彼とのキスは、宙に浮くようにふわふわして、胸がドキドキする 「……明、」 ほんの、一瞬。掠めるようにして触れた唇が遠退く。そして、そのまま低い声で彼に呼ばれる。 まるで、砂糖のように甘い甘い囁きで…。 彼に間近で見つめられるだけで、どんどん鼓動が高鳴る。部室のロッカーの前で二人してただ佇んでいた。窓の外は夕焼けから薄暗い夜へ変わりかけている。互いの吐息が感じられるほどの距離で彼と見つめ合う。 『か、ぜ…まる…』 死にそうなくらいの恥ずかしさと、なんとも言えないもどかしさで、私はとうとう声をあげてしまった。なにがなんだか、さっぱり訳がわからなくなって、古びれた部室の中はひんやりと冷たいのに火照っていく頬はとても熱い。 私が彼の名前を呼ぶと目の前の綺麗な顔が、ふわりとやわらかく微笑んだ。 『、っ…』 ずるい、…と私は思った。 風丸はいつもそうだ。ふと、予想もしない状況で、行動するのはいつだって彼。それなのに、行動してきた彼自信は、何も言わずに、じっと私を見つめて、私の反応を伺い待つのだ。 まるで、応えを求めるように。 『か、風丸は、』 「ん?」 『狡いし、卑怯だよ』 「……そうか?」 『そうよ!だ、だって、本当は…分かってる、くせに…』 彼は全部わかっているはずだ。さっきのじゃ、まだまだ全然足りないって事くらい。 いきなり不意打ちをくらったとしても、白昼夢のような一瞬のキスだけでは正直足りない。もっと実感のあるものじゃないと、嫌だ、って事くらい、風丸本人だって、わかっているはずなのに。 「あぁ…わかっている」 『なっ、なら!』 「だけど、俺は臆病者だから…。言葉にしてくれないと、たまに凄く不安になるんだ…」 彼は困ったような苦笑をして促すように手を握って指先を絡みつけてきた。私は凄く頭を抱えたくなった。だけど、生憎私の両手は彼によってしっかりと塞がれているためそんな事は出来なかった。彼に寂しそうな顔をして、そんな事言われてしまったら。私にはもう、何も文句なんて言えなくなる。 『風丸…あのね、私、すっごい恥ずかしいんだよ?』 「あぁ知ってる。だけどさ…聞きたいんだよ…直接お前の口から、さ」 『っ、うぅ……』 こういう時は、自分が気が済まないと絶対に退かない。それが風丸だと、明は理解していた。 仕方ない、と半ばヤケになりながら、そっと彼の耳元に囁きを落とす。それから、私の指と彼の指をゆっくりと絡み付かせる。 声は震えて、情けないくらい小さい。だけど、風丸にはちゃんと聞き届いたようで、本当に嬉しそうな笑顔を間近で見せつけられた。 本当厄介だなぁ、なんて思いながらもその様子を見て喜んでしまう自分はもっと厄介かもしれない、と明は悔しく思った。 『……ん』 風丸とのキスは、本当にふわふわする。胸が有り得ないくらいにドキドキする。薄くて形良い唇は、意外と熱を持っていてやわらかい。顔を少し傾けて、ぴったりと合わせた唇は暫くしてから離れて、また重なる。それから、唇を唇で食むようにして吸いつく。 『んっぁ、』 思わずこぼれた自分の声に明は羞恥で死にそうな気分になった。部室でキスしてるだけでも恥ずかしい。明は泣きたくなりながら風丸の手をぎゅうと握る。すると今度は風丸から握り返されて、また一層胸を高鳴らせる。 零れた熱い吐息が互いの唇を撫でて、次第に湿り気を帯びていく。ちゅ、と可愛らしいリップ音を聞いて、恥ずかしさに逃げ出したくなる。 だけど…なんか…不思議…死にそうなくらい恥ずかしいのに… …離れたくないなんて。 「……明、」 暖かいキスを終えて。僅かに離れた薄い唇が呼び名を紡ぐ。綺麗な顔を綻ばせながら、そっと好きだよ、耳元に囁いた。 ただ重ねるだけの口づけ。短く唇を重ね合わせて、何度も交わす優しいキス。それでも唇に痺れたような疼きを持て余す明には、 私も、だよ… と小さく声を出すだけで精一杯だった。くすりと笑った風丸が、これで最後にするからと顔を傾かせて近づいてくる。嫌だと拒もうにも、ロッカーに背中を凭れた状態でしかも両手諸共塞がれていちゃ逃げられない。 こういう時は風丸優勢で、いつもは頼もしいばかりの相手を憎たらしいと思う。 こういうのが、惚れた弱みって言うのかな…?握り合わせた手のひらの温もりは離しがたく、心地が良い。柔らかな感触が唇へと触れ合った瞬間、明は何ともいえない熱のこもった吐息を吐いた。 【幸せすぎて】 可笑しくなりそう… (あぁ、溜息がでちゃうのも…) (全部全部、貴方のせいよ…) End ―――― 初のイナイレ夢がこれってなんだ… ただたんに、ちゅっちゅっしてるだけというwww とりあえず… 風丸君大好きです!\(^0^)/ |