※花吐き乙女パロです
ようやく秋も深くなりまして、最近少し肌寒くなりました。風邪の季節には少々はやい気がするのですが、斉藤さんはこほこほと咳込みがちです。沖田さんなんかが移さないでよねとからかっているのですが、あんまりにも治らないので私は少し心配です。
今日も斉藤は縁側に腰掛けて咳込んでいます。何やら身体を屈めているので、具合が悪いのかと駆け寄れば、口許を押さえたまま大丈夫だと言って立ち去ってしまいました。本当にそうでしょうか、顔はほんのり赤いのです。
その後ろ姿からふわりと一枚の丸い花弁が飛んで参りまして、よくよく見ると斉藤さんの座っていた場所には白い梅の花があちらこちらに散らばっていて、僅かながら甘い香りを放っていました。季節は朽ち葉の秋です。
不思議に思ったのと、赤い顔の斉藤さんが心配だったので、私は思わず後ろ姿を追いかけ、その手を掴みました。
「斉藤さん!」
すると真っ赤な顔のまま物凄い勢いで振り向いた斉藤さんの口から、梅の花は勿論、椿やら水仙、蓮や林檎の花など白い花がたくさん零れ落ちまして、頓所の廊下をそれは美しく染め上げました。
「……千鶴、」
斉藤さんは困ったように立ち尽くしておりました。最近咳込んでいたのはこれのせいなのでしょう。確かに私も花を吐く病など聞いたことはありませんが、散らばる花はどれも生き生きと美しいのです。
「きれいですね」
そう言いながら斉藤さんの口許についていた梅の花を取ってあげますと、斉藤さんはまた顔を赤くして小さくありがとうと呟いたのでした。