「土方ァ、アイス食いてェ」
「金欠だ、たかんな」
陽の高い帰り道。
夕焼け小焼けはもう少し先だ。
じりじりと焦げるアスファルト、照り返しと言わんばかりに眩しい。
暑い、ただただ暑い。
「あーづーいー」
「うるせーよ」
このままだと溶けていきそうだ。
どろどろになってそのうち蒸発して、跡形もなく消えてしまう。
おれがいなくなったら、
「アンタ、寂しい?」
「わかんねェ、何がどうしてそうなった」
例えば、だ。
溶けて空気と一体になるなら、後には何も残らない。
いきなり消えたおれを、アンタは探す?
泣いて喚いて悲しんでくれる?
「おれは、」
「なんだよ」
「アンタがいなくなったら寂しい」
例えば、だ。
断片だけでも残っていてくれたら、おれはきっと生きていける。
廃人になろうとも、きっとそれに縋って生きていく。
何も残らないなら。
…想像もしたくない、いなくならないで。
「土方さん、」
「わかった、暑すぎて頭沸いてんだな。あ●きバーなら買ってやる」
「聞いてーでもやったー」
あぁ溶ける溶ける。
暑さに紛れた本音は、溶けずに伝わっただろうか。
「ねェ、土方さん?」