仲間がいればどんな困難にも恐怖にも立ち向かえる!!


【これがイナズマ落としだ!】


FF地区予選一回戦目を間近に豪炎寺と壁山はイナズマ落としの完成を急いだ。特訓の末、色々な不安を持ちながら規定の高さまで飛ぶジャンプ力を手に入れた二人はついにイナズマ落としを実践に移す事になった。


「うん。壁山の着地は問題だが、高さは充分だ」

『後は実際に合わせるだけだね!』


さっそく挑戦する事になり、ボールを高らかに上げる。そのボールを追い、豪炎寺、壁山は同時に飛び上がる。


「ひっ!」


全員が見守る中、ふと下を見た壁山は、ギュッと目を閉じた。身体を縮こまる壁山の肩にちゃんと乗れるわけもなく、イナズマ落としは失敗に終わった。下に落ちた後も縮こまり、身体を震わせる壁山にみなが疑問に思った。


『壁山君、どうしたの?』

「明さん、俺…たたた高い所ダメなんス。怖いんス」

「「えぇぇ!」」

「そんな事は先にいいなよ」


誰もが飽きれを隠せない状態だった。無理もない。やっとイナズマ落としの完成に近づいているのに、技を出す本人がこの状態なのだから。


「恐くて目をつぶるから、オレが肩に足をかけた時、バランスを崩したんだ」

『だから着地が出来なかったんだ』

「下を見るから、恐くなるんじゃない?ずっと豪炎寺君を見てたらどう?」

「はい、やってみるっス」


秋のアドバイスに壁山と豪炎寺は再び挑戦する事になった。再びボールが高らかに上げられる。豪炎寺だけを見ようと奮闘する壁山だが、思わず下を見てしまい、また失敗。


『あちゃぁ…』

「豪炎寺さんだけを見よう見ようと思っても、つい下が気になって…」

「あらあら。こんな状態で、次の試合は大丈夫なのかしら。せっかく秘伝書を見つけてあげたのに、ムダになりそうね」


突然あらわれた夏美に染岡はキレる。それを止めるかのように、円堂が言葉を発した。


「誰になんと言われたって、豪炎寺と壁山はイナズマ落としを完成させるって、俺は信じる!」

『そして、全然試合に勝つ!ねっ、守兄!』

「あぁ!」


夏美は、フッと笑って、試合が楽しみね。と言いながら、優雅に立ち去っていった。そして壁山が、高さを克服するため特訓が始まった。水泳部に頼み、飛び込み台を借り、滑り台、ジャングルジムと次々に試すが、失敗に終わった。


「80cmクリアだね」

『それじゃぁ次は、1mだね』

「壁山、努力と根性と気合いだ!それがあれば、なんだって克服できる!」

「それなら、キャプテンの成績は、学年トップの筈っスよ」

『アハハ、それもそうだ!』

「明っ!」

『あぁ…ゴメンゴメン』


力強く壁山を応援する円堂に対し、キツイ言葉がふってきた。それを聞いた明は楽しそうに笑った。兄である手前、妹に笑われたのがショックだったのだろうか…円堂は声を上げ明を怒った。とりあえず、話を元に戻そうと風丸が割り込む。


「野生中との試合には、イナズマ落としがなければ勝てないんだ。壁山お前にかかっているんだぞ!」

『そうだよ!壁山君、頑張ろう!』

「そんな事言われても…」


風丸の言葉に合わせて、明も壁山を応援する。が、壁山は頭を抱え込んだ。するとそんな壁山を見た円堂が口を開く


「壁山だけに辛い思いはさせないって」

「キャプテン…」

「敵が強いんなら、俺達はもーっと強くなればいい!」

「あぁ!俺達も特訓して、一人一人がレベルアップするんだ!」

「「おぉー!」」


円堂と風丸の言葉に同意して握り拳を上げる部員達の姿に、明は笑みを溢した。

そして、ところ変わって、部員達は、河川敷で練習を開始した。


「おぉ。みんな張り切ってるね」

『土門君、練習はいいの?』

「どうせ、入部したての俺には出番ないだろうよ。まぁ、のんびりとやっていくさ」


そういいのんびりと雷門の観察(偵察)をする土門を他所に、豪炎寺と壁山は、イナズマ落としの特訓を始め、そして失敗していた。


「どうしても…下を見てしまうっス」

「もう一度だ」

「無理っスぅ…!」


地面に膝をついたまま顔を上げない壁山。高い所が怖い。俺には出来ない。そんな考えが今の壁山を支配していた。


『壁山君、諦めちゃダメっ!出来ないって言ってたら本当に何も出来ないまま!』

「出来ないって悩むより、どうしたら出来るか考えるんだ!」

「どうしたら…うぅーー、どうしたって出来るわけないっス!」

「「『はぁ…』」」


三人の努力も虚しく、ただ時間だけが過ぎていった。円堂、明、豪炎寺は、どうしたら不安定な足場からシュートが打てるのかを考え、鉄塔広場で特訓を開始した。そして、それを陰で知った壁山も自分で克服するため、まずベッドの上の高さを克服するようにした。


それぞれのイナズマ落としの完成を祈り、野生中との試合当日を迎えた。


生い茂る木々に流れ落ちる滝、響き渡る様々な動物たちの鳴き声。極めつけは校舎の中心から突き抜けた大木。野生中のついた雷門イレブンは呆気に取られていた。


「ここが野生中…?」

『なっなんか凄いね、ジャングルの中にある学校って』


ふ、と少しも離れていない場所から聞きなれない声が聞こえ、全員の視線がそちらに集中する。


「これが車コケ?初めて見たコケ」

「タイヤが4つもついてるしー」

「すげぇー中は機械で一杯だゴリ」


黒塗りの車の上ではしゃぐ者や、タイヤを見つめる者、さまざまな反応をする見慣れぬ少年たちを見て、雷門はなんなの、と少々引き気味につぶやいた。


『ねぇ、もしかして…この人達が…』

「はい。野生中のサッカー部です!」


春奈がメモ帳を片手に指を指した。染岡は飽きれ気味にこんなのに負けられるかよ、と漏らした。

キャーー!と上がる歓声。円堂は観客の多さに嬉しそうに反応した。


『守兄、殆ど野生中の応援だから』


溜息混じりに明に言われた円堂は一気にテンションを下げ、沈んでしまった。更に染岡が俺達弱小サッカーチームに応援なんか、と言えば、ふと視線をズラして、居るんだよ!と円堂が指差す方向に注目した。


「雷門中ー!」

「頑張れーーー!」

『かっ可愛い!』


宣言通り、雷門中の応援をしに来た壁山の弟と友人の3人組み。壁山は弟、サクは自慢げに兄である壁山を指さした。勿論壁山は顔面蒼白。トイレに行ってくると逃げ出そうとした壁山を染岡とマックス、半田、円堂に引き留められた。


「いよいよ!フットボールフロンティア、地区予選一回戦、雷門中学対野生中学の試合が始まります!」


実況、解説をする角間は興奮気味に話し始めた。まもなく試合が始まるなか、壁山はイナズマ落としの出番がないようにと祈る。そして、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。








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