たまには女の子同士で

※多少百合的表情有り



「こっちの方が美味いぞ!食ってみろよ名前!」

「そんな、こっちの方が美味しいよ、名前!」

「…あの…えっ…とぉ…」

「うふふふふ」


いったい、どうしてこうなったのだろう。名前はふとそう思った。時間は数時間前に遡る。


珍しく早めに部活が終わり、午後からフリーになったその日。名前はどこかそわそわした様子だった。


「拓人お兄ちゃん!早く帰ろう!」

「あぁ、わかってるさ。」


そして、同時に拓人も少し急いでいる様子だった。そんな様子を周りは察していた


「名前ちゃん、朝から嬉しそう」

「へっ?」


そんな中、カシャッとカメラのシャッター音が名前の耳に入った。振り返れば、シャッターを切る茜。そして隣に水鳥の姿があった。


「だよな。名前、神童とどこか行くのか?」

「あの…実は、今日お兄ちゃんと最近出来たケーキ屋さんに行くんです!」


名前は水鳥から問い掛けられた質問に満面の笑みで答えていた。名前のその表情だけで、余程嬉しいのだろうと容易に想像できた。


「ねぇ、名前そのお店って、この前商店街の近くに出来たやつよね!?」

「うん!お兄ちゃんが連れて行ってくれるの!」

「へぇ、よかったじゃないか」

「はいっ!」


フィフスセクターの件や、ホーリーロードの件があり、兄妹のふれあいが少ないといった理由で、拓人の提案で名前と俗にいう兄妹で放課後デートをしよう。となったらしい。


「名前、待たせたな。そろそろ行くか」

「うん!」

「神童、ちょっといいか」


二人が部室を出ようとした瞬間だった。鬼道が拓人を呼び止めた。拓人は、名前に軽く謝り、鬼道の下へと向かう。そして、なんですか?っと話を聞きに言ってしまった。

そして、待つこと数分。拓人は少し残念というか、今にも泣きそうな顔をしながら近づいてきた


「お兄ちゃん?」

「悪い、名前…今日は行けそうにもないんだ…本当にゴメンな…」

「そんな、お兄ちゃんの所為じゃないよ!仕方ないよキャプテンだもん。また一緒に行こう!」

「…あぁ…ありがとうな、名前」

名前は無理矢理笑みを浮かべ、そして、じゃあね、っと部室を出てしまった。その様子を、ある三人が見逃さずに見ていた。


「名前、そんなに行きたいなら一緒に行こうぜ」

「行こう、名前ちゃん」

「たまには女の子同士で行こうよ、名前」

「あ、葵…それに水鳥先輩に茜先輩?えっ、えっ?」


マネージャー三人組は有無も何も言わせず、ただ名前の腕を掴み、ぐいぐいと引きずりながら、最近出来たというケーキ屋へと連れて行ってしまった。

そして、ケーキ屋に着き、文頭に戻る。どちらのケーキが名前好みなのかの討論。そして、撮影会が始まったのだ。


「名前は、ショートケーキが好きでしょ!?」

「いーや、チョコレートだろ!」

「あっ、あの…葵…水鳥先輩…」


落ち着いて下さい。そう言おうとしても、二人の剣幕が強すぎて、何も言えない名前だった。茜はそんな困った表情の名前を凄い勢いで写真のフィルムに納めていた


「名前、ほらっ、食べてっ!あーん」

「こら、葵ずりーぞ!名前こっちもあーんしてみろ!ほらっ」


これはいったい、なんの仕打ちなのだろうか。と、名前は思った。幸い、この新しい店は個室的な雰囲気なので周りに見られる事はない。だが…恥ずかしいものは恥ずかしい。


「あの…気持ちは嬉しいんですけど…えっ、と…私、みんなと一緒に食べたい、です。ダメ…ですかね?」


あまりにも不安要素が多かった為、名前は意を決して、言葉を発した。その瞬間だ。葵と水鳥はピタッと固まり、茜はさらにシャッターを切るスピードを速めた


「名前がそう、言うなら」

