陽かり

「7」それは特別な数字。


視界が霞み、崩れ落ちる。
消えゆく意識の中で見た空には7色の虹が輝いていた。


7月7日。七夕のその日、彼女は高い高い塔の上にいた。ジメジメした夏の暑さの中、空は厚い雲に覆われ、冷たい雨が降り注いでいた。


彼女はこの高い塔の上で、彼を待っている。長い黒髪が雨のせいで顔に張り付く。
待っても待っても彼は来ない。


いくら蒸し暑いと言っても、雨にさらされ続ければ、体温は奪われ、冷たくなって行く。


しかし彼女は、天に一番近い高い塔の上で待ち続けている。
待っても待っても、決して訪れることのない彼を。


毎日毎日、この日を待ち続けた。1年間恋い焦がれたこの日。
会いたい。抱きしめたい。心が苦しい。


彼女がこの世で最も愛したその人。彼もまた、彼女を心から愛した。一緒になろうと約束した。
ずっと一緒にいようと。7つの誓いを立て、二人の罪も背負った。


ただ、愛していただけだったのに。愛し合っていただけだったのに。


突然現れた別れ。脳が追いつかない。狂気の中で、彼女は別れを否定し、古来の物語にこじつけた。
彼女は現実が見えなくなっているのだ。
幻想に惑わされ、彼女は今この場所に立ち、彼を待ち続けている。
足に力が入らない。立っていることもままならない。
力が抜け、崩れ落ちる体。
冷たいアスファルトの上に叩きつけられる体。
朦朧とする意識。


雨が上がり、暖かい太陽の陽かりが降り注ぐ。雨の残骸が虹となって現れる。輝く陽かりの中、彼が現れた。
永遠の誓い。7つのキスを送り、二人で歩き出す。


(1年前の今日。7月7日のこの日。
彼は死んだのだ。)




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