貴方とあの人を重ねて

「霧野ってさ、本当に可愛いよね」

「はっ…?」


彼はとても嫌そうな顔をした。それもそのはずだ。顔や容姿の事を言われるのを一番嫌う。そんな彼に可愛いなどの単語はタブーである。


「お前、それ嫌がらせかよ」

「まさか」


それでも私は馬鹿にしたわけでも、霧野が嫌いだから言ったわけではない。本当に可愛いと思ったからだ…


「羨ましいな。」

「お前、何言って…」


私は可愛くもなければ大人でもない。ただの無知で幼い子供だ。どんなに足掻いてもそれは変わらない。


「私も、霧野みたいに可愛くなりたい」


あの人の隣が似合う人に…


「涼風…お前…」


霧野が私の頬に手を添えた。そして、なんともまぁ情けない顔で私を見るのだ。


「霧野…?」

「まだ、あの人の事…」

「っ…」


何も言えなくなる。分かってる。私が隣にいても意味がないってこと。あの人の隣にはもう誰かがいるって事…。それでも忘れられない。諦め切れない。


私はあの人の事が、好きなんだ。


「…本当、お前馬鹿だよな…」


俺がいるのに、さ…彼は小さく呟いて、霧野は私を抱きしめた。結局、私は霧野に甘えているのだ。寂しくないよう。私自身が壊れないよう…


「ゴメン…」

「謝んなよ…馬鹿。余計に惨めだ」


更に強く抱きしめる霧野に私も答えるように抱きしめ返す。ゴメン、ゴメンなさい。好きでいてくれているのに、本当に好きになれなくて。


「私、霧野の事好きになればよかった」

「本当お前って狡い奴だな」


そして、その後は何も言わずに、彼は私を抱きしめ続けた。私はいつまでも彼の優しさや彼の気持ちに付け込んで、彼自身を蝕んでいくのだ。


【貴方とあの人を重ねて】
あの人の事を忘れられた、その後は…
(卑怯な私は)
(あの人を忘れるまで)
(私は貴方に縋り付くの)

END

最初は甘い感じにするつもりがいつのまにやら切ないものに早変わりwwいったいどうなったんだっ!
ところで“あの人”っていったい誰なんでしょうね!ご想像にお任せします!←

図式的にはこんな感じ
恋人→←あの人←ヒロイン←蘭丸

報われない蘭丸君。
いつかくっついたらいいな!


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