稲妻11 | ナノ



雪がひらひらと舞落ちていた。ゆっくり、ゆっくり。スローモーションのようにも見えた。白い息を吐きながらの部活の帰り道。

「寒いね」

「雪、降ってるからな」


さも当たり前のように彼は答えた。手が触れるか触れないかの距離。もどかしい感覚。なんだか、変な感じだ。そんな気持ちをどうにか抑える為に、ずっと空を見つめる。舞落ちる雪がとても綺麗だ。


「私、雪って好きだな」

「そうなのか?」

「うん。綺麗だから、好き。」


そう言えば彼はふぅん。とあまり興味がなさそうに答えた。


「ねぇ、風丸」

「なんだ?」


どうして雪はこんなに綺麗なんだろうね


そう彼に聞けば不思議そうに私を見た。そんなに変な事を聞いただろうかと思った。だけど、私は至って真剣に聞いているつもりだ。彼は少し悩んでからこう答えた。


「なんでか聞かれても俺にはよく分からないけどさ…多分…」


お前が綺麗って思うから綺麗なんじゃない?


彼は微笑みながら答えた。胸の奥が暖かくなって、キュンとなった。雪よりも何倍にも彼が、綺麗だと思った。


「そっか…じゃあ、風丸も綺麗だね」

「はっ?なんだよそれ」


彼は不満そうな顔をする。当たり前か…男が綺麗なんて言われて嬉しいわけがない。(あっ、アフロディ君は別か…)


「私がそう思ったから。綺麗だと思ったら綺麗なんでしょ?」


それとこれとは話が違うだろ!彼はそう言って怒ったが、私にとっては同じ事だ。


「俺なんかより、お前の方が何倍も…綺麗だよ。それな、かっ可愛いよ」


そっぽ向きながら照れる彼を見て勝手に笑みが零れた。ありがとう。そう言えば彼は照れながら返事をする。それがなんだかおかしくて、私はクスクスと笑ってしまった。そんな時だ、寒かった掌が熱をもった


「えっ…」

「…」


まさか手を繋がれるなんて思わなかった。別に私と彼は恋人同士というわけでもない。ただの腐れ縁だ。なのに…。なんだか恥ずかしくて、勝手に顔が熱くなった。彼を見れば、彼の顔も赤かった。だけどそれよりも、してやった!という顔の方が強いような気がした。


「…風丸」

「なんだよ」

「なんかさ、暖かいね」

「そう、だな」


彼はギュッと私の手を強く握った。なんだか凄く暖かい気持ちになった。

「私、雪よりも風丸の方が好きみたい」

「そりゃ、どうも。」


雪がひらひらと空から降っている。ゆっくりゆっくり。とても綺麗に…。


「なぁ、明」

「ん?」

「また、さ…一緒に帰ろな」

「うん、約束ね」


繋がれた掌に雪が落ち、そして溶けた。


【雪降る帰り道】
綺麗だけど、消えてしまう雪より、風丸の方が、好き。
(繋がれた掌が放れた。)
(彼が、俺も好きだと言った。)
(そして私の額にキスをして、)
(彼は走って帰路にたった。)


END