下剋上



「抵抗出来ない………」



剋上







「…ん……シキ…、ぅ…もう…」

「…あと少しだ。我慢しろ」

「…無理…出そうっ…」

「いや、頼むからここで出すな。」


別に『そういうこと』をしているわけではない。
今の会話はアキラをおぶって夜の河原を歩く二人の会話である。


「電話が繋かって出てみれば『アキラが酔ってフラフラで歩けないから迎えに来てくれ』だと?会社帰りの俺にそんな疲れるようなことをさせるんだお前は。」

「…ごめ…」

「仕事仲間と初めての飲み会だからとそんなに張り切る理由がわからん。」

「…ごめん…」

シキの声がビンビン響く。
意識が朦朧としているアキラはあまりよく聞いていない様子だ。


「それと…お前、結婚したことを店長に言わなかったのか?俺が店に入った時、変な目で見られたぞ。」

「…あ…言った。言ったんらけどー…同性結婚ってことまでは言ってにゃかったよ…」

…言葉も満足に話せないのか…


シキは呆れた顔でアキラを見た。



店長の話によると、アキラは最初こそチビチビと酒を飲んでいたらしいが、次第にピッチが上がりだし、止めても聞かなくなりいきなり倒れたのだという。


「…普段酒を飲まない奴が勢いよく飲むとこうなることくらい想像ついただろ。…全くあれほど飲むなと口を酸っぱくして忠告してやったのに……?……アキラ?」

「……。」


いい加減に相槌を打っていたと思えば今度は寝ている。

耳元にかかるアキラの寝息にシキはなんとか理性を保ちつつ家に帰ったのだった。





***



布団を敷き、アキラを横たわらせる。
グニャっと力無くアキラは横になった。

その無防備な姿に何かしたいシキだったが、流石にアキラがそんな状態のときに手を出すわけにはいかない。

「…人の気も知らずに……ん?」

立ち上がろうとした時にシキの服をアキラが掴んでいた。

「シキ……」

「…どうし…っ!!」


酔っ払いのアキラのどこにそんな力が残っていたのか。
勢いよくシキの肩を押してアキラが組み敷く形になる。
咄嗟のことにシキは戸惑った。


「な…何だ」

「…シキさ…いつもこんなふうに俺のこと見てるんだよな…」

クスクス笑うアキラを見て嫌な予感がし始める。


「たまにはさ…シキが下になってもいいんじゃないか…?」

「…何馬鹿なことを言っているんだお前は。」

あくまで強気に言うが、明らかに語尾が尻上がりになっている。
いつもなら無理矢理腕を掴んで体制をひっくり返すことくらいわけない。
だが、今日のアキラは普段出さない力を出しているようで、全く抵抗出来なかった。

「寝ぼけているようなら早く寝ろ。」

「寝ぼけてなんかいない。…あれ…シキどうした?…身体が硬直してる…あ…もしかしてこの体制…経験ないから怖がってる…?」

とろんとした目でシキをじっと見る。
いつもとは違う柔らかな口調で話し、肌を高潮させたアキラは淫靡だった。



不意にアキラの右手がシキの服の中に入る。温かい掌で身体を触られると何とも言えない感覚が身体の中から沸き起こる。

「…アキ…ラ…待て」

「何?シキ感じちゃってるの?」

「やめろ!」

シキの言葉に全く耳を貸さず、反応を楽しむかのようにアキラは行為をエスカレートさせていく。

「…っ…はっ…」

シキが自分の口を塞ごうとするが、アキラに纏め上げられてしまっているためにできない。

経験のない甘い感覚と自分自身も聞いたことがないような声に狼狽する。


サディスティックに笑うアキラ。


(このままでは…犯される…)


アキラの手がシキの立ち上がったソレに手を延ばそうとしている。


シキは硬く閉じた……………



「……?」


身体にのしかかる一人分の体重。
目を開けるとアキラがシキの上に倒れていた。


「…アキラ。」

「………。」


名前を呼ぶが返事はない。代わりに聞こえてきたのは規則正しい寝息だった。


「…全く。」


シキはため息をついたが、内心ヒヤヒヤしていた。


もしあのまま続けられたら……


考えたくもない。

シキは自分のものの処理をどうしようか考えながら、アキラを寝かせてやったのだった………




***

「……シキ…」

「目が覚めたか。」

シキが先に朝食を摂っていたので、慌ててアキラも布団から出ようとした。…が、


「…っ……」

腰に全く力が入らず立ち上がれなかった。


「…俺のせいじゃない。」

「嘘つけ。」

「…あの後、お前を布団に寝かせてやったというのに、急に跳び起きて…「嘘だ!」

そう、あの後アキラが急に起きて、「…やっぱり抱いて」と抱き着いてきたのだ。
予想外の展開に戸惑いを隠せないシキだったが、自身のソレの処理にも困っていたので好都合だった……というわけだ。


「…俺は酔ってなかった!」

「じゃあどうして俺がお前を迎えに飲み屋まで行かなければいかんかったんだ?そんなに酔ってないと言い張るのであれば店長に聞いてみたらどうだ?」

ビシッとシキに言われてアキラは黙り込む。

「…アキラ、帰ってからのことも記憶にないのか?」

「…俺がシキにヤられたんだろ?」

「他には?」


シキの問い掛けにアキラは首を傾げた。
昨晩、アキラがシキを押し倒したことも全て記憶にないという。

「…覚えていないのならそれでいい。」

「どういう意味だよ」

「さっ、行ってくる。」

朝食を食べ終えたシキは自分の分の食器を片付け、仕事に行く準備を始めた。

「…他って……何だ…?」


モヤモヤした気持ちでアキラは仕事に行ったのだった。



***

「アキラ。いい旦那さんをもらったな。」

仕事場のペットショップに着くなり、いきなり店長に肩を叩かれる。

「へっ?」

「礼儀正しい真面目な人なんだな。」


…何を言っているのだろうか。


「礼儀正しい…?」

「飲み屋に迎えに来るなり『迷惑をかけた』と頭を下げて謝ったんだ。『これからも嫁がお世話になります。』とか言ってお前をおぶって出て行ったんだ。」

シキの態度にアキラは驚いた。
常に『俺様口調』のシキが敬語を使うなんて想像がつかない。…まぁ、『嫁』という言葉に若干反応したが、社会のモラルはあることがわかったので指摘するのは免除することにした。

「…でもな、アキラ。」

「??」

「あまり店の中で旦那にべたつくのはよくないぞ。『早く帰ってやろう』とかも言ってたな。……やっぱりそういうこともしてる仲なのか?」

「ち、ちち違います!」


明らかに動揺するアキラ。
そんな様子に店長は苦笑している。



その日は一日中店長と顔を合わせることが出来ないアキラだった………





end


お読みくださりありがとうございます!
アキラ×シキ?でした!(途中まで)
サディスティックに微笑むアキラはいかほどのものかと気になる夏野です(笑)

シキの喘ぎ…聞きたくないですね←
ホントはあのまま続けてもよかったんですが、流石に私がギブアップでした。

アキシキ…いつか書けたらいいですね(他人事)

よろしければ感想お聞かせください。



2009.10.20



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