初冬の風が頬を撫でる。寒さで身体を震わせながら、はぁ、っと試しに息を吐けば、案の定白く色付いたそれは宙に舞い、風にのって分散し色を無くす。いつも見る光景はなんだか虚しく感じられて、胸にぽっかりと穴があいたような気持ちになり、きゅっと喉が締め付けられる。なんだか涙が出そうだった。そうゆう時期なのかもしれないと無理に自分に言い聞かせる。本当のところ、なんでこんな気持ちになるのか、俺は分かっている…だけど、それを気付かないふりをする。

目を瞑て、手のひらで目蓋を覆う。冷たい闇、凍ってしまえばいいんだ

行き場のない想いなら…


「ツナ、遅れてゴメンね!帰ろう!」


差し伸ばされた手のひらに迷いはない。ただいつものように、繋いだ手のひらから体温を分け合う。こうしたら暖かいよねっと姉さんは微笑む。俺はその笑みに…逆らえる事などできない。その手のひらから伝わるこの暖かさにどれだけ泣きたくなるか。伝える事の出来ない本音を隠す。


「もう、仕事終わったの?」

「うん、本当ごめんね待たせて。生徒会室で待っててくれてよかったのに」

「それじゃ、姉ちゃんの邪魔になるだろ?それに、外で待つのも嫌いじゃないから」


俺がそう言うと、納得したのか、そっかと申し訳なさそうな顔から笑顔になり、前を向き歩き出す。手は繋がれたままだ。姉さんの手に触れるだけで、笑顔を見るだけで、どれほど胸が締め付けられるか、知らないだろう?凍える指先にじわり広がる暖かさ。今日も冷たいなぁと笑いながら、いつものように家へ帰る。熱が分散し拡散する。手のひらだけ、姉さんと同じ体温。反対の手のひらが嫉妬。馬鹿馬鹿しいな、自重的な笑みがこぼれた。あぁ、俺は恋してる。心が手のひらに、嫉妬。本当になんて馬鹿馬鹿しいんだ。だけどこれが好きってこういうことなんだと思う。


「今日は一段と寒いね」

「本当だね…」


寒さで頬や鼻を赤くしながら言った姉さんの言葉は、白く色付き、風に舞って、そうして、溶けてしまった。言葉すらも、姉さんのものは何一つ手に入らない。姉さんを得られるのはいったいなんなんだろう。今、繋いでいる手のひらと熱すらもいずれは誰かのものになってしまうのだから…。


【冬は嫌いだ。】
だって、そうゆう時期だから
(姉さん、触れられる。)
(嬉しいけど、)
(苦しいよ。)

END



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