大尉!」

「ん?おっ、と!」


そんなことを考えながら格納庫を歩いていると、さっきまでカミーユと一緒にいたなまえが俺に体当たりをしてきた。こんな彼女の行動はいつものことなのに、気落ちしていた分少しだけ嬉しくなった。けれど名残惜しいと思いつつ彼女の体をすぐに自分から引き離す。本当はこのまま抱き締めてしまいたいのだが、なまえの体の凹凸が俺の理性の留め金を外してしまいそうになるから、やめておく。俺だってまだまだ健全な男だ。


「大尉、整備の人に何か言われたんですか?」

「あぁ。やたらとフィン・ファンネルを使うなと言われてね」

「あぁ、確かに。ファンネルは壊れたら回収が大変ですものね」

「まぁな。俺もなるべく使わないようにはしているんだが……なかなか」


目の前でにこにこと笑いながら話すなまえは本当に可愛い。食べてしまいたいぐらいだ。けれど悲しいことに、俺の気持ちが彼女に通じる日などこの先永遠に訪れないのだろう。そう考えるとますます悲しくなるのだが、俺はしばらく黙ったまま彼女の笑顔を見つめ続けた。すると不意に何かを思い出したらしいなまえが、ちょっと待ってくださいと言って軍服のポケットをごそごそとあさりだす。一体何だろうかとその様子を見守っていると、俺の目の前に差し出された彼女の右手。


「どうぞ貰ってください!」

「ん?これは……飴かい?」


何でこんなものを。いや、もちろんなまえがくれた物だからとても嬉しいのだが、何故飴なんだろうか。俺は差し出された赤い飴を手に取りながら、何か言いたげななまえにありがとうとお礼を述べて、その飴を口に放り込んだ。うん、やっぱり何の変哲もないただの飴だ。




「私と結婚してくださいアムロ大尉!」

「え」

「あ」


思わず舐めていた飴を飲み込んで、窒息しそうになった。



飴玉プロポーズ

(次に地球に降りたら、真っ先に指輪を買いに行くと決めた)