稲妻11 | ナノ



鈍感でバカな彼女。だけど、そんな彼女を好きになった俺は相当バカなんだろうな。
俺は明が好きだ。

勿論、それは鬼道さんや源田、帝国のみんなへのそれとはまた違う意味合いでだ。もし今、隣を歩く明を引き寄せ、両手いっぱいで抱擁する。彼女は驚いて固まるだろうからぎゅうと力を込めてさらに抱きしめたらいったいどうなるのだろう。

多分、我に返って、何するのっ!って文句を言うんだろうな。でも、そんな文句、俺は聞かない。そんな事を聞く前に彼女の唇を塞いでしまうのから。

最初は啄むようなフレンチなキス。けど、彼女はそんなものでは満足しない。淡白そうに見えて、彼女は見掛けに寄らず、快楽に従順なのだ。いつの間にか俺の背中に回された両手は俺の首へと上がり、揺れる瞳で悲願するのだ。


さ、くま、


『さ…、ま…佐久間っ!』

「っ!」


突然現れた目の前の彼女に俺は声を上げることも忘れるぐらい驚いてしまった。今だどくどくと鳴る心臓を鷲掴まんばかりに胸元をぎゅうと抑えていると、具合でも悪いの?、と心配そうに覗き込まれる。

なにお前、誘ってんの?

あぁ、そういえば、今日飛びついてくる成神に飴玉をあげてたな。まぁ、絶対成神は飴目当てで彼女に飛びついてきた訳でもない。(実際、「先輩、子ども扱いしないでくださいよー!」って叫んでたっけ?まっ、成神の奴その後飴旨そうに食ってたけど。)

いつだってそう、明は無防備過ぎる。嬉しい反面彼女の無防備さに少し不安になりながらも、ちょっと考え事してただけだ、と答えると彼女は晴れた顔こそはしないものの、そっか!、と一言云うとまた前を向いて歩き出す。

あぁ…くそ、我ながら情けない…。だがあの長い髪の下に隠れている白いうなじに触りたいなんて俺の脳内は早くも都合のよい世界に飛んでいこうとしている。

後ろからそっと、うなじに掛かる髪を撫で上げ唇を押し付けたら彼女はいったいどんな顔をするだろう…。いや、まず可愛い声を上げるだろうな。その後耳まで真っ赤にした顔でこっちを睨んでようやく絞り出した声で、さく、ま!って声を上げるんだ。その時の彼女の顔はきっと扇情的だろう

やばい、なんか考えてたら本当に明に触りたくなってきた。


「明!」

彼女の名前を呼び勢いよく彼女を呼び止める。振り返りきょとんとした顔つきで小首を傾げてくる明を前に、あれだけ出張ってたピンクの脳細胞は一瞬にして弾け飛び、真っ白な脳と声の効力だけが残ってしまった。

クエスチョンを頭に浮かべる彼女から見たら俺はさぞおかしいだろうが、意味もなく、あぁ…だの、うぅ…だの唸って、明を睨みつけおもむろに手を差し出した。

本当は抱きしめたり、キスしたり、口じゃ云えないようなことだってシたい…だけど…今は、手を握るだけで許してやる。だから早くこの手を握りに来い……!

俺の顔と差し出された手のひらを見た後、明は満面の笑みで駆け寄ってきた。そんな姿にきゅんとしたのも束の間…


『やだなぁ、佐久間。欲しかったなら素直に云えばいいのに』


ニコニコと笑う彼女の言葉と手のひらに載せられたものに俺は自分の考えの甘さを呪った。


『はいっ、飴!』

「っ、ちげぇよ!!!!!」

『えっ…いらない、の…?』

「はぁ……いる…」


今日も今日とて、俺は彼女に甘い。そして、彼女が理由の溜息がまた増えていく。


【いつか、必ず…】
俺を好きにさせてやる!
(まぁ、少しばかり)
(鈍感も対外にしろと)
(思うのが本音だ)

End