戦績は最悪だった。何が原因でこうなったのかも、今は考えられなかった。頭が割れそうな程痛い。たぶんあの魔女に攻撃されたせいだろう。記憶なんてものはないがあの魔女は俺にとって宿敵であって、お互い憎んでいないと保たれない関係なんだろうと思う。まあ秩序とか混沌とかそういったラベルがなくても、仲良くなるなんてことは出来そうにないのだけれど。ああ頭痛がひどい。今日は誰とも話したくない。具合が悪いというのもそうだが負け戦をしてきたのだ。醜態を晒すわけにはいかない。

選ぼうにも選択肢はあまり良いものが残っていなかった。そもそも、何も聞かないでくれる、という奴らはとても少ない。皆言葉をかけてきたりそういう空気を醸し出したりと親切極まりないのだ。それだから親切極まりない仲間のうちで不親切そうな人間を探さなければならない。本当はカインあたりがよかった。彼は何も言わないでいてくれる。けれど彼は遠征に出たという。今日は戻ってきてはくれないようだ。それじゃあ多少の説教は我慢してライトニングか、とも思ったが彼女は女性だった(すっかり忘れていたのは彼女の戦闘技術が優れていたからだ)。仕方なく、放っておいてくれそうな奴ということで俺は普段あまりそばに寄ることのない奴を選択した。ただそれだけだ。別に他意はない。

「……」

食事を終えてテントへと引っ込んできたが予想通り彼はこちらに関心を寄せていない。沈黙が続いている。今はそれがとても有難かった。本当は誰かのそばにいるのも嫌だった。でも誰かがいてくれる場所にいたいとも思ってしまう。あまりにも矛盾した感情に苛まれて体を丸めたくなる。本当の自分なんて恐ろしいものはもっともっと深いところにしまっておくべきだ。全部この頭痛のせいだ。痛みで視界がぐらぐらと揺れる。もしかしたら自分が揺れているのかもしれないがそれもわからない。ズキズキと痛む額を押さえてきつく目を瞑った。

「あまり気にしない方がいい」
「……?」

意味不明。顔を上げると彼がこちらを見ている。当てが外れたらしい。のそり、と彼が動いた。狭いテントの中で距離が少し近づく。

「…なんか用か」
「特には」

彼は、クラウドはこちらに合わせた視線を外さない。外してくれない。とても居心地が悪いと思った。不親切そうな、俺を放っておいてくれそうな奴として選んだというのに、これじゃあ大外れだ。クラウドの視線から逃げたくて地面を見つめることを選んだ。

「誰もスコールを責めたりしない」
「あ?」

それでもクラウドはじりじりとこちらへと近づいてきて、そしてそんな台詞を吐いた。

「恰好悪いところを見せたって誰もスコールを嫌いにならない」

クラウドの熱い手のひらが額と目をを覆った。クラウド、あんたの言ってること、全部的外れだ。さっさと離れてくれ。頭が痛いんだ、あんたの手は暖かいからもっとひどくなる。

「おやすみ、スコール」

気付けば横たわっている体。言おうと思ったことは何一つ音にならない。クラウドの手のひらが動く。前髪をかきあげられたのか閉じた瞳が光を感じる。クラウドの指が何度も髪を梳く。そして、額に優しい感触があった。瞼を持ち上げればクラウドがとても近い。覚えている。これは、あの頃たくさんたくさんもらったおやすみのキスだ。懐かしい記憶にそのまま突き動かされて、離れていこうとするクラウドを捕まえてその頬にキスをした。そうしたらクラウドは少し驚いた顔をして早く寝ろと言いランプの灯を消した。ああ、おやすみ、また明日。もうそれで良い気がして目を瞑る。きっとあんたは何もわかっていないのになんでだか優しくて、それがどうにも欲しかったもののような気がして。
(ぜんぶがぜんぶどうでもよくなってしまった)

20140613
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