誰か一人に頼るんじゃない。サッカー部全部で前に進んでいく。そんな雷門サッカー部になって欲しいの


【あみだせ必殺技!】


帝国との試合が終わって次の日。円堂はメンバーを部室に集めた。そして特訓ノートを机の上に置いて話しはじめる。



「帝国戦で、俺達の問題点がわかった。それで…」

「問題点も何もまず体力なさすぎ。」



マックスの一言でどよんとする部室。



『あ、ははは…』

「あ、ごめん。今のへこんだ?」



風丸が腕組みをして円堂に促した。



「円堂、話を続けてくれ。」

「まぁ、体力づくりはもちろんなんだけど、昨日明とこんなフォーメーション考えたんだ。」



円堂はフィールドが描かれたホワイトボードに赤のマーカーで番号を書いていく。皆真剣にボードを見つめている。



「じいちゃんのメモがベースなんだけどさ。」

「えぇー!僕FWじゃないのおー!?」

『だって、目金君じゃぁ、FWはキツイかなって…』

「そうそう逃げた奴が何言ってんだか」
「戦略的撤退と言ってほしいね!」



がくっ!っと全員がこけた。円堂でさえも呆れている。明も苦笑いさえでずに少し頭を抱えて始末だ



「あの、キャプテン。」

「ん?何だ?」

「こないだの豪炎寺さん呼べないんですかね?それに、明さんは出れないんですか?」

『私はマネージャーだから、なぁ…しかも女だから…出れるか分からないよ』

「そんなぁ…」



ガクッとうなだれる一年メンバー。その言葉と全員の反応を見て、染岡の顔つきが一気に変わった。



「そうだよね。結局のところはあの1点、豪炎寺君のシュートだったんだからね」

「今の俺達じゃあんなふうにはなれないッスよ…」



とうとう染岡が立ち上がり、いきなり怒鳴り出した。



「あんなのは邪道だ!俺が本当のサッカーを見せてやる!」

「そ、染岡…?」

「染岡さん…!」

『ど、どうしたの?』



染岡は円堂の方を向いた。



「豪炎寺はもうやらないんだろ!」

「それはわからないけど…。」



円堂は戸惑いながら答えた。



「円堂まで…アイツを頼りすぎだ!」

「そんなことは…!」

「俺達だってできるさ!もっと俺達を信じろよ!」

そこへ秋が部室へ入ってきた。明はいち早く反応した。



「皆!お客さんよ…?」

『あ、秋…。』



全員が秋の方を注目する。



「何かあったの、明ちゃん?」

『んー、ちょっと…あっ、それよりお客さんって』

「あっ、うん。ど、どうぞ!」



部室に入ってきたお客さんとは雷門夏未だった。彼女は入ってくるなり顔をしかめた。



「くさいわ。」

「こんなヤツ、なんで連れてきたんだよ!!」

「話があるって言うから…。」

「ちっ!」



夏未は円堂の方を向き、話し始める。



「帝国学園との練習試合、廃部だけは逃れたわね。」

「お、おう!これからガンガン試合していくからな!」



夏未は妖しく笑う。



「次の対戦校を決めてあげたわ。」


「「『えぇっ!!?』」」



驚く一同。



「次の試合!?」



ところかわって帝国学園。設備の整ったグラウンドで彼らは練習していた。



「鬼道さん!!」



高くあげられたボールに向かって鬼道が跳び余裕の表情でシュートを決める。彼は華麗に着地するとにやりと笑った。繰り返される激しい練習。彼らの強さはこれにあるのだろう。そんな中ベンチで少し休憩している鬼道に辺見が話し掛けた。



「鬼道さん、雷門中のことは聞いてますか?」

「奴らがどうした。」

「うちとやってから、実はかなりすごいチームなんじゃないかって噂が広がってますよ。ひどいところになると、帝国が1点に泣いたなんて話まで…」



鬼道はそれを聞き、鼻で笑った。



「言わせておけ。俺達は任務を果たした、それだけだ。」

「そうですね。ただ、あれから雷門には練習試合の申し込みが後を立たないそうで。」

「ほう…。」

「さぐりを入れた方がいいですかね?」

「必要ない。すでにネズミは潜り込ませてある」



彼はまたにやりと笑った。そして、彼は明の事を考えた。どうすればあの女を手に入れられるのかを…


そして、また場所は変わり…雷門中サッカー部、部室。



「すごいでヤンスね!!もう次の試合が決まるなんて!」

「やったな、円堂!」



半田は円堂の肩にポン、と手を置いた。


「ああ!夢みたいだよ!また試合ができるなんて!」

「今度こそ、僕の出番だろうね?」

「俺も、次こそ目立つよ…。ふふ、ふふふふふ…」



サッカー部員が喜びに包まれている中、夏未が声を荒げた。



「話を聞くの!?聞かないの!?」

「ああ、すまない!で、どこの学校なんだ?」

「尾刈斗中。試合は1週間後よ。」

「尾刈斗中かあ…。」
「尾刈斗中?」

『って、いったいどこ?』



全員首をかしげた。



「もちろん、ただ試合をやれば良いというわけではないわ。」

「え?」

「今度また負けたら、このサッカー部は直ちに廃部。」



全員が苦い顔をした。



『やっぱり、ねぇ』

「またかよぉー…。」

「ただし勝利すれば、フットボールフロンティアへの参加を認めましょう。」



その言葉にぱっと顔が輝く円堂と明、そして他のみんなもだ。



「せいぜい頑張ることね。」



そう言って夏未は部室から颯爽と出ていった。すると明はすぐに出て行った夏美のもとへと走る



『あっ、あの、夏美さん!』

「あら…貴女…なんの用かしら」


『えっと、ありがとうございました!』
「はっ?」



夏美はいきなりの事に目を丸くした。何故いきなりお礼を言われたのか、その理由が分からなかったからだ


『帝国との試合が理由でみんなが少しずつ変わってきてたんです!だから、ありがとうございました』

「べっ…別に元々はサッカー部を潰すつもりでやったこと…お、お礼を言われるような事ではないわ、それじゃ」



夏美は照れながらプイッっと振り返る。そしてそのまま明とは反対方向に歩きだした。夏美を見送った明はまた部室に戻った。

部室はFFに出られる事に喜びでいっぱいだった。得に円堂は嬉しさのあまり、再び入ってきた明のもとへ走り寄り、キラキラとした目で喜ぶ



「明!やっとFFに出れるぞ!」

『うんっ!やったね、守兄!負けられないね、この試合!』

「あぁぁ!さあ、皆!明の言うとおりこの一戦、絶対に負けられないぞ!!練習やろうぜ!!」


「「『おお――――!!!』」」



掛け声の後、外に飛び出していく部員たちはいつもの河川敷へと向かった。



 




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -