偽りからの解放の先
行ってらっしゃい
お疲れ様。
彼女はいつも俺が行くとき、そして帰るとき。いつも悲しそうに、辛そうにそう呟いた。なぜそんな顔をするのか。俺は知っていた。
彼女にこんな顔をさせるのはいつも俺で…心配ばかりかけて、彼女を陰で泣かせてばかりいた事を俺は知っていた。
だがそれはこの瞬間に一瞬で消え去ってしまったのだ。
「修也!」
「琴音…」
「お疲れ様、本当に…!」
ホーリーロード雷門の優勝。管理サッカーからの解放。つまり、俺がフィフスセクターから解放されたと同じ事を意味していた。
今までずっと傍にいて支えてくれた彼女は今までに無いくらい嬉しそうに笑って、綺麗に泣いていたのだ。
これ程まで幸せに感じた事は今まで無かった。いや、あったかもしれないが、それは当の昔の話だったと思う。
ホーリーロードが終わり日は過ぎ、俺は聖帝イシドシュウジという存在から、豪炎寺修也という存在に戻った。
そして、今。
「修也、今日は雷門に行くんだよね」
「あぁ。久しぶりに円堂たちに会って来るよ」
「そう…行ってらっしゃい、修也」
今ではかつて彼女がいつも悲しそうに辛そうに言っていた言葉は全てが変わった。彼女はとても嬉しそうに、楽しそうに俺に言葉を呟いてくれる。
行ってらっしゃい
お疲れ様
今ではただただ幸せを実感させてくれる言葉となった。
「…琴音」
彼女は今までずっと聖帝イシドシュウジであり豪炎寺修也であった俺を支えてくれた。どんな時も、ずっと、ずっと。
だから俺は一生、愛しい彼女と一緒にいたいし、ずっと守っていきたいと思っている。今まで支えてくれた分、彼女を愛していきたいんだ。
「ん?」
不意に彼女の名前を呼べば、不思議そうな彼女の顔が俺の目に映った。そんな彼女に俺は自分の唇を彼女の唇に重ねた。
俺はお前を愛してる。
そんなベタな気持ちを込めながら。
「えっ、あっ…しゅ、や?」
驚きながら顔を赤くする彼女を見ると自然に零れる笑みに俺はさらに幸せだな、っと実感する。
俺は下で結った髪を小さく翻しながらドアノブを捻り外へと開く。
ふと横目で彼女を見れば、今だに彼女は顔を赤くしていた。だか表情は驚きから笑みに変わっていた。
「きっ気をつけてね」
「あぁ…行ってくる」
それに対して俺は笑みを零しながら彼女に答るのだ。また再び彼女の元へと戻る為に、言葉を残して
【偽りからの解放の先】
それは彼女との新しい未来
(悲しませた分)
(俺は全力で)
(君を愛するよ)
END
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