(2012.02.19)

「カミーユ」

「何だい?」

「アムロ大尉ってさ、可愛い人だよね」

「は、はぁ……?」


カミーユが呆れたように私を見る。いや、だって見てみ、アムロ大尉をさ。可愛くね? 大人になって大尉、大尉と周りから尊敬の念を送られる彼だけど、未だに忘れ物とか普通にするんだよ。この間の会議だって、書類忘れてたまたま隣だった私に「すまないが、ちょっと見せてくれないか」なんて言ってきた。しかもその会議の後に「さっきはありがとう。皆には内緒だぞ?」と子供っぽく笑って飴をくれた。


「いつも飴持ち歩いているんだよあの人、可愛くね?」

「……そう? 俺にはよく分からないけど」

「なのにガンダムに乗ればフィンファンネルッ! とか言って凄くかっこいいし。もうなんなのあの人結婚して欲しいわ」

「君じゃ無理だよ」

「何だと! まぁ、分かってるからいいけど」


あ、今整備の人に頭下げてる可愛い! きっとまた無茶な乗り方をして怒られたに違いない。あの歳で人から怒られるなんて、アムロ大尉は本当に可愛いなぁ。だいぶ落ち込んでるみたいだから、飴あげたら元気になってくれるかな。ちょうどさっきブライト艦長から貰った飴が軍服のポケットに入っているし。


「ちょっと行ってくるよ!」

「あ、おいこらなまえ!」


カミーユの制止を無視して、こちらに歩いて来るアムロ大尉の腰に思いっきり体当たりをかます。しかし私程度の体当たりではびくともしないアムロ大尉は、涼しい顔で「どうしたんだい」と笑顔を浮かべた。だ、駄目だこの笑顔! ときめいてしまう! 大人の余裕万歳!


「大尉、整備の人に何か言われたんですか?」

「あぁ。やたらとフィンファンネルを使うなと言われてね」

「あぁ、確かに。ファンネルは壊れたら回収が大変ですものね」

「まぁな。俺もなるべく使わないようにはしているんだが……なかなか」


そう言って肩を落とすアムロ大尉は、本当に母性をくすぐる可愛さだ。マジでこの人結婚してないのかな、こんなに素敵で可愛いのに。世の中の女性の目は、一体何処を向いているのだろうか。と、余計なことを考えて無いで当初の目的を果たさねば。私はアムロ大尉にちょっと待ってくださいとだけ言って、軍服のポケットから飴を取り出した。

「どうぞ貰ってくださいアムロ大尉!」

「ん? これは……飴かい?」


どうしてこれを? と頭に疑問符を浮かべるアムロ大尉に、私はにっこりと笑顔を浮かべて口を開いた。




「私と結婚してくださいアムロ大尉!」

「え」

「あ」




間違えた。

(お、俺でよければ喜んで……)

(え! やった言ってみるものですね! うっひょー!)