黒髪に交じる白煙



髪に交じる白煙



「へぇ…シキって煙草吸うのか。」

「あ?あぁ。何だ、知らなかったのか。」

「見たことなかった。」


ある日の夜、シキが庭に出て煙草を吸っているのをアキラが見たのだった。
器用に肺に取り込み、吐き出している。


「お前も吸うか?」

「あ、いや。いい。」

前に一度だけ吸ったことがあるが、あれはなんというか…また吸いたいと思うような美味いものではなかった。


「会社で吸ってるのか?」

「休憩中に…な。まぁ、吸う暇もあまりないが。」

「へぇ。煙草ってストレス発散できるとか源泉のオッサンが前に言ってたけど、どうなんだ?」

「ストレス発散…まぁ…発散というか、俺はただ口が寂しいだけだな。」


それなら煙草なんて身体に害があるものじゃなくてガムなどを食べればいいものを…とアキラは思う。


「ガム?あれは口が疲れる。何時間も噛んでいると歯が痛くなる気がする。」

「…あぁ、確かに。」


アキラが納得している間に、シキが二本目の煙草に火を点けた。
長い煙草が白い煙を出しながら空中を漂う。
右手の人差し指と中指で挟んで吸う様子にアキラはドキッとした。
目を細めて吐き出されるそれはとても害があるもののようには思えなかった。

「…?どうした」

「あ…え…いや、なんでもない。」


まさか自分がシキの煙草を吸う姿に惹かれていたなどと言えるはずもなく、慌てて視線を外した。

一度意識してしまうと普通には見れなくなり、アキラは俯いてしまった。

「何だ、さっきから。匂いが嫌なら先に家に入れ。それに、そんな姿だと風邪をひく。」

シキに指摘され、自分の手を擦り合わせた。

言われてみれば手の感覚がない。
身体も心なしか震えているように感じた。
風呂上りのパジャマ姿でこんな時期に外に出たのは間違いだったと後悔した。

シキは溜息をつくと自分が羽織っているロングコートのボタンを外し、こっちに来いと手招きした。

「ほら。」

「でも…」

「ここにいるのなら早く入れ。」

「…っ…」

ゆっくりとアキラがシキのコートに一緒に入った。
身体が密着して温かい。
冷えた身体が徐々に元に戻っていくのを感じた。

「…温かい。」

「もう少しで吸い終わる。待ってろ。」

「わかった」


目線を上にやるとシキの左の頬が見えた。
家の中の明かりしかないため、よくは見えなかったが、外気にさらされているせいか赤くなっていた。
モゾモゾとアキラはシキのコートから両手を出すとシキの頬に手を当てた。

「ほら、暖かいだろ。」

「…馬鹿が。手を出すな。風邪をひくだろう。」

短くなった煙草を灰皿に入れ、空いた両手でアキラの手を掴み、再びコートの中に手を戻された。
また両手が温かくなる。
そのまま二人はその場で暫く無言でいた。

「シキ。」

「…何だ」


アキラはシキのほうに向き合うように体勢を変えると少し背伸びをしてシキの唇に自分のそれをそっと重ね合わせた。
すぐに離すと今度はシキが噛み付くようなキスをしてきた。


「んっ…んふ…、っ…」

舌を捩じ込まれ、深く交わる。

しばらくしてシキが唇を離すと涙目になったアキラが短く息を吐いて呼吸を整えていた。

「自分からそんなことをしてくるなんて珍しいな。」

「…何となく…したくなった。」

「ほう。」

シキが口端を吊り上げる。

「でもやっぱり…煙草の味は駄目だ…」

他の人間には見せたことの無い純粋な笑みを見せたアキラ。
シキもそれに答えるように微笑みながら家に入ったのだった………




end



はい、シキアキ夫婦強化週間2日目です!いかがでしたでしょうか?
いやはや、甘すぎて吐きそうでした(夢と希望がリバースしそうでした)。
シキが煙草を吸う姿は絶対にカッコイイと思います。
でも、このネタで書くのではなく、軍服ならもっとかっこよかったんじゃないかなぁ…と思います。
シキアキ夫婦はこのくらい甘くていいと思います(笑)

よろしければ感想お聞かせください。



2009.12.20



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