闇 始まり どれくらいの時がたったか、太陽は完全に沈み、あたりは闇に包まれ、カラスの鳴き声だけが響きわたる。 食事の時間の始まりだ! 「彼」はカーテンを開け、空を見上げる。 今夜は満月。 妖しく鈍い光を放つ月。身体の底から力があふれてくる。月は力を満たしてくれる。 「彼」はその窓から飛び降りた。 「彼」のいた部屋は、屋敷の2階に当たる場所だ。 そんなところから飛び降りたのにもかかわらず、音一つたてずに、静かに地面に足を下ろ した。 部屋に風が舞い込む。 まるで、生きているかのようにカーテンがゆらゆらと揺れる。 「彼」が門の前まで行くと、ひとりでに門が開く。 「彼」の姿はもう無い。既に闇へと溶け込んでしまっていた。 [mokuji] [しおりを挟む] |