雪がひらひらと舞落ちていた。ゆっくり、ゆっくり。スローモーションのようにも見えた。白い息を吐きながらの部活の帰り道。 「寒いね」 「雪、降ってるからな」 さも当たり前のように彼は答えた。手が触れるか触れないかの距離。もどかしい感覚。なんだか、変な感じだ。そんな気持ちをどうにか抑える為に、ずっと空を見つめる。舞落ちる雪がとても綺麗だ。 「私、雪って好きだな」 「そうなのか?」 「うん。綺麗だから、好き。」 そう言えば彼はふぅん。とあまり興味がなさそうに答えた。 「ねぇ、風丸」 「なんだ?」 どうして雪はこんなに綺麗なんだろうね そう彼に聞けば不思議そうに私を見た。そんなに変な事を聞いただろうかと思った。だけど、私は至って真剣に聞いているつもりだ。彼は少し悩んでからこう答えた。 「なんでか聞かれても俺にはよく分からないけどさ…多分…」 お前が綺麗って思うから綺麗なんじゃない? 彼は微笑みながら答えた。胸の奥が暖かくなって、キュンとなった。雪よりも何倍にも彼が、綺麗だと思った。 「そっか…じゃあ、風丸も綺麗だね」 「はっ?なんだよそれ」 彼は不満そうな顔をする。当たり前か…男が綺麗なんて言われて嬉しいわけがない。(あっ、アフロディ君は別か…) 「私がそう思ったから。綺麗だと思ったら綺麗なんでしょ?」 それとこれとは話が違うだろ!彼はそう言って怒ったが、私にとっては同じ事だ。 「俺なんかより、お前の方が何倍も…綺麗だよ。それな、かっ可愛いよ」 そっぽ向きながら照れる彼を見て勝手に笑みが零れた。ありがとう。そう言えば彼は照れながら返事をする。それがなんだかおかしくて、私はクスクスと笑ってしまった。そんな時だ、寒かった掌が熱をもった 「えっ…」 「…」 まさか手を繋がれるなんて思わなかった。別に私と彼は恋人同士というわけでもない。ただの腐れ縁だ。なのに…。なんだか恥ずかしくて、勝手に顔が熱くなった。彼を見れば、彼の顔も赤かった。だけどそれよりも、してやった!という顔の方が強いような気がした。 「…風丸」 「なんだよ」 「なんかさ、暖かいね」 「そう、だな」 彼はギュッと私の手を強く握った。なんだか凄く暖かい気持ちになった。 「私、雪よりも風丸の方が好きみたい」 「そりゃ、どうも。」 雪がひらひらと空から降っている。ゆっくりゆっくり。とても綺麗に…。 「なぁ、明」 「ん?」 「また、さ…一緒に帰ろな」 「うん、約束ね」 繋がれた掌に雪が落ち、そして溶けた。 【雪降る帰り道】 綺麗だけど、消えてしまう雪より、風丸の方が、好き。 (繋がれた掌が放れた。) (彼が、俺も好きだと言った。) (そして私の額にキスをして、) (彼は走って帰路にたった。) END |