「姉ちゃん!」
俺は小さな頃から、表では姉さんの事を姉ちゃんと呼ぶ。俺がそう呼ぶと、姉さんは長く綺麗な髪を翻しながら振り向く。そして、優しい声で、どうしたの?って俺に問い掛ける。
綺麗で透き通る声は、いつも俺の鼓膜を心地好く震わすんだ。無性に嬉しくなって、自然と口角が上に上がる。
俺が姉ちゃんって姉さんのことを呼んで、姉さんが俺のことをツナって呼ぶ。そんななんでもなく、当たり前の事が幸せだと感じる反面、少しばかり切なく感じるのは、俺が姉さんの事を姉としてではなく、一人の異性として見ている結果だろう。
俺が、姉さんに好きだと言えば、姉さんは嬉しそうに笑う。笑う姉さんを見ると、こっちまで嬉しくなるんだ。一般的に、これはシスコンだってなるんだろ?だけど違うよ。シスコンだなんて言葉で収まる程俺の愛は小さくねぇ。だって俺は姉さんが好きで、その上…愛してんだから。
「仕事は?」
「もう終わったよ。もう、帰ろっか」
ただ同じ家に帰宅する。その道のりが本当に心地好く感じるんだ。たわいもない話で姉さんは笑ったり、怒ったり、困ったりと色んな表情を見せる。
俺だけが見れる表情なんて、とっくの昔に無くなってしまったと思う。それは、少しだけ寂しくて、悔しいけど、昔よりも表情が増えたんだからこれは喜ぶべきなんだろう。
小さい頃から離れ離れになって暮らしていた。今となればその理由は全て俺の為だってのは分かった。だからだろうか…昔が無力だった分、今は全力で姉さんを守りたいって思うんだ。
姉さんは俺にとって、今も昔も変わらない、唯一無二の大切な人で、愛しい存在だ。他の男や女に渡したくない程に、俺は姉さんに依存している。
横目で姉さんを見れば、姉さんの整った顔が近くにある。それだけで、ふいにドキッとさせられる。だが、それは一瞬の話だ。数分見れば、姉さんは眠そうに目を擦ったり、欠伸をしたりと疲れの色を見せていた。
「姉ちゃん、最近大変?」
「えっ、なんで?」
少し驚いたのか、姉さんはキョトンとした表情を見せた。姉さんのこの表情は何度見ても可愛いなんて事を頭の隅で考える。
「疲れてるみたいだから」
「そうかな?大丈夫だよ」
ニコニコといつもの笑顔を見せる。だけど、逆にそれすらも不安要素に早変わりする。
「あんまり無理しないでよ?」
「…うん。ありがとうね、ツナ」
そう続けて、姉さんは俺の頭にぽん、と手を置き優しく撫でてくれた。子ども扱いされてるみたいで少し嫌だけど、姉さんに触れられるのは好き。だから…まぁ、我慢しようと思うんだ
だって今は俺と姉さんだけの時間だから。帰宅すれば、必ず邪魔が入る。だから…ほんの数分だけでもいい。この時間を大切にしたいんだ。
そうこうしてる間に、いつの間にか家の目の前。もうすぐこの時間も終わりだ。なんだか胸がざわつく。
「姉ちゃん」
家に入ろうとする姉さんを引き止める。すると、どうしたの?っとまたあの綺麗で透き通るような声が、再び俺の鼓膜を揺らすんだ。
「明日も、一緒に帰ろうね」
姉さんは目をパチパチとしながら驚く。そして、次の瞬間、いきなり面白い物を見たかのように笑い出した。
「当たり前だよ!」
目の前には満面の笑みの姉さん。この笑顔を見たらいつも思うんだ。
俺はやっぱり、姉さん好きで好きで、たまらないようだ。
【恋心再確認】
この幸せがずっと続きますように
(好きだからこそ)
(姉さんの幸せは)
(俺が必ず守るんだ…!)
マカデミアンナッツ様、今回はリクエストありがとうございました。
遅くなりすみませんでした!
ツナミズで切ない感じとの事でしたがあまり切ないかんじゃないかもしれませんね。すみません…。しかも名前変換がないという…。こんな酷いものですがどうぞお受けとりください。
2011.11.17 夢桜