稲妻11 | ナノ



私はこの世に生きている価値なんてないんだと思う。無駄に生きるくらいなら、私は自由になりたいの。

物心つく前に、私の親は二人とも死んでしまった。頼れる人も守ってくれる人も私にはいない…ずっと、一人ぼっちで生きてきた。神様はどうして私をこんなにも不幸にしたいのだろうか。まるで、私だけが周りににおいてけぼりで、時間が止まってしまっているみたいだった。

屋上へと続く階段をゆっくり上がっていく。やけにいつもより静かで、まるでこの世に私以外の存在がいないような感覚だった。普通なら寂しいとか、心細く感じるところだけど、今の私にとっては、逆に心地がよかった。

壊れているフェンスを越える。下から勢いよく風が吹いていた。さぁ、もうすぐこの世からさよなら出来る…。これで、私だけの世界へと逝ける。

そう思いながら、一歩大きく踏み出そうとした瞬間…ガチャと屋上の扉が開かれる音がした。いったい誰だろうか…。ばっと後ろを振り向くと、見知らぬ赤い髪の男の子がいた。


「君、何してるの?」

『見てわからない?死のうとしてるの。こんな世界で生きている意味も理由も、何も無いもから』

赤の他人に、私はいったい何を言っているのだろうか…。本当に馬鹿みたいだと自重する。


「死ななかったら、良いことあるかもしれないよ?」

『ないよ、そんなの。今まで生きてきて良いことなんて一つもなかった』

「じゃあ、俺が理由になってあげる…だからさ…」


―俺と一緒に、生きてみない?―


『それは何かの同情のつもり?お願いだから私に関わらないで…私の邪魔をしないで。それに…私、貴方の事何もしらない。
だから言うことを聞く理由は無い』

「じゃぁさ、これから俺の事知っていってよ。」

『…意味、わからない…』


どうして私に構うの?私は取るに足らない人間なのよ?私なんか助けたって、良いことなんて一つも無い。


『私は誰にも必要とされてない。それは今も、これからも、何一つ変わらないの』

「それなら、今から俺が君を必要としてあげるよ」


ニッコリと笑いながら、彼は私に少しずつ近づいて来る。『来ないで』と叫んでも、彼は聞かずに近付いて来る。そして、いつの間にか彼は私の隣で、私の手を握っていた。


『あっ…』

「ここは危ないよ。こっちにおいで。」


ぎゅっと握られている手は温かくて、優しくて、私はどうしてもこの手を振り払うことが出来なかった。そして屋上の真ん中まで連れて来られた。手は…握られたままだった…。


『なんで、私なんかを…』

「わからないけど…俺、君には死んでほしくないんだよね」

『貴方、物好きなんだね。』

「はは、そうかも。あっ、俺は基山ヒロト。君は?」

『明…』


強い風が私と基山君の間に流れた。少しだけだけ生きている実感があった。少しだけ生きてみようかと思った。


私の世界が…


今、動き出した…


【生きる意味】
それを探す為に、私は彼と生きてみようと思います。
(まずは、名前しか知らない貴方を)
(少しずつ知ることから始めよう。)

END

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ヒロト好きだよ!変態ヒロトも好きだけどイケメンヒロトも好きです!