抱き締められ、触れられた部分。いや身体の全てが…熱を持っていた。それは全て彼の所為で… 「ねぇ、明」 「き、や…」 「ヒロトって、昨日教えたよね?」 息苦しいくらい強く抱き寄せられて、圧迫される。ここまでして逃げたがらないなんて、私も末期だ。だって、もっともっとこうされていたいと私自身願っている。 「最初から知ってたんだ」 「最初からって?」 「明がフラれた所から全部。」 「知ってた…の?」 「この教室のすぐ下ってさ。明がアイツと話した場所だよ」 ふと、外を見てみる。そこには私があの日フラれた場所があった。 「ほん、とだ…」 「アイツがいなくなってすぐには泣かなかった君を見て、なんだかいてもたってもいられなくなった。だから君を追いかけたんだ」 なんだか気が抜けたようだった。まさか全部知っていただなんて思わなかったから 「それで、君を見つけたら、ずっと泣いてて…なんか、変な気持ちになったんだ。泣かないで欲しいって思った。」 だから知らないふりしてゲーム仕掛けたんだ。彼はそう言った。いったい何のために?そう聞けば 「少しでも俺を印象付けたかったから」 「え?」 「頭の中俺でいっぱいになっただろ?」 「…うん」 つまり私は策略にまんまとはまってしまったわけである。なんでか悔しかったけどそれ以上に頭がパンクしそうなくらい彼を感じて…抱き締めれてる体温が同じになる 「明」 「なに?」 「そろそろ本気になった?」 イタズラした子みたいな無邪気な笑顔。だけど、どこか彼らしい表情に、私の胸をまた高鳴らせる。もう、本気だけど悔しいから絶対絶対教えない 「ねぇ、俺と付き合って?」 「ゲームじゃ、なかった…の?」 「最初から本気だよ。」 彼は私の頬を撫でながら、真剣な目でそう言った。そして、優しく微笑む。 「俺、前から明の事、好きだったんだと思う」 「えっ、なっ…」 「多分、アイツが明を好きになるずっと前から」 嘘…だ。なんで基山君が私なんかを好きになるの?これといった接点もない。なんの取り柄もない、私なんかを… 「嘘だと思ってるでしょ?」 「…うん」 基山君は苦笑いを浮かべた。そりゃそうだよねって言いながら。 「明って1年の時よくサッカー部の練習見てたでしょ?」 「うん。あの時は秋の付き添いで。暇だったし。あとサッカー楽しそうだった、から」 サッカーのルールもリフティングもシュートも何も出来ないけど、見るのは好きだった。だから、彼と付き合った時も、サッカーの練習を見れて、大好きな彼を待っていれたから幸せだった。 「初めて明見たとき、楽しそうにサッカー見る子だなって思った。それからさ、よく明の事探すようになった。見た日はなんか嬉しかったし、見ない日はすっごいテンション下がった。」 「わっ私、気づかなかった」 「当たり前だよ、じっと見てたわけじゃないんだから。」 私がサッカー部の練習を見に行ったのは入学したてで、春先の事。そんな前から、彼は私の事を見ていてくれたんだと思うと、なんだか恥ずかしくなってきた。 「それから、2年になって少ししてから、明とアイツが付き合ったのを知った。その時はかなり参ったよ。諦めようかと思ったけど、無理だった。諦めようと思う度、どんどん好きになるのが分かった。」 「き、やま君…」 「アイツは馬鹿だ。俺が欲しかった人を手に入れたのに、手放すなんて。だから奪うって決めた。君を…。アイツの事を全て忘れさせて、俺だけを見て貰うんだって」 基山君は再び私をぎゅっと抱きしめた。自惚れかもしれないけど、まるで、もう誰にも渡さない。そんな気持ちを現したみたいだった。なんだか気恥ずかしくなって、私は彼の胸に顔を埋める。 「明、そろそろ俺に奪われてよ」 「ば、か…」 【Predatore】 もうとっくに奪われてるよ (交わした口付けは) (今までよりずっと甘かった) END ―――― Predatore イタリア語で略奪者 |