私にはお兄ちゃんがいる。強くて、優しくて、怒ったら少し怖いけど、頼れる私の大好きなお兄ちゃん。だけど、私はお兄ちゃんの本当の妹じゃないのだ。
私の両親は私が小さい頃に事故で死んでしまった…。そして私はお昔親が仲がよかった雲雀家に引き取られた。今の父さんも母さんもたまにしか帰って来ないが、とても私に親切にしてくれた。だから私はこの家が大好きだ
「瑞希、風呂あいたから入りなよ」
『あっ、うん…』
いきなり部屋の戸がガチャと開いた。少し濡れた髪を拭きながら、お兄ちゃんが私の部屋に入ってきた。ドキドキと胸が高鳴る。色っぽいなぁ…と感想を心の中で述べる
そんな思いを胸の中に押し入れて、私は急いでお風呂場へ向かった。先に身体を洗い、その後に湯舟に身体を付けて温まる。さっきまで、ここにお兄ちゃんも浸かっていたのだと思うとドキドキして、なんともいえない感覚に襲われた。まるで変態だな。と自分で自重する。ぼーっとしながらも頭の中にはお兄ちゃんの事でいっぱいになった。
『本当、私って馬鹿だ…』
血は繋がっていなくても、戸籍上では、私とお兄ちゃんは兄妹だ。こんな感情は全て可笑しいのだ。
『好きにならなかったら…よかった…』
最近、いつもいつも思う。兄妹じゃなかったら…あっ、違うか…最初から本当の兄妹じゃなかった。違う意味でもし出会えていたら、こんな思いをする事もなかったのかもしれない
「瑞希、いつまで入ってるつもり」
『へっ?』
外からお兄ちゃんの声。あっ、また胸がドキドキしてる。ぼーっといろいろ考えていたら、長い間お風呂に入っていたようで、心配になってきてくれたみたいだ。本当、優しいなぁ…なんて思う。並盛で一番恐れられてる人とは思えない
「瑞希、聞いてるの?」
『えっ、あっゴメンなさい!すぐ上がる!』
湯舟からすぐに上がり、そのまま脱衣所へと行く。ガチャとドアを開けば…まぁねっ…もう分かるよね…
「瑞希…」
『きっキャァァァァーー!!おおおぉ、お兄ちゃん、なななななんでまだいるの!?』
「っ、煩いよ。大きな声出さないで」
『ごっゴメンなさいぃぃ…』
ばっと口を塞ぐ。これで大丈夫だ!そう思った矢先、次にお兄ちゃんは目を逸らしながらタオルを私の方に投げた
『へっ…?』
「まっ前くらい隠しなよ」
『っ…う、ぁ…。ごめっ、あり、がとう…』
なんか、もう言葉が出なくなって、私はただ縮こまりながら、ただ身体を隠す。たとえ兄妹だとしても、やはりダメだ。恥ずかしくて、死にそう…
「…ご、ご飯、出来てるから」
早く来なよ。お兄ちゃんはそう一言言うと、風呂場から出て行った。ヤバい、なんか、本当…色々ヤバい。私はただ火照った身体をどうすればいいか分からず、ただずっと縮こまっていた。
【顔なんて合わせられないの】
だって、今の私の顔…絶対赤い、から
(いったい今から私は)
(どうしたらいいのかな…)
END