「じゃあさ、お前は結局断崖にいた巫女子ちゃんの背中を押したっていうのか。いやこの場合は推したのか?」
「さあ、だいたい巫女子ちゃんが断崖にいたかなんて誰も分からないよ」
「そうだよなー。なんか元気にいっくんとデートしたらしいし?」
「デートじゃなくて買い物に付き合っただけだよ」
「まあでも断崖に居たかは分かんないけど弾劾はしたわけだろ?《お前はお前の存在をゆるすのか》って」
「それだけで?その程度で自殺?ばかばかしい。そんなことで自殺するような奴に殺されるなんて、殺される方にしてみたらたまったもんじゃない」
「その通りさ。たまったもんじゃない。だから。だからこそお前は許せなかったんだろう?その程度の下らない理由で人間一人を惨殺した葵井巫女子が。そして責任をとらせた」
「僕がそんなことをするとでも?」
「思わない。でも、人が死んでもなんとも思わないような奴だとは思ってる。そしてこれは単純な話だよ。お前が好きだった葵井巫女子は、江本智恵が障害だった」
「なら、笑わせるよね。友達だ友達だ言っておいて……たったそれだけのことで殺す。しかも友達だって思ってることに嘘はない。嘘はないんだ。巫女子ちゃんは、智恵ちゃんが本当に好きだった」
しかし、殺さない程度にまで好きだったわけではない。
障害になったら容赦なく殺す。
コロス。
ころす。
私のために死になさい。
「でもこの場合は、明らかな自分の為の殺人で終わったのからこういう結末になったのさ。他人の為の殺人だと巫女子ちゃんが捉えたら、いっくん今頃死んでたんじゃない?」
あなたが好きだから。
あなたが好きだから私は大好きな友達を殺しました。
あなたが好き故に。
だから。
だから?
見返りを。
だってこんなに好きなんだもの。
「なんて素敵な神経だろうね。そしていっくんは断罪することにした。葵井巫女子に自殺させた。いや、自殺したのはやっぱりカノジョの意志だったのかな?引き金が君だっただけで」
「断罪?僕がそんなことして何の得も僕にはないよ」
「でも、許せなかったんだろう?」
「許すだの許さないだの、そういう問題じゃない。許容云々以前の問題だからだ。なぜなら、人を殺すと言う事は、完封なきまでに悪だから。そして、人を殺した人間はたった一人の例外すらなく地獄の底辺にまで墜ち沈むべきだ」
「俺もそう思うよ。じゃあ、そっか。これも単純な話か。」
君は単純に葵井巫女子を殺したかっただけだろう。
「だから、何で僕がそんな事を」
「いっくん自分の事好きか?」
「大好きだよ。この世で一番唯一絶対と言うほどには」
「嘘つき」
「嘘じゃないよ」
「嘘つき」
「嘘だけどね」
僕は、この世で一番唯一絶対と言えるほど僕が嫌いだよ。
「だからだよ」
嫌いな僕を好きな君は僕の次に嫌い。
「死んで欲しい程度には」
120208