帰り道のふとした瞬間にさりげなく手を握られる。私はその動作が好き。
だって、風丸先輩の掌は温かくて、しっとりしてる。その反対に、私の掌は冷え症のせいで冷たくて、女のくせにカサカサしている。
そのせいなのかな?余計に先輩の手は私にぴったりだからか、とても心地好い。
その上、先輩の手は私の手よりも大きい。だから余計に私を安心させるんだ。ただの部活の後輩である私は、先輩に好きと告白するのに大分と時間がかかった。けど、秋先輩や夏美先輩、冬花先輩に春奈のおかげで、風丸先輩と今の関係を気付く事が出来た。本当にサッカー部のマネージャーのみんなには感謝しないとな。
「名前、どうかしたのか?」
ふいに先輩が話しかけてきた。みんなの事を考えていたていた私ははっとして、風丸先輩の方に顔を向けた。
「え、あっすみません、先輩」
「いや、別に謝らなくてもいいさ。」
笑みを浮かべる先輩を見ると、胸がきゅんとして、顔に熱が集まるのがすぐに分かった。
「せっ先輩、あの…っ」
「ん?」
「今日は…寒いですね」
先輩は「そうだな」なんて言いながら、私の手をギュッと握ってくれた。今日みたいに風が冷たくて、気温も低い日は、自然と繋がれた掌が温かくて、幸せな気分になるんだ。お互いの手がお互いのためだけに作られ存在しているような錯覚に、眩暈すらする。
その気持ちが何であるか、私はたぶん知っていた。
「名前の手は冷たいな」
「私、冷え症なんです。その点、先輩の手は温かいです。」
「そうか?なら、俺がずっと握っててやるよ」
そうしたら、寒くないだろ?
ふいに、また胸がきゅんとする。本当に先輩は心臓に悪い。そう思った。だけど、こんな感覚がとても心地好く感じられた。
先輩にだったら、ずっとずっと握ってもらっていたい。それはもう一日中だって構わない程にだ。そう思って握る力を強くすれば、先輩は小さく笑って手を握り直した。互いの指と指が絡まる。そして、二人の体温が交ざりあって一緒になる。
手と手を握り、繋ぐということ。それは私たちがずっと一緒にいられる約束のように思えて、なんだかくすぐったくなった。
「風丸先輩」
涙が滲みそうな程に温かなこの気持ちが何であるか、私は確かに知っているのだ。
「大好きです」
「あぁ、俺もだよ」
【この、気持ちは】
先輩が好きだという確かな証拠
(はにかみながら笑う先輩に)
(私はもっと、もっと)
(夢中になっていくんだ)
香椎なつ様、今回はリクエストありがとうございます!
遅くなりすみませんでした。年下設定はあまり書くことがなかったので、楽しく書かせていただきました!喜んで頂ければ嬉しいです!
2011.11.14 夢桜