「一緒に食べます、か」

「はい、名前ちゃん、あーん、して?一緒に食べよ。」


葵と水鳥が、互いに顔を見合わせ、妥協しようしようとしていたとき。その瞬間を狙ってか、茜がミルフィーユを名前の口元に運んでいた。


「えっあっ、はい。頂きます」


名前は先程の躊躇もなく普通に茜からミルフィーユを一口貰い、ぱくっと食べる。ほど好い甘さが口いっぱいに広がり、名前は幸せそうな笑みを見せる。もちろん茜がその瞬間すらも見逃さず、片手で器用に写真を撮っていた。


「「あっ…」」

「茜先輩、美味しいです」

「よかったー」


二人の怒りの矛先が茜に向く。狡い!先を越すな!また口論が始まると思われたときだ。


「あっ…おい名前、クリームついてるぜ?」

「えっ…ひゃっ!」


次に行動したのは水鳥だ。先程ついたのであろう口元近くについたクリームを水鳥はペロッと舐める


「えっ、あっ…ああああり、がと、う…ござい、ます」


名前は舐められた近くを手で抑える。おそらく、あまりこういったものに慣れていない名前は非常に慌てていた。そして顔を真っ赤にさせ見せるその姿はなんとも可愛らしくみえた。


「水鳥さん、狡いです!」

「早い者勝ちだろ?」


勝ち誇ったように笑う水鳥を見て、葵は頬を膨らましながら怒りの表情を見せた。葵は、それなら!っと名前を自分の方へと向かせ、ショートケーキの上な乗っていたイチゴの端を口に含み、反対側を名前の口にくっつける。


「ん、っぐ…」


口を閉じようともイチゴが邪魔で閉じることができない。葵はそのまま自分の舌でイチゴを名前の口の中に押し込んだ。

あと1ミリだけ前へ行けばキス出来そうな微妙な距離。そこで名前は葵から解放される。名前に残ったのは甘酸っぱいイチゴの味と、恥ずかしさからくる顔の熱だった


「あっ葵、なっなにして…」

「イチゴ、美味しかったでしょ?」

「うん。美味しかった。じゃなくって…!」


こんな過激な事に全くの初な名前は反論するかのような目を葵に向けた。


「最近の仲の良い子たちはこんなの普通にするよ」

「えっ…そう、なの?」


そうそう!なんて悪びれた感じも一切無しに葵は笑顔で答えた。名前も名前で今は一人暮らしをして普通に過ごしているものの、実際はお金持ちのお嬢様。こういったのには自然に疎くなる。


「そっ、か…普通の女の子同士でもこんな恥ずかしい事するんだね」

「まっ、仲が良くなかったらこんな事も出来ねぇけどな」


名前は、へぇ…っとどこか納得した声を漏らした。実際は仲の良い女の子同士でもここまでするなんて事はなかったりするのに。騙され易いとはまさにこの事だろう。


「ねぇ、名前は、こういうの嫌?」

「えっ…」


いきなり何を聞くのだろうと思った。名前はきょとんとした後、満面の笑みを彼女たちに向ける。


「こういった感じの事は恥ずかしいから、少しは遠慮したい、けど…みんなで仲良く食べるのは楽しいよ!」


だから、また一緒に行きましょうね!


名前の言葉に全員が面をくらったような顔になった。そして次の瞬間だ。三人全員が顔を赤らめていたのは、マネージャー達同士の秘密。


【たまには女の子同士で】
恋のバトルでもしましょうか
(後日、あの数々の写真を)
(男たちの見せびらかす)
(マネージャー達がいたのだった)

END



キラリ様、リクエストありがとうございました!

マネージャー組本当可愛いですよね!多少強引な感じになってしまいましたが、マネージャー達の取り合いになっていましたでしょうか?ご期待添えていれば嬉しいです!

2012.2.11 夢桜

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