「なに、それ」
「メロンでさァ」
メロンて化粧箱に入ってたっけ…。
そんな疑問は目の前の奴が説明してくれた。
「なんでか知らねェんですが最近よく貰うんでさァ。うちじゃ食いきれなくて」
なんでか知らないけど、ってそんな理由で化粧箱入りのメロン貰うような家だった、そう言えば。
しかし初めて見た、こんなお行儀のイイメロンは。
美味しいのか?なんて聞く方が無粋だ。
「食うか」
「おれも?」
「飽きたか?」
「いえ、食べまさァ」
家でどういう食べ方してるか、なんて聞いたところで実行できない。
そしておれはここ数年メロンなんて食べてない。
メロンの記憶と言えば幼い頃、母親が出してくれたことのみ。
その時の切り方が、
「えぇ?」
「贅沢な食い方と言えばこれだろ」
真っ二つのみ、だ。
「食ったことねェ?」
「へい、初めてでさァ」
「うめぇぞ、きっと」
いただきます、と手を合わせてスプーンで果肉を掬う。
口に放り込んだ瞬間、顔が輝いた。
「うめェだろ?」
首が上下に揺れて、次々と総悟の口の中に消えていった。
そしておれも、と口に入れる。
口の中でとろけていく、おれ今幸せの絶頂。
「、家では、キレイに切ったヤツばっかりだったから」
「口いっぱい頬張るってのもたまにはいいだろ?」
キレイに皮だけ残して完食。いい食いっぷりだ。
あまりにも美味そうに食べるから、おれのスプーンに乗っていた分も口に放り込んでやる。
「んまいです」
「そりゃ良かったな」
それを繰り返して、気付けばおれの分も無くなった。
残された皮を見て慌てふためく総悟。
「ご、ごめんなさい…」
「いや、お前が美味そうに食うからおれも腹いっぱいだ」
ごちそーさん、美味かった。
言って頭を撫でれば、また持ってきますと赤い顔で答えた。