あまり好きになれない授業が終わり、制服に身を包んだ兄の円堂守そして、妹の明はサッカー部の部室へと急ぎ足で向う。そして、直ぐに円堂はユニフォームに着替えて近くにあったボールを手にとる
そして、一言…


「さあ!練習だ!!」


【サッカーやろうぜ!】


しんっと静まりかえったままの部室。中を見渡せば、部員達は思い思いの行動に身を投じていた。ゲームをしていたり、雑誌を読んでいたり…挙げ句にはお菓子を食べていたり、クンフーの修行をしていたり。普通なら有り得ない行動もこの雷門サッカー部では当たり前の事になっていた。


『…はぁ…』


明は溜息しか出なかった。呆れてものも言えないというのはきっとこういう事を言うのだろう。


「さあ!!練習!!!」


円堂が再び全員に声をかけるも、誰も動こうとはしないままだ。


「どうしたどうした?もうずーっと練習してないんだぞ?」

「グラウンド、借りられたのかよ。」

「これからまた、ラグビー部に交渉して!」
「だと思った。」


今の雷門サッカー部の練習場であるグランドはラグビー部に使用されている。いくら円堂が交渉したところで彼らがグランドを貸すなんて事は有り得ない。


「どうせ笑い者になるだけでヤンスよ!」

「七人ぽっちならテニスコートでも十分だろ、って。」


栗松と宍戸はゲームをしながら、いつも言われている事を口に出した。


「グラウンドが空いてる日にやればいいんじゃないの?」

「そーそー。」

「空いたことないけど。」


そして、それに続き、半田、壁山、少林寺が口を出す。部員達のあまりのやる気のなさに明はまた溜息をついた。それとは反対に円堂は声を大きくして言葉を発した。

「俺達はサッカー部なんだ!!!テニスコートなんかでやらない!!」

『守兄…』

「そうだ!フットボールフロンティア、今年こそこれに出ようぜ!なっ!染岡、半田!」

「無理無理。」

諦めているかのように半田は無理と連呼
他の部員も大差ない反応だ。そして、ピコピコとゲームを続ける栗松が言葉を放った。


「部員七人じゃ試合に出られんでヤンス…ああっと!」

「遅い、そこでシュート。」

「うるさいでヤンス!」

サッカーゲームをやっている栗松と口を挟む宍戸。二人はずっとゲームに集中しっぱなしだった。

『ねぇ、サッカーのゲームにはそんなに一生懸命なの?』

「ゲームはゲームでヤンスからですよ、明さん。」

『本当のサッカーの方が面白いよ?』

「そうは言うけどな…。」

『ボール蹴るだけでもいいんだよ?やろうよっ、みんな!』


互いに顔を見渡しながら、どうする?みたいな雰囲気になった。これならいける!そう思う明に反して、円堂はもうキレる寸前


「お前らな!!サッカーをやりたくて入部したんだろーが!サッカー部が、サッカーやんなくってどうすんだよ!」

『あぁぁ、もぉ!ちょっと、守兄っ!』


そしてついに円堂はキレてしまい部室を出ていってしまった。明の苦労も容易に壊れてしまったのだ。仕方なく円堂が行くところを後ろから着いていく。バンッと、円堂は勢いよく扉を閉める。すると勢いでサッカー部の看板が落ちてしまった。


『待ってよ守兄!』

明も急いで円堂を追いかけ部室を出ると、看板を持ち立ったままの円堂の姿があった。

『もぉ、守兄また落としたの?』

「あはは、すまねぇ明」

『もぉ…』
慌てて看板を直している円堂。そして、その頃…部室の中で半田と染岡がつぶやいた。


「何あの2人は熱くなってんだ?」

「頑張ってもしょうがないさ、もうすぐ廃部って噂もあるしな…。」

「廃部!!?」


染岡の一言にみんなが驚いている中、外にいる二人は少しつまらなそうにパス練をしていた。そこへ、サッカー部マネージャーの木野秋が二人のもとにやってきた。


「円堂くーん!明ちゃーん!」

「ああ、木野!」
『秋、どうしたの?』

「ごめん…グラウンド借りられなくって…」


明が尋ねると秋は申し訳なさそうに答える。

『秋、気にしないで、仕方ないよ』

「明ちゃん…ありがとう」

『うんっ』


微笑み返す明に秋は少し顔を赤く染めた。秋は少し焦りながらみんなの様子を聞いた。


「いつもと同じ」

「練習しろって、言ってこようか!?」

「いいよ。そのうち、きっとやる気になってくれるさ。」
『みんな本当は好きだもんねサッカー』


絶対にみんな、サッカーの練習に励んでくれるようになる。ただきっかけが無いだけなのだから。『守兄、そろそろ行こう』
「あぁ、そうだな」

「あっ、また河川敷行くんだ!小学生のチーム相手で練習になってる?」

「あいつら、けっこうやるんだぜ!木野も見りゃわかるって!」


その後、明、円堂、秋の三人はいつもの河川敷で小学生達とサッカーを楽しんでいた。そしていつの間にか辺りはすっかり夕暮れ色に染まっていた。



「よぉーし!次だ!」
「行っくぜー、円堂!うわっ!」


バンダナの少年のボールをツインテールの女の子がカットする。


『まこちゃん、ナイスカット!そのままゴール!』


パシッっと円堂は軽々とまこのシュートを受けた。


「えぇ〜、また止めんの?」
「ははっ!よーし、交代だ!次!」


円堂は続けてくるシュートを受け止め続けた。


『あれ…誰、だろ…』


秋のもとへ向かおうとしていた明は一人の少年に気がついた。少年は明の視線には気付いておらず、ただ円堂達の練習を見ていた。明は少年にを少し気にしつつも秋のもとへと向かった。


