夜が明ける。
白ける空、活動を始める動物、新聞配達のバイクの音。
寝なきゃ、と決意するのはこの数時間で何度目だろう。
その決意はことごとく折れる。
隣にいる彼のせいで。
「今日…講義が…」
「わかってる」
「わかってねェでしょう…」
クーラーの効いた部屋、そのベットの上。
眠ろうとするとイタズラに触られて、眠いと言っても彼には届かない。
はいはいと生返事、そしてまたイタズラを再開する。
「眠いのか?」
「うーん…」
「なら起きてろよ」
そういう問題じゃない。
あんたはさっき仕事終わったばかりだからいいだろうけど、おれはもう数時間で大学に行かなきゃいけないのに。
そうやって抵抗らしい抵抗もせず、甘んじつつ躱しつつ、のらりくらりで今に至る。
「土方さん、」
「んー?」
「ご機嫌のところ悪ィんですが、もう朝ですぜ。ほら、」
空が青を纏っていく。
真っ白い雲が、飛ぶ鳥が、今か今かと陽の訪れを待っていた。
澄んでいた空気に熱が籠り始めたら、カウントダウンが始まる。
「…総悟」
「なんですかィ?」
「サボっちまえよ」
「何言ってんですかィ」
「…はは、だよな」
寂しげな声色に、思わず絆されそうになった。
体に回されてる腕が締まる。
彼のあざとさは、こういうことを天然でやってしまうということ。
「午前だけ、ですぜ」
「…へー」
「アンタが寝てる間に行ってくるんでさ」
「うん」
「だから、」
「待ってる」
総悟大好き、と酒臭い口で言って彼は早々に寝てしまった。
言いたいことは山ほどあるけど、でも。
今は昇り始めた朝日に背を向けて、彼と一緒に後数時間眠ろう。