稲妻11 | ナノ


どうしていいかわからなくなった。だってフラれてたった三日。それなのに私は基山ヒロトという存在に惹かれている。

彼とは色々あった。元カレの事だって彼のお陰できっぱりキリをつけれた。その所為か、彼は私の頭の中で最近ずっと居座り続けてるいるのだ。

私はこんなに移り変わり激しい女だったろうか…なんだか自己嫌悪。本当最悪である。こんな事友達に言える筈もない。私の中で出るはずない答えが頭を唸らせた。


「あっ!望月先輩お久しぶりです」

「春奈ちゃん」


私がずっと唸っている時だ。サッカー部のマネージャーで秋の後輩である音無春奈ちゃんが話しかけてきた。


「久しぶりだね」

「はいっ!最近望月先輩が来てくれないんで、私寂しかったですよ」

「もぉ、大袈裟だよ」


廊下を歩きながら、少したわいもない話をする。少しだけ基山君の事を忘れられた。だけど忘れられたのはたった数分だった


「あっ、基山先輩だ」

「えっ…」


どうしようもなく焦った。なぜこんな時に現れるんだろう。昨日の事が脳裏に浮かべば顔の熱が上昇する。


「望月先輩?」


私の様子を不思議に思ったのか春奈ちゃんは疑問符を浮かべながら私に問い掛ける


「あっ、ゴメン。ぼーっとしちゃって」


春奈ちゃんは顔が赤くなった私に、熱ですか?と問い掛ける。違うよ、大丈夫。そう言えば、春奈ちゃんはよかったです。と言って笑った。

ふと、もう一度彼を見る。今日も涼野君と南雲君と一緒にいる。何を話しているかなんて分からないが、とても楽しそうな様子だ。


「基山くーん」


見ず知らずの子が基山君に話し掛ける。じっと様子を見ていた私に春奈ちゃんが基山先輩って本当人気ですよね。っと言ってきた。


「本当だね。サッカー部員は基本格好良いからモテるよね」


なんだか、住んでいる世界が違うようだった。考えてみたら私は彼の事を何も知らない。サッカー部の練習を見ていたと言っても一部だし、マネージャーでもないからそこまで繋がりがあるわけでもない。彼を取り巻く環境と私の取り巻く環境は全く違う。


「なんで私なんだろう。可愛い子なら沢山いるのに」


実際に彼の周りには学校の生徒会長である雷門夏美さん、秋や春奈ちゃん。あと、付き合っているという噂の幼なじみである八神玲名ちゃん。彼の周りには美人さんや可愛い子が沢山いる。疑問は膨らむばかりだ。

もし彼が遊んでるだけなら?そう仮定をすると、答は簡単だ。ならば悩むのも筋違いじゃないか?私はただの遊び相手で必要ないんだ。

放課後にいつもの空き教室に行くと窓際に座りながら外を見ている基山君がいた


「昨日、逃げたのに…来てくれたんだ」

「うん…あの、ごめん」

「答えは?」

「基山、君…」


名前で呼んでよ。彼はなんだか納得しない顔をしながらそう言った。だがそれを聞き入れる事は今は出来ない。


「私としてよ」

「なにを?」

「セックス」

「…は?」


彼は気の抜けた声を出す。こいつは何を言ってるんだ?そう思われても仕方ないような表情だ


「それが終わったら…もう、私に近づかないで」

「どうゆう意味?」


いつになく真剣な彼の顔が私の心臓をキュッと締め付ける。


「ゲームは終わりだよ。遊びなんていらない」

「明?」

「もう、終わらせてよ」

「待てよ、なにが…?」

「さっ最初から基山君は暇潰しのつもりだったんでしょ!」


必死だった。ただ必死にだんだんと縮められたこの距離が離れるように。


「俺は、最初から本気だよ」

「嘘つき」

「どっちが」

「彼のことはっ…」

「違う」

「嘘なんてそれ以外についてない」


私を見る彼の視線から逃げたくて私はただ目を背けるしかできずにただ声を張る事しかできなかった


「嘘なんかじゃ…!」

「じゃあさ、それ俺の目見て言って?」


一瞬にして空気が止まった気がした。彼に抱き締められて唇を重ねて…それから

彼が今までに無いくらい…とても悲しい顔をしてた。


「ねぇ、明」

「な、に」

「強がらずにさ本当のこと言ってよ」

「別に…強がってなんか…」


声が震える。強がってなんかいない。自分にそう言い聞かせる。


「明」

「なっなに…」


動揺しすぎて、身体が後ずさる。だがそれは今だ抱きしめられている所為で意味はない。逃げる事が、できない。そして彼は囁いた。低く、あの大人びた声で…


【捕らえられた心】
気持ち揺れてるって、認めなよ
(そんなのとっくに気づいてる)
(だから…私の心を返してよ)


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