それは、まるで砂糖菓子のような甘い雰囲気で、呼吸をするのも、瞬きするのも…まるで全てがいけない事のように感じられる程だった。
「んっ、…」
触れ合った瞬間、今から全てが壊れるかもしれない。そう思わせる程のか細い声を彼女はもらした。
「名前」
「た、くと…」
彼女の声が、俺の鼓膜を揺らした。その瞬間、胸が高鳴った。彼女とキスなんて、付き合ってから何度もした。しかし、いつもいつも俺自身がダメになりそうになるのだ。
今回も同じ。このままこの空気に流されずに理性を保てば、きっと俺自身が狂ってしまう。
俺は理性を制御するために彼女から少し距離をおく。彼女もそれを理解してのか、さっきの行為を恥ずかしく思ったのか定かではないが、とっさに目線を逸らしはじめた。
こんな些細な仕種も全て愛しく感じられるのは、きっと俺が可笑しいんだろうか。と自身で自問自答を繰り返すのだ。
先程から目線を逸らしていた彼女が、いきなりこちらに目線を向けてきた。
「ね、ねぇ…拓人」
どうした?なんて絶対に聞かない。どうせ彼女は口を割ることはないのだから。それに、こんな風に吃る彼女が凄く可愛くて、もっと見ていたいという馬鹿な考えが浮かび上がったからだ。
「私、今凄く幸せ。だって…大好きな人とこんなに一緒にいられるんだもの」
顔を赤くしていた名前が余計に赤くしながら、笑みをこぼす。いきなりこんな可愛い事を言い出してきた。彼女の経緯は分からないが、そんな事がどうでもいい
「俺も。だから…俺は絶対お前を離さないからな」
嬉しい。そう言いながら、また笑みをこぼす彼女を見て、俺の胸の奥でドクドクと脈打つ心臓がさらに早くなっていった。それとともに、なんとも言えないような変な感覚が俺の中で沸き上がる。
「たっ拓人?」
俺はとっさに彼女を強く抱きしめた。よく分からないが、無性にも彼女を抱きしめずにはいられないような気がしたからだ。
「名前…もう一回…していいか?」
「えぁ…ぁ…っ」
彼女のふっくらとした唇に触れる。もっと触れたい。もっと彼女が欲しい。独りよがりな考えがドンドン沸き上がっていく。
「う、ん…」
顔を赤く染めた彼女が笑みを浮かべて小さな声で返事をしてくれた。
「んっ、…」
まるで熟れんだ果実のように、名前は俺を惑わせる。彼女以外、誰もいなくなればいいのだ。っと勝手な考えが頭を過ぎた。
【触れて、そして】
俺のモノという所有印を君に
(離す事ができない)
(中毒的な)
(この感情。)
異世界人様、今回はリクエストありがとうございます!
リクエストを頂いてからだいぶ時間がかかってしまいすみませんでした…。拓人くんの甘夢との事でしたので頑張らせていただきました!あま、い…のか…?という感じですが、ご期待に添えていたら嬉しいです!
2012.2.1 夢桜