むくりと布団から顔を出し、一番最初に視界に入ったのは綺麗な青空だった。けどそれは空の色じゃなくて、大好きな、彼の髪の毛だ。 彼は寝る時、必ず髪をほどく。結んだままうっかり寝てしまうと泣き叫ぶように後悔するのだ。まぁ、髪の短い私にはわからない話だけど…。でも、彼の髪は私なんかより比べものにならないくらい綺麗だから、仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。 彼の髪を羨ましいと言う人はたくさん居る。勿論、私もその一人だ。女の私から見ても羨ましいくらいなのだ 彼は髪だけでなく容姿もカッコイイし凄く綺麗だ。そういえば、よく女に間違われることを嫌がってたなぁ… 私からすれば、風丸は立派な男だよ、そう言ったら照れ臭そうに笑ってありがとうと呟いた。 「…起きない、かな」 なんだか無性に空色の、この綺麗な髪に触れたくなってしまった。静かに寝息を立て寝ているから大丈夫だろう。 私は、彼の甘髪に触れる。さらさらしてて、それでいてどことなくふわふわしてる。触れるたびに反応する私と同じくらいの身体がなんだか可愛らしくも感じる。丁寧に前髪をどけ、額に一つ、キスを落とす。 こんなこと、彼が寝ている間でなければ出来ない。もう一度しようとしたら、ぱしんと腕を見事に捕まれた。 「寝込みを襲うつもりだったのか、明」 「か、風丸っ」 私より細いかもしれない華奢な腕は結構力強くて、振りほどく事ができない程力強かった。 「ち、違うの!風丸、誤解だよ!」 「何が?」 「風丸の髪、凄く綺麗だったから…」 「…は?」 彼が気の抜けたような声を出す。その瞬間、一瞬だけ己の腕を掴んでいる腕の力が緩んだ。呆気にとられている彼の腕からすり抜ける。 私が彼から逃げられたと安堵する反面、彼は魂が抜けたように動こうとしなかった。顔の目の前で手を上下に振ってやると抜けていた魂が戻ったみたいに、は、と彼が目を見開く。 「あっ、あの…風丸、だいじょ、っ!」 言い終わる前に感じたぬくもり。それは、ベッドの暖かさなんか比じゃないくらいだ。 私、風丸に抱きしめられてる。 「か、風丸」 「ったく…バカ…あんま可愛いこと言うなよ」 心臓が止まるっての。 悪態を付けながら、さっきよりもっと強く抱きしめられた。勿論、私が痛くないように凄く優しく。本当、彼は優しい人だと思う。 私は、この温もりが大好きだ。なにより心地、いい。 お互い離れ、私はベッドに潜って、頬を染めながら髪を結ぶ彼の腕を今度は私が掴んで、おもいっきり引く。案の定、彼は私の方に倒れる形になった。 「ふふっ」 意地悪っぽく、歯を見せ笑うと、彼がむ、と眉をひそめた。 「っ、たく…あのな、」 リップ音を鳴らし、彼の細い腰に抱きつく。 「ずっと一緒に居てね、風丸…」 彼は驚いた顔をした後…あぁ、とやわらかく笑った。 【貴方の傍で】 私は一緒に生きていく (さよならなんて聞きたくないから!) (馬鹿、そんな事言えるかよ) (彼は私を抱きしめた) END |