今日の夜は特に不安が募った。

昨日の夢、今日の頭の中に流れた映像。全てが真実なようで、嘘ような気がしたあれは、いったいなんだったんだろうか。私の記憶?それとも、誰か?私にも分からない、私の記憶。見覚えがあるようで、全くのない映像。

考えたところで分からないなんて百も承知だった。ただ、今後何も起こらない事を祈るだけ…。

だけど、もしも…このよく分からない映像が原因で私の大切な人たちに何かあったら、大事な弟に危険が及んだら…。


『たとえ…私に何かあっても、どうなろうとも…守るんだ…』


それが私が今この世界に存在している、唯一の理由なのだから…。


瑞希は一人暗い闇の空の下。あの映像に向き合い、全てを受け止める事を決意するのだった。


「……姉さん…」


そんな瑞希の決意を綱吉は扉の外からそっと聞いていた。


「立ち聞きとはいい趣味とは言えないぞ、ツナ」

「リボーン…」


そんな綱吉の前にリボーンがやってきた。リボーンは声を低くしながら綱吉に声をかける。


「…なぁ、リボーン…お前は知ってるのか?姉さんがどうして今日あんなふうになったのか…」

「…さぁな。もし知っていても俺からは話さないさ。…瑞希自身から聞くんだな」


リボーンはそう言うと、綱吉の前から姿を消した。


綱吉は思う。リボーンは何か知っているのか。それとも何も知らないのか、と。だが、綱吉にはその真相は分からない。だが少しでも何か情報があれば、愛する姉の不安な気持ちを少しでも取り除けるかもしれないのに…。

何も知らない自分に綱吉はとても情けなく思った。結局俺は姉さんに何もしてやれないのだろうか…。


「姉さん、俺…」


少しでも姉さんの事を知りたいよ…。誰よりも姉さんの近くにいて、姉さんを守ってやりたい。


「…姉さんの不安も苦痛も…姉さんに降り懸かる災難全てを…俺が取り払ってあげるから…」


だから…姉さん…少しは俺に頼ってくれよ…


「俺が全部…守るから…」


綱吉は壁越しに背を預け座り込みながら、小さな声を瑞希に向ける。だがその声は瑞希に聞こえるはずもなく、ただ空虚な闇の中に消えるのだった。

【一つの決意と一つの願い】
守られる存在なんかになりたくない
(この姉弟に待ち受ける未来は)
(絶望か、希望か)
(どちらにしろ残酷な未来)

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