勿忘草

携帯電話が鳴った。
殺風景な部屋に置かれた、無機質な白いベッドに投げ捨てられている携帯電話。
その携帯電話の着信音が止まることなく鳴り響く。
その着信音に混じり、猫の三毛猫の鳴き声が聞こえる。
消え入りそうなその鳴き声は、泣き声に聞こえてくる。

私は突然、彼の前から姿を消した。
大好きな、愛しい彼の前から。

私の身体は、少しずつ蝕まれ続けている。
もう、数日もつか分からないほどに。
だから私は、愛しい愛しい彼の前から姿を消した。
彼に、忘れてもらうために。

携帯電話がなった。

殺風景な部屋に置かれた、無機質な白いベッドに投げ捨てられている携帯電話。
その携帯電話の着信音が止まることなく鳴り響く。
その着信音を止めようともせずに、ベッドに横たわる少女。
今にも泣き出しそうな瞳で、着信画面を見つめている。


(携帯電話がなった。)




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