久しぶりに白竜に会った。ゴッドエデンが閉鎖されてもう1年以上は経つわけだけど、相変わらず長い癖っ毛は健在で、おまけに意志の強そうな真っ赤な目もあの頃と何ら変わりもなく僕をじっと見詰めている。久しぶりの再会に包容でもしようもんなら容赦なく拒絶されるだろうな、なんて僕はそんな白竜を前に苦笑い。


「久しぶりだね」

「ああ、シュウが連絡を寄越さないから久しぶりになってしまったな」

「あは……」


一方的に送られて来ていた手紙に確かゴッドエデンに来るだの何だのと書いてあったけどまさか本当に来ちゃうなんて。まぁ一方的って言うのは僕が返事も何も出していないからなんだけど、それにしても僕は白竜の行動力を見くびっていたようだ。


「なぜ返事を出さなかった、大事な話だぞ」


ごもっともな事を言われ返す言葉が見つからない。だけど僕を逃がすまいと突き刺さるような鋭い視線は僕から揺らぐ事なく、渇いた笑いで誤魔化そうとする僕を確実に捕らえた。ああ怒ってる、怒ってる。フットボールフロンティア、そんな名前の大会の日本代表メンバー選出にチームゼロとして収集をかけるような内容。確かに最近届いた手紙には大事な事が書いてあったけど、言ってしまえば僕は幽霊。"存在する者"でなければならないというそんな当たり前の出場資格でさえ僕は得られないんだから、無理だよ。


「白竜」

「なんだ」


だけど何て言えばいいのかな。何て、言えば。


「シュウ?」


黙り込んだ僕を心配そうに覗き込む白竜。何か言わなくちゃ、そう思うのに何かが喉元まで込み上げてきて言葉が出て来ない。僕は途端に瞼が熱くなっていくのを感じて必死に空を仰いだ。

きっと天馬は日本代表に選ばれるんだろうな。白竜だって一流のプレイヤーだ、世界でだって十分に活躍していけると思う。もしその中に僕が入れたとしたらどれだけ楽しいだろう。楽しくて幸せで、いつの間にか僕がこの世に"存在する者"になってたり、しないかなぁ……なんて。


「馬鹿みたいだ……」

「なっ、馬鹿とは何だ!」

「あはは、白竜に言ったんじゃないよ」


だめだ、そんな事許されるはずがないんだもん。僕は溢れそうだった涙をぐっと堪えて何も無かったように白竜に笑顔を向けた。そんな僕に不満気な表情をする白竜。ああ、せっかく会えたのにそんな顔ばっかり。わざわざ会いに来てくれてありがとう、嬉しかったよって、伝えたい事はいっぱいあるんだけどな。


「シュ、シュウ!何を…っ」


白竜の背中に腕を回してみる。再会の抱擁…いや、多分こうやって白竜に触れられるのも最後になるかもしれない。だからこれはお別れの抱擁。


「もう手紙はいらないよ」

「え?」


そう言えば白竜は心底不思議そうな声で疑問を訴え掛ける。嘘なんか言ってないのにね。僕は白竜の腕の中で小さく笑った。笑って、それから気付かれないように泣いて。そんな自分を隠すようにぎゅっと白竜を抱き締めれば白竜は戸惑いながらも僕の頭を撫でてくれた。


「ねぇ」


白竜、僕の大切な人。これから先色んな事をして色んな気持ちを経験して、沢山の思い出を作ってください。僕が見れない素敵な色の世界を思う存分に楽しんでください。次に会えるのは何十年後かな?ずっと待ってるから、また会えたその時は、僕が飽きる程、嫌になっちゃう程、いっぱい話を聞かせてください。


「僕の分まで頑張ってね」


約束だよ。






ゆるやかに沈んで孵る
(また今度逢える時を)
(楽しみにしています)




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何で白竜は代表じゃないんだ!解せぬ。


∵ポーラーベア
(130518)



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