私はこの世に生きている価値なんてないんだと思う。無駄に生きるくらいなら、私は自由になりたいの。 物心つく前に、私の親は二人とも死んでしまった。頼れる人も守ってくれる人も私にはいない…ずっと、一人ぼっちで生きてきた。神様はどうして私をこんなにも不幸にしたいのだろうか。まるで、私だけが周りににおいてけぼりで、時間が止まってしまっているみたいだった。 屋上へと続く階段をゆっくり上がっていく。やけにいつもより静かで、まるでこの世に私以外の存在がいないような感覚だった。普通なら寂しいとか、心細く感じるところだけど、今の私にとっては、逆に心地がよかった。 壊れているフェンスを越える。下から勢いよく風が吹いていた。さぁ、もうすぐこの世からさよなら出来る…。これで、私だけの世界へと逝ける。 そう思いながら、一歩大きく踏み出そうとした瞬間…ガチャと屋上の扉が開かれる音がした。いったい誰だろうか…。ばっと後ろを振り向くと、見知らぬ赤い髪の男の子がいた。 「君、何してるの?」 『見てわからない?死のうとしてるの。こんな世界で生きている意味も理由も、何も無いもから』 赤の他人に、私はいったい何を言っているのだろうか…。本当に馬鹿みたいだと自重する。 「死ななかったら、良いことあるかもしれないよ?」 『ないよ、そんなの。今まで生きてきて良いことなんて一つもなかった』 「じゃあ、俺が理由になってあげる…だからさ…」 ―俺と一緒に、生きてみない?― 『それは何かの同情のつもり?お願いだから私に関わらないで…私の邪魔をしないで。それに…私、貴方の事何もしらない。 だから言うことを聞く理由は無い』 「じゃぁさ、これから俺の事知っていってよ。」 『…意味、わからない…』 どうして私に構うの?私は取るに足らない人間なのよ?私なんか助けたって、良いことなんて一つも無い。 『私は誰にも必要とされてない。それは今も、これからも、何一つ変わらないの』 「それなら、今から俺が君を必要としてあげるよ」 ニッコリと笑いながら、彼は私に少しずつ近づいて来る。『来ないで』と叫んでも、彼は聞かずに近付いて来る。そして、いつの間にか彼は私の隣で、私の手を握っていた。 『あっ…』 「ここは危ないよ。こっちにおいで。」 ぎゅっと握られている手は温かくて、優しくて、私はどうしてもこの手を振り払うことが出来なかった。そして屋上の真ん中まで連れて来られた。手は…握られたままだった…。 『なんで、私なんかを…』 「わからないけど…俺、君には死んでほしくないんだよね」 『貴方、物好きなんだね。』 「はは、そうかも。あっ、俺は基山ヒロト。君は?」 『明…』 強い風が私と基山君の間に流れた。少しだけだけ生きている実感があった。少しだけ生きてみようかと思った。 私の世界が… 今、動き出した… 【生きる意味】 それを探す為に、私は彼と生きてみようと思います。 (まずは、名前しか知らない貴方を) (少しずつ知ることから始めよう。) END ―――― ヒロト好きだよ!変態ヒロトも好きだけどイケメンヒロトも好きです! |