ゆめ(白鳥沢) | ナノ
 はやく おとなになりたいな



「おっすー、天童いるー? 昨日貸した英和辞典返してもら…」ガラガラ


「やっぴー…巴じゃん…午前練ぶりー…」ドヨーン


うわキッモ!? 無駄に明るいのだけが取り柄の天童が落ち込んでる!? どしたよ、腹でも壊したか?」


「なんでも、子供の頃から大好きだったお菓子会社のチョコアイスが製造終了しちゃったんだって…。それにしたって、そこまで落ち込まなくても」


「空知ちゃんにはわかってない! 最推しのアイスが奪われる悲しみがどれほどのものか! あのチョコアイスと他社のチョコアイスとじゃ、味、触感、食後の満足感に至るまで全てが違うワケよ! なのにもう二度と食べられなくなるとか…そんなのってないよ〜!」ビエーン


「まー確かに、昔から大好きなものが急に無くなるって悲しいもんな」


「でしょ!? 3歳の頃からずっと一緒に育ってきたチョコアイスだったんだよ!? オレの身体の8割はあのチョコアイスで出来てるんだよ!? オレの身長のうち170cmはあのチョコアイスが占めてるんだよ!?」


「逆に残りの17cmは何なんだよ」


「か、可哀想ではあるけど…。他のチョコアイスを食べ比べしてみて、似た味のものを探すしかないね」


「それが嫌なら自分で作るしかねーな!」


「……」ピクリ







数日後


「お、おい巴! お前天童に何言った!?」


「へ? どしたよ瀬見、そんなに慌てて」


「天童のヤツ、進路の第一希望に『パリ留学』、志望動機に『ショコラティエになるから』って書いて提出したって担任が面食らってたぞ!?


「…そんなにチョコアイス食いたいのかアイツ…」






2020年7月20日、天童ショコラティエショック記念。






全校集会中


「ああ栄光の白鳥沢〜♪」


「「……」」ジー


「な、なんだよ戸鷹姉妹、校歌斉唱中に人のことじっと見て」


「いや、瀬見ってめちゃくちゃ意外なことに良い声してるなって思って」


「そうそう、思いの外かっこいい歌声してるなって思って」


「ナチュラルにちょっとずつ失礼だな! そうかあ? 自分ではよくわかんねえな、カラオケとか行くのは好きだけど」


「いや、案外バンドとか向いてるかもよ」


「瀬見、そこそこ手を出しやすい感じのイケメンだからバンギャにモテそう」


「そんで性欲に負けて出待ちの女の子とワンナイトラブしちゃって成り行きで付き合ったりしてそう」


「勝手に最低な未来図を描くな!!! そんな不誠実なことするか!!!」


「まーそれは冗談として、今度昼休みに軽音部の機材借りて杏樹とバンド練習するんだけど、瀬見もやろーよ」


「バンドやるんなら楽器の1つくらいできてた方が曲作る時とか便利だよ」


「いや俺は別にバンドやりたいとは言ってねえしまあ興味がないわけではないけど…」ウズウズ







瀬見くんのバンドは絶対にプログレ(偏見)







「しかし当然っちゃあ当然だけど、うちのバレー部はプロ志望の奴ばっかだな」


「そういう英太くんは高校で辞めることないんじゃない? 大学バレーで頑張ってプロ入りってのも十分選択肢だと思うけど」


「現役中に白布からスタメン取り返せてたらそういう手もあっただろうけど、それができなかったからな。俺の選手としての天井はここだ、でもそのことに悔いはないよ」


「か、カッコい〜! 野武士のような潔さだよ、英太くん!」


「あれ、天童と瀬見だ。何の話してんの?」ヒョコッ


「おう、巴。うちのバレー部はプロ志望ばっかだよなって話だよ」


「そういや女子は巴以外にプロ志望いんの?」


「は? 何言ってんだ天童、あたしはプロにはなんねーぞ」


「「は?」」


「ちょっ、ちょっとちょっと、マジで言ってんの!? 巴みたいな『俺より強い奴に会いに行く』を地でいく奴が!? プロにならない!?」


「強敵との試合が好きすぎてバレー専門の戦闘狂と化してるお前が!? 高校でバレー辞めるのか!?」


それは褒めてんのか貶してんのかどっちだよ。プロになりたくない訳じゃないけど、あたしには小っちゃい頃からの夢があるからな! あとバレーは大学でも続けるし、生涯辞めねえ!」


「じゃあ結局何になるんだよ?」


「それはだな…長くなってきたから次回話すわ!


「というわけで次回は『大人になった白鳥沢女バレの未来図』をお送りするヨー!」


「オチが思いつかないからって小賢しい真似すんな!!!」






次回に続く。


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -