ついに夏が到来た。外では蝉の声と強い太陽の日差しが照り付け、普通に過ごしていても汗が吹き出す程だ。
綱吉はその状態に苛立ちながらクーラーをつけて部屋でじっとしていようと決意していた。部屋の扉を開ける。すると、何かに引っ掛かったのか、ゴッという音が耳に入った
「…こいつ…」
綱吉の目に入ってきたのは、指を加えながら気持ち良さそうに眠るランボ。どうやら暗殺しつかれて眠ってしまったようだ
そんなランボに呆れ、また苛立った後、綱吉は部屋に目線を向ける。そこには夏の定番ともいえるそーめんを啜る浴衣姿のリボーン。そしてその隣には綱吉の最愛する姉の瑞希がいた
「ちゃおッス」
『ツナ、お帰りなさい』
「お前は日本の夏を存分に味わってんな!」
【ポイズンクッキングU】
まさに日本の夏。とでもいうような姿のリボーンに綱吉は呆れた。本当にこいつはヒットマンなのか?と
「うっせーぞ、ツナ。瑞希が作ってくれたもんだ。味わって食わせろ」
「えっ、姉ちゃんが作ったの?」
『うん!あっ、ツナも食べる?味の保証も無いし、私ので悪いけど』
瑞希は苦笑いを浮かべながら、綱吉に自身のそれを渡した。綱吉はそのそーめんをまじまじと見つめた
姉さんの手作り…。それがどれ程綱吉にとっては貴重なものである事を誰が知るであろう。綱吉は当然の事ながら、嬉しさで笑みを零してしまわないように、箸を手に持つ
「…じゃあ、いただきます。」
麺をつゆに付け、口元へ運ぼうとした瞬間だ。ガチャッと部屋の戸が開く。そこには毒々しい料理を持ったビアンキの姿があった
「瑞希、あげなくていいわよ。」
『えっ?』
「あなたの分もあるわよ。かっ食らって」
「ビアンキ!なっなんでお前がココにいるんだよ!またそんな毒々しいもん持って!」
ビアンキはリボーンの方へと歩いて行く。綱吉は逆にビアンキを避けるように後ずさる
「愛のためよ」
「仕事のためだぞ」
「リボーンは私がいなくちゃダメなのよ」
「お前の家庭教師を一部ビアンキにたのもーと思ってな」
『もの凄く噛み合ってないね…』
話が噛み合わない二人に瑞希は苦笑しながら、手に持つそーめんをどうしようかと考える。逆に綱吉は二人の食い違いなど興味はなく、ただ瑞希のそーめんを早く食べたい気持ちでいっぱいだった
「なにいきなり家庭教師とか言ってんだよ!!自分もロクにしてねーくせに!」
『あっ…。ねぇ、ビアンキ…あのツナの事殺そうとしてのは…』
「あっ!そうだった!この女は俺をポイズンクッキングで毒殺しよーとしてんだぞ!!」
ビアンキは笑いながら綱吉に答える
「フフまだ子供ね、二人とも。いつまでもそんなことにこだわってるなんて」
「え?」
「今開発してるのはポイズンクッキングUなの。殺傷力2倍!」
とてもいい顔をしながら言うビアンキ。そんなビアンキに綱吉と瑞希は絶叫しる
「なおさら出てってくれー!」
『ツナは殺しちゃダメっ!』
だが、ビアンキがそんな事を聞くわけもなく綱吉を無視して続ける
「私が受け持つのは家庭科と美術よ。今日は家庭科の実習をするわ先に行って準備してくるわね。瑞希、手伝ってくれる?」
ビアンキの頼みに瑞希は二つ返事で了承し、下へと向かった
『あっ、ツナ。そーめん食べていいからね!』
「ねっ姉ちゃ…いっちゃった」
そそくさと出ていってしまった瑞希を切なそうに見送った後、綱吉は瑞希が作ったそーめんに目をやる
「たくっ、なんなんだよあの女…。まぁいいや、姉さんの手料理」
上機嫌にそーめんに手を伸ばす。が、先程までそこにあったはずのそーめんがなくなっていた
「はっ…?」
キョロキョロと周りを見渡せば、今だにそーめんを啜るリボーンの姿
「ま、さか…それ」
「お前の分だぞ」
「てめぇ!こら何勝手に食ってんだ!」
綱吉は絶叫する。だが時は既に遅し。リボーンはそーめんを完食してしまう
「うるせぇぞ、ツナ。いいだろ減るもんじゃねぇ」
「減るよっ!」
「知るか。それに瑞希の手料理は全部俺のんだ」
「はっ!?なに馬鹿な事言ってんだこのクソガキ」
「誰がクソガキだ…このダメツナ」
「誰がダメツナだ!」
睨み合いながらバチバチと火花を散らせる二人。それは、もうどちらが攻撃を仕掛けてもおかしくないくらいだった。そんな時だ水を指すようにチャイムが鳴り響く
「チッ…誰だよこんな時に…」
「10代目っ!」
「獄寺か…」
「さっさと行けダメツナ」
「るっせぇ…後で覚えとけよ…」
綱吉は渋々、下へと向かう。
『あっ、隼人いらっしゃい』
「おっおう」
一足先に獄寺を迎え入れたのは瑞希だった。タバコをくわえながら、片手には大きなスイカを持っていた
「よぉ…瑞希…。あっ、あのよ…スイカ持って来たぜ」
『スイカ?わぁ、ありがとう隼人!』
「あぁ。あっ!10代目!」
獄寺と瑞希が話している最中に、綱吉が階段から下りてきた。上から見下ろす綱吉は、冷たい目で獄寺を睨みつけていた。瑞希は手渡されたスイカに夢中でなにも気づかない
「…獄寺君どうしたの?」
『スイカ持って来てくれたんだよ!』
「このスイカ一緒にどぉすか?めちゃめちゃ甘いらしうんスよ!」
ニカッと笑う獄寺を様子を伺うように綱吉はじっと見据える。そして綱吉は無理矢理笑顔を貼付ける
「ありがとう、獄寺君。凄く嬉しいんだけど今ちょっと取り込んでて…」
「!トラブルっスね!なんなら俺がかたつけますよ」
嘘はまぁ、吐いていない。綱吉、コイツにビアンキをどうにかしてもらおうと企んだ。たまには役に立ってもらおう。睨みを効かせる獄寺に綱吉は早速頼むかと、心の中で思う
「え!?じ、実は…今家に…」
綱吉が状況を説明しようと口を開いたその時だ。いきなりドタッと倒れる音が耳に入る。目を向ければそこには顔を真っ青にしながら座り込む獄寺の姿があった
「アネキ!」
「隼人」
「え?アネキって?ん?」
獄寺の目線の先には、ビアンキの姿。獄寺はビアンキを見た瞬間、即座に腹を押さえ付けて、苦しむ獄寺がいた。次の瞬間、獄寺は、失礼します!!っと綱吉に言い残し、沢田家を飛び出していった。
「ちょっ…獄寺君!!?」
「いつもあーなのよね変な子」
台所から料理道具を持ちながら出てきたビアンキは獄寺を呆れながら見ていた
「アネキ…姉?ってことはつまり…」
『姉弟だよ。腹違いのね。ツナ、隼人が心配だから追いかけよう!』
「う、うん!」
瑞希と綱吉は急いで獄寺の後を追いかける。そして、境内で息を乱しながら木にもたれ掛かっている、獄寺を見つける。そして、大丈夫か?と心配する綱吉に獄寺は坦々と話しはじめた。
「アネキとは8歳まで一緒に済んでいました…」
過去を悲惨に思い出す獄寺。その内容は同情に値する内容だった。城でよく行われたパーティーで獄寺が初めてピアノを発表することになった。その時にビアンキが弟の為に作ったクッキーが悲劇の始まりだった。
クッキーを食べた獄寺は急にお腹の調子が悪くなり、そのままの状態でピアノを弾いたのだった。結果は大好評に終わった。それを気をよくした獄寺の父はビアンキにまたクッキーを作らせ、また獄寺にピアノを弾かせたのだ。
そして、幼少の頃の恐怖が体に染み付いき今ではビアンキの顔を見るだけで腹痛が起きる程になってしまったらしい。
「薄々感づいたけど、強烈なお姉さんだね」
「えぇ。大嫌いです。」
『…』
瑞希は獄寺の“大嫌い”という言葉に少し反応した。その微妙な変化に綱吉は気付く。そしてどこか不安げな様子で瑞希に気を配り、獄寺の話を聞いた。
「俺はアネキに近づけません。10代目…アネキをこの町から追い出してもらえないでしょうか」
懇願する獄寺に綱吉は困った表情をした。また面倒な事に巻き込まれたからだ。確かにビアンキがいなくなればこちらとしては好都合だ。しかし、やる気も気力もない側としては本当に迷惑な話だった。
そんな時だ。獄寺は作戦があるからと、綱吉に頼む。その内容もまたぶっとんだものだった。それは過去、リボーンに惚れる前にいた元彼を探しだすというものだった
「アネキはそいつに会わせれば地の果てまでそいつを追いかけるはずです」
『隼人、それはちょっと無理が…』
「大丈夫だ瑞希!」
当たり前だが無理があるだろうと思う二人に獄寺は有無も言わせずに、写真を見せた。そこには、なぜか見たことのある人が写っていた。
「こんな牛男見たことあるー」
『わぁ、大人ランボそっくりだね』
二人は仕方なく作戦にのることにした。そして家へと戻った二人は二手に別れる事にした。綱吉はランボ、瑞希はビアンキの所へ向かう。
ランボの方へ向かった綱吉は自身の部屋へと向かうと、そこには案の定部屋で寛いるランボの姿があった。
「おい、ランボ…10年バズーカでさっさと10年後になれ」
綱吉はランボを睨みつけながらしゃがみ込む。ランボはその少しびくつきながら言葉を発した。
「ラ…ランボは10年バズーカなんか撃ったことないぞ!」
「はぁ?」
今までの行為は何だたたんだと思いながら、綱吉は何度もランボに10年後になるよう言う。しかし、ランボは話を全く聞かない。困った綱吉は仕方なく、不本意だが、リボーンを頼る事にした。
「リボーン頼みがあんだけど。軽くランボどついてくれよ」
水遊びをしようとしているリボーンに頼む。リボーンが殴ればランボも10年後になると思ったからだ
「ヤだ。俺は格下は相手にしねーんだ」
「んな事言ってる場合じゃねぇだろ!ビアンキの奴どうすんだよ!」
綱吉とリボーンが口論をしている時だ。いきなり屋根の上から誰かの声が響く
「ガハハハハそー言ってられるのも今のうちだぞリボーン!ランボさんはこの二階から勇気を飛び降りちゃうもんね!」
スタンガンを持ちながらプールへと落ちるランボ。バババッと悲惨な音を出しながら、ランボは案の定感電する。
「馬鹿すぎる…」
ランボはそのまま、泣き叫び、10年バズーカに手を伸ばし、発射した。すると、モクモクと煙が出て、大人ランボが現れた
「やれやれ。なぜ俺に水がしたたってるんだ?」
『さっきの音な…あっ、大人ランボ!』
先程の電撃の走る音に反応し、瑞希が奥から出てきた。ランボは瑞希の姿を確認すると、すかさず瑞希の手を取る
「瑞希さんっ!こんにちは。あぁ、やはり、いつ見てもお美しい」
『あっありがとう』
そんな様子に、綱吉は眉を潜め、ビアンキを呼ぶ。
「ビアンキちょっと、こっち来てみて!(ランボの奴!後で殺す!)」
「無理矢理やらすのは嫌いだけどそろそろ家庭教師はじめるわよ。ロメオ!!」
ビアンキは大人ランボを見るとすぐにロメオだと勘違いをし、近づいて行った。そんな様子を瑞希は嫌な予感を感じながら見ていた。
『嫌な予感…』
「ロメオ!生きてたね!ロメオー!ポイズンクッキングUー!!!」
持っていた、ケーキを、大人ランボへ躊躇なくぶつける。
「なにーっ!」
『確か、別れる直前かなり険悪だったんだったよ…』
「よく元彼を思い出しては腹立ててたからな」
「え゛ーっ!」
大人ランボは、ふるふると奮えながら、いつものフレーズを言い、こてっと気を失ってしまった。
「ランボ!しっかりして!寝ちゃダメだ!泣いてくれー!!」
「10年後の医療なら助かるかもな」
数分後、大人ランボは10年後の世界へと帰って行った。
次の日。学校へと行く途中に昨日の事を獄寺に話す。そして、二人はその時知る事になる。元彼の死因が食中毒だった。という事を…。
悩みの原因だったビアンキは、リボーンの鰻が食べたいの一言てで浜名湖へと鰻を取りに行った。
【ポイズンクッキングU】
姉弟のしがらみ
(しがらみなんか無くなったら)
(俺は、この手に姉さんを…)
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