◆冬の幸せ、不幸せ(呂遼)◆


北国の幸不幸のあり方は簡単だ。
温かければ幸せ。
寒ければ不幸せ。
雪深いこんな季節は特に。



張遼は寝台の上で身じろいだ。
雪が全ての音を吸い取っているのか、外からは何の音も聴こえてはこない。
火鉢の密やかな明かりが壁に映っている。部屋の空気は温まり、布団の中は心地よい。
それでも。
もういちど体を反転させる。広い寝台の上には、自分ひとり。
こんなに温かいのに、何が不満だろう。
この厳しい季節に、凍えることなく温かい部屋で眠れる。
それはとても幸せなことなのに。
彼がいないというだけで、何故こんなに不幸せなのだろう。



呂布は首に巻いていた布を口元まで引き寄せた。
風はないが、キンと冷えた空気が肌を突き刺す。
全てを青く染める月明かりの下、馬に揺られ雪に覆われた道を進む。
張遼のもとを訪れるのはふた月ぶりで、今夜行くことは約束していない。
目が回るほどの忙しさから開放されて、真っ先に恋しく思ったのは、張遼の低い体温。
この季節に、わざわざ寒い思いをしてまで冷えに行くのかと苦笑する。
それでも。
苦笑は自然、笑みに変わる。
驚きのあと、嬉しそうに緩む顔を思い描くと、こんな寒さなどなんともなかった。
自分を喜んで迎え入れてくれる相手がいることは、なんて幸せなことだろう。



北国の幸不幸のあり方は簡単だ。
温かければ幸せ。
寒ければ不幸せ。

それでも時に、そうじゃない夜もあるのだ。


    * * *


張遼さんは体温が低い、と呂布殿はおもっているようですが、呂布殿の体温が高いだけで張遼さんのは普通なのです。


おまけ↓


「おひとりで共も連れずに…無用心にも程がありましょう!」

迎え入れてくれた相手は、想像とは少し、いや、かなり違う言葉を呂布に投げつけてきた。
確かに一城の主としては無用心な行動だったかもしれないが、自分は鬼神とまで謳われた呂布なのだ。
やや憮然としながら。
「嬉しくないのか?」
「嬉しいとか、そういう問題では…」
「早くお前に会いたかった」
嘘偽りない言葉を紡いでやるも、張遼の眉間には皺が寄せられる。
それでもその表情が照れ隠しなのだということが、ほんのり染まった頬でわかる。

「早く温めろ、手足が凍る」
言うと、ためらいがちに手が呂布の背にまわされた。
呂布の匂いを確かめるように首筋に顔を埋めてくる張遼の体を強く抱きしめる。
いつもは低く感じるのに、外から来たばかりの冷えた体にその体温は熱いくらいで。
唇で触れたこめかみの脈をいとおしく思っていると、

「嬉しくないはずがありましょうか…」
小さく、でも確かなその声に。
寒さで凝り固まった呂布の体が、一瞬で湯にでも浸かったように弛緩する。

ああ、やはり温かいのは幸せだ。

呂布は掻き抱く腕に力を込めた。


    * * *


寒くてもあったかくても相手がいれば幸せなようです。
バ、バカップルめ…!

かわいい呂遼が書きたかったのです。張遼が乙女でびっくりだ。
でも毎日呂布殿を想ってめそめそしてる子じゃあないのです。





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