夢の中


その時、俺はどこかふわふわとしていて、夢心地のような感覚だった。目の前にいるのは、いつも強気で男勝りで、まるで男友達みたいに接してる隣の席の女の子。


「風丸、私…風丸に言わないといけない事があるの」


顔を赤らめながら言ういつもと違う彼女を見ると、一瞬、胸の奥がキュンとして、心底から可愛いと思えた。いつもと違う雰囲気で、凄く、女の子らしくって…まさか夢なのかもしれないと思うくらい、いつもと180度雰囲気が違う。

自分でも分かるくらい心臓が煩いくらい高鳴って、気持ち的に本当にどうにかなりそうだった。


「なんだよ、名字…言わないといけない事って…」


このあと、名字が黙りこみ、話が一向に進まなくなった。その所為か、少しばかり雰囲気が気まずい。


「あ、の…あのね…!」


さらに名字の顔が赤くなった。そして、ついに名字の口が開いた。その瞬間、突如身体に痛みが走る。


「い゛っ!!」


ガタッ、机と椅子のズレる音がした。なんだ?と思い目を開ける。先程と同じ自分の教室。そして違うのは周りの雰囲気と…


「名字…」

「風丸、寝過ぎ!もう授業始まるわよ」

「なんだ、あれ…夢、か?」

「ちょっと、聞いてる?」


先程とは打って変わって、いつもの強気で男勝りの彼女がそこにいた。どうやらさっきのは全てが夢だったみたいだ。少し残念だな。なんて思った。


「あぁ。すまん。聞いてる」

「怪しいな。まぁ、いいけど。で、どんな夢見てたんだよ」


ニタニタ笑いながら俺を見る名字。夢とは全く違うと思った。うん、いつもの名字だ。


「…誰もいない教室で、俺と名字が一緒にいた夢。いつもと少し雰囲気違うくてさ。なんか可愛かったな」

「なっ…なに言ってんだよ!その夢、いっ意味わかんないな」


からかい気味で言ってみれば、彼女はいきなり慌てだした。いつもなら笑っているところなのに。可笑しく思った俺は、チラッと彼女を見る。


「っ、」


そこには夢と同じように顔を赤らめている名字がいた。まさか、何かの間違いだよな。だって、さっきと全く違うんだから。


「…本当、意味わかんねぇよな」


夢の中で顔を赤らめる名字よりも、正直、今この場にいる彼女の方が凄く…その、可愛いと思えた。


「本当だ…ばか」


俺から顔自体を反らして視線を合わせない彼女を見ていたら、なんだかまた可笑しく思って、自然に笑みが零れた。

【夢の中】
あれが本当の彼女の姿なんだろう
(この日から)
(俺は彼女の事を、)
(少しずつ意識し始めた)


みお様、今回はリクエストありがとうございました!

男勝りな女の子と風丸君との事でしたので、こういう感じになりましたがいかがだったでしょうか?喜んでいただければ嬉しいです!

2011.12.8 夢桜



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