『疲れた…』
「明ちゃん、お疲れ」

『うん、ありがと。それにしてもさ、なかなかやるでしょ、みんな』
「うん、ちょっとびっくりしちゃった」


クスクスと笑う秋に明は可愛いなぁ、と思いながらまだ練習をしている円堂達の姿を見た。


「今度こそ俺が決めてやる〜!見ろ!俺の必殺シュート!」


バンダナの少年が勢いをつけてボールを蹴る。しかし、その蹴ったボールはゴールにではなく脇を通った不良たちの目の前を飛んでいった。


『あっ!』
「ああっ!」

「誰だ!!コイツ蹴ったの!!」


不良が叫ぶと円堂は急いで謝りにその不良達のもとへ謝りに行く。


「大丈夫ですか!?すいませんでした…あの…ボールを返してぐふっ!!?」

『守兄っ!!』
「円堂君!!」


不良は丁寧に頭をさげた守の腹を思い切り蹴りをいれた。それを見た明はすぐさま、秋の静止を無視し円堂の近くに寄る。


『っ、守兄に何すんのっ!』
「明ちゃんダメ!」

『こっちが謝ってんのに…!ボール返し、きゃっ!』

「あ゛ぁ、!?誰に向かってい言ってんだ、姉ちゃんよぉ」

秋の制止も聞かずに前へ出た明は不良達には力いっぱい押され、その拍子に尻餅を付いてしまった。


「はっ、ボールって…これか?」


不良はボールの上に座り、気持ち悪い目で明をジロジロと見出した。


『なっ!止めて、ボールに何するの!?ふざけないで!!』

「姉ちゃんが俺達の言う事聞いてくれんだったら返してやんぜ?」
『聞く!だから返してっ!』


不良達はおしっ、と明に触れた。気持ち悪い、だけどボールを返してもらう為なら、と明はぐっと堪えた。


「なっ、明に触るなっ!」
「うるせーよ」


円堂はまた思いっきり腹を蹴られる。


『なっ何してっ!』
「あれぇ?雷門中じゃねーの?部員の全っ然いねぇ、弱小サッカー部ですよ!」

「くだらねぇ、ガキ相手に球蹴りかぁ?」

悔しそうに睨む円堂と明の姿を秋はとても心配そうに見ていた。


「野水さん、お手本見せてやっちゃあどうです?」

「いいねぇ、やってやろうじゃねえの?」

不良はそう言うとサッカーボールに唾を吐いた。


『!!』
「!!」
『返すって言ったじゃない!』

「そんなの知らねぇなっ!あらよっと!!」


不良の蹴ったボールはおかしな方向に飛んでいった。そしてその先には、まこの姿…

『やっ、危ない!!!』

「はあっ!」
「!!?」
『!?』


蹴り出されたボールは、明が先程見かけた少年により、強く蹴り返された。その少年が蹴ったボールは不良の顔に思い切り当たる。


「や、野水さぁん!!」

「な…!」
『す、ごい…』

「て、てんめぇ!」


後ろに付いていた不良は少年を睨む。しかし少年がそれ以上の気迫でにらみ返すと覚えてろと叫び逃げていった。


「ありがとう!」

まこが少年にお礼を言う。すると少年は優しく微笑み返し、その場を去ろうとした。


「待ってくれ!!お前のキックすげぇな!サッカーやってんのか!?ねえ、どこの学校なんだ!?」

「……」
「よかったら、一緒に練習しないか!?」

すごい勢いで話しかける円堂を無視し少年は明に話し掛ける。


『…?』

「大丈夫だったか?」
『えっ…あ、うん!ありがとっ!』


明が少年にお礼を言うと少年はそのままその場を立ち去ってしまった。


「あ…おい!」
『どこ行くの?』


立ち去ってしまった少年を見ながら二人はただ呆然と立っているだけだった。そして時間が過ぎ、二人は家へと帰宅した。



「『ただいまー!!』」


家に着くと二人は興奮冷めやらぬ様子で直ぐに自室へとかけていった。二人は部屋へ駆け込むやいなや部屋に飾っている写真へと話し掛けた。


『おじいちゃん、今日凄い人にあったの!ねっ、守兄!』

「あぁっ!」
『すごかったなぁ!私もあんなシュートが打てたら…』


明と円堂は部屋で目をキラキラさせながら夢中になりながら写真に話し掛ける。


「守ー!明ー!ご飯の前にどっちか先に風呂入っといでよー!」

『あっ、守兄、お風呂』
「俺、あんなの初めて見た!あんな奴がうちに来てくれたらなぁ」


母の声に気づいて明は円堂に話し掛けるが、円堂は気づかずにそのまま写真に話し掛けた。


「なぁ、じいちゃん!俺がまたあいつに会えるように応援よろしく頼むな!」
『ダメだ…』


こうも真剣になってしまった妹と言えども、話し掛けても無駄だと明は判断した。このままお母さんを待たせたらまた怒られると思った明は先に部屋を出て風呂に入ろうと向かう、が…


「いいからさっさと風呂に入る!!」


時既に遅し。ガチャッと扉が開き、母に怒鳴られ、二人は順番にお風呂に入る事にした。



 




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