(骸+5)


離れ離れ。遠距離。不安だけどそんなの貴方に会えば一瞬で消えていく。


「必ず、帰ってきます。」


今でもはっきり覚えている。綺麗なオッドアイで、真っすぐに私を見る彼の視線。別れを惜しむような表情。どこか決意が込められているしっかりした声。彼が、ツナ君達と共にイタリアへ向かって早5年の月日が経った。

彼と一緒にイタリアへ行きたかった。だけど、何もできない一般人である私が、家族を残してイタリアへ行くなんて事が許される筈も無かった。彼は言った、帰ってくると。私はそれだけを支えに今日まで過ごしていた。連絡なんて良くて3、4ヶ月に一回。


「う、そ…」


そんな彼から半年ぶりにメールが来た。その内容は明日の10頃に帰ってくるというもの。


「帰って、くる…?」


信じられなくて、何度も何度も内容を見直す。嘘じゃない。本当に彼が帰ってくる。私は急いでクローゼットを開けて、服を引っ張り出す。どんな服を着て行こう。どんな風に会えばいいのだろう。5年振りに彼に会うのだ。彼はどんな風に変わっているんだろう。いろいろな事を思い浮かべた。
明日着る服を決め、早めに布団へとダイブする。わくわくして眠れないなんて、ありえない。そんな事を思っていた私だったけど、確かに眠れない。寝よう寝ようと思うと逆に目が冴えてしまう。結局私が寝たのはいつもよりだいぶ遅い夜中の2時だった。

朝の6時に起きて、いつもはあまりちゃんとしないメイクも、髪も全部セットして空港へ向かう。


「間に合ったぁ…」


空港に着いたのは10時前。本当にぎりぎりだった。だけど間に合ったからよしとしよう。


「…?」


ふと携帯を開けば、一件のメール。フォルダーを開き中を見ると、彼からのメールだった。私は慌ててメールを開く。


「えっ…」


メールを見れば、飛行機が遅れて、夜に着く。というものだった。一気に脱力感がます。飛行機が遅れるなんて…なんでこんなときに…どうなってるんだ。仕方ないなんて分かってる。だけど、彼に早く会いたかった、誰よりも一番に彼に触れたかった。そう思うと、だんだんと自分が虚しくなっていった。涙なんか流すつもりはないのに、目には涙が溜まっていく。


「何を、泣いているんですか?」

「えっ…」


後ろからぎゅっと抱きしめられる。


「今、帰りましたよ…瑞希」

「むっ、骸さ…」


彼の声が耳の中で反響する。その瞬間に一気に身体中に熱が発生する。


「会いたかったです」


抱きしめられた後、彼によって向かい合わせにさせられる。目に入るのは久々に見る彼の顔。昔よりもずっと大人びてた出で立ちに長くなった髪。そして昔と変わらずに妖しく輝くオッドアイ。


あぁ…彼が、帰って…きた。


「わ、たしも…会いたかった…」


真っ赤になっている私を見て、いつものように笑うと思った。だけど彼は何故か顔を赤くした。


「なっ、なんで骸さんも赤くなるんですかぁっ!」

「すみません、貴女があまりにも…」

「?」


照れる彼を見るとなんだか私もまた恥ずかしくなってきてしまった。そんな時だ後ろの方から懐かしい声が聞こえた。


「犬、押さないで…」

「みっ見えないぴょん!」

「犬、千種…五月蝿い。」

「ちょっと、骸ちゃんと瑞希が見えないじゃない!」


彼と一緒に後ろを見れば、懐かしい面々がそこにいた。


「貴方たち…何をしているんですか?」

「むむ、骸様、落ち着いてくらさい!」


どこからとも無く出て来たトライデントを出し犬たちの方へと向かう彼を見て、なんだか可笑しくなった。何も変わっていんだと思った。


「骸さん」


今にもトライデントを振り回そうとしている彼は、ぴたっと止まり、私の方を振り返る。


「お帰りなさい。」


彼は少し驚いた顔をして…


「ただいま、瑞希」


優しく微笑んだ。


【再び私は貴方の元へ】
懐かしい面々に囲まれて
(貴方と一緒に)
(また笑いあえるのが)
(とても幸せなの)

END

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