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頬に感じるピリリとした痛み
アキラは泣きそうな目で俺を睨んでいた………



然の危機



仕事が長引き、急いで家に帰る。日付が変わろうとしていたが、家の明かりはまだあった。
玄関を開け、中に入るとアキラが椅子に座っていた。


「ただい…「サチコ、元気か?」

俺は言葉を失った。
…なにやら電話で話しているようだが…


今、アキラは何て言った?


『悪いな、今日は少し具合が悪くて仕事を早めに切り上げたんだ。
…あぁ、お前には言っておかないといけなかったよな。……あぁ、そうなんだ。
…変わってもらってもいいか?
…サチコ、大丈夫か?明日は必ず体調を治して相手してやるからな。
…あぁ、もしもし?じゃあ午後6時に駅前の○○マンションの602で。
…わかった。明日仕事帰りに直接行く。んじゃ』

電話をゆっくり切り、その瞬間俺の存在に気づいたようでアキラはとても驚いた顔をした。

「…あ…おかえり「誰だ、サチコとやらは」

俺が睨むとアキラは困ったような表情を見せた。

「…サチコは…その…犬だ。」

「犬だと?」

「…あぁ…。」

言いたくない理由は何だろう。
もしかしたら……

「何故そんなに動揺しているんだ。話を聞かれたらマズイ理由でもあるのか?」

「…それは…」

目を泳がせ、合わせようとしないのが更に俺を苛立たせた。


「言いたくないのなら言わなくていい。ただし、俺もそれ相応の態度を取らせてもらうがな。」

アキラが口を開き、何かを言いかけたが俺は無視して部屋に入った。



犬というのは本当だろうか?…ならどうしてそんなに動揺したのだろう…
アキラの浮気を真っ先に疑う。
そんなはずはないと思いつつもアキラが電話中に感じた俺と接するときとは違う柔らかな声色に俺自身も混乱した。
どうしても会話の中の『…サチコ、大丈夫か?明日は必ず体調を治して相手してやるからな。』が気になり、その言葉が眠りにつくまで何度も何度もリピートされていた………





(side⇒AKIRA)

俺が働くペットショップでは、販売の隣でペットクリニックをやっている。
サチコはそのペットクリニックに預けられ治療を受けている犬だ。
あの時は同じ時期に入った社員とサチコの話をしていたのだ。
シキに『サチコは犬で、少しの間サチコに声を聞かせてやりたくて電話した』など…。言ったところで信じてもらえないような気がしてならなかった。

きっとシキは浮気だなんだと勘違いをしているに違いない。
あの時すぐに誤解を解いておくべきだったのだろうか…?


「おはよう。」

「……。」


そのまま一言も口を聞かずにシキは家を出て行った。


「困ったな……」


俺はテーブルに突っ伏した。



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