ゆめ(白鳥沢) | ナノ
 後輩たちのショウ・マスト・ゴー・オン


これまでのあらすじ(?)
梟谷時代のチームメイト、小見が出演する舞台の千秋楽を見に来た木兎と、面白そうなのでついてきた宮侑と、半ば無理やり連れてこられた佐久早。(日向はブラジル行ってるのでいません)
舞台は無事盛況に終わり、せっかくだからと打ち上げに招かれたMSBYジャッカルズだったが…?








「それにしても頑張ってんじゃん、小見やん! 途中の水バシャバシャかかってくるとことか超楽しかった!」


「いや木兎、あそこ入水のシーンだから。楽しむところじゃないから。あとバシャバシャっていうほど水量多くないし」


「マジでありえない…客席に水飛んでくる演出あるって知ってたらこのジャケット着てこなかったのに…絶対に宮からクリーニング代ぶん取る」


なんでそんなピンポイントで俺なん!? 拗ねてる臣くんはさておき、なかなかアバンギャルドな舞台やったなぁ…。あの『やる気元気!』って感じのリベロの人が意外やわぁ」


「王道からアングラ寄りまで色んな演目をやる劇団なんだよ。次は来年の5月に新作やるからまた観に来てくれよな」


「あっ、そうだ! 小見やん、確か同じ劇団のスタッフに彼女いんだろ!? 俺まだ紹介してもらってないんだけど!」


「うわっ、突拍子もないな! わーったよ、紹介するから座れ! おーい、泉澄!」


「どうかしました、小見さん? …ってMSBYの木兎選手に、宮選手に、佐久早選手じゃないですか」


「あれっ、俺らのこと知ってるん? しかも天照ジャパンのとかならまだしもMSBY出してくるって、相当バレー好きやんな?」


「私も高校までバレーやってましたから。一応全国も出たことあります」


「うちの劇団の美術スタッフの今藤泉澄っていうんだ。お互い元リベロってので意気投合して、半年前くらいから付き合ってる」


「へー! 泉澄ちゃん、小見やんを選ぶとはなかなか見る目あんな! 全国出たってことはどっか強豪出身?」


「はい、白鳥沢の出身です。お三方もよく知ってる牛島さんが先輩でした」


「若利くん…」ピクリ


「うわ、臣くんのセンサー反応してもうた! ほんま若利くんのこと好っきゃなー」


「お前ごときが気安く若利くんの名前を呼ぶんじゃねえよ、もぎ取んぞ」


なにを!? 女の子の前でそんなエゲツないこと言うのやめてな!」


(何だろうこの既視感…。五色にキレてる時の白布を思い出す…)


「そういや泉澄、打ち上げに早房ちゃん呼んでたんだっけ? あの子も白鳥沢バレー部出身だし、せっかくだから呼んできなよ」


「えっ…まあ小見さんがいいんならいいですけど…」ドンヨリ


「なんや、すごい渋い顔やな。ハヤブサちゃんとやらと仲悪いん?」


「誰か私のこと呼びましたかー?」ヒョコッ


「わ、背高けーね! 何センチ?」


「最後に測った時は179.4cmとかだったと思いますけど。…っていうかMSBYの主力3人じゃないですか! 泉澄、どういう状況これ!?」


「小見さんが木兎選手と高校の同期で、その縁で舞台を見に来てくれたの。お三方に紹介しますね、私の高校の同期でエーススパイカーだった早房美羽です」


「早房ちゃんはシナリオライターやってて、有名なドラマのシナリオとかめっちゃ手掛けてるんだよ。『パープルデイズ』とか『中学教師』とか」


「マジで!? すげーじゃん、『パープルデイズ』俺見てた! 主演の灰羽アリサちゃん超可愛かった!」


「女子のモンジェネも各方面で活躍してるんやなぁ。2人はプロには進まなかったん?」


「私はもともと高校で辞めるつもりで、プロでやっていけるほどの素質も無かったので。美羽は幾つかのチームからスカウトされてたんですけど…」


「光栄ではあったけど…小鳩さんのいないチームでバレーをする不毛さにあれ以上耐えられなくて…」ドンヨリ


「小鳩サン? そういや俺らの一個上の代の、『高校女子バレー界の王子様』とか言われてた女子の選手がそんな名前ちゃうかったっけ?」


「小鳩さんのことご存知なんですか!? ならちょうどよかった、東京来てから小鳩さんの魅力を語れる人が泉澄くらいしかいなくて悶々としてたんですよ!! ちょっと語らせてもらっていいですか!?」


「は、はぁ…?」ビクッ


「この間テレ東をつけたらカ◯ブリア宮殿に麗しの小鳩さんが出演してましてですね!! 超速で録画してDVDにも焼いて永久保存版にしましたよね!! 相も変わらず小鳩さんはお美しくて、最近は仕事をしていく上での責任感とかからか以前より更に堂々としたお顔をするようになられて、もう私は小鳩さん主演で一本ドラマを書き上げたい衝動に駆られまして、まあ実際に書きましたよね!!」ハァハァ


「…ええーっと…ハヤブサちゃん…?」


「私も芸能界の隅っこにいる人間として色んな美人女優さんやらモデルさんやらとお会いしてきましたけど、やっぱり小鳩さんに敵うお人が一向に出てこないんですよね!! まあ小鳩さんが芸能界に現れたら業界大騒然の大混乱ですからね!! 千年に一度どころか万年に一度の大逸材ですから!! まあでも芸能界なんてそれなりに汚い場所ですし、私の最愛の小鳩さんに悪い虫でも寄り付こうものなら私が黙ってないので、全然今のままでいいんですけど!!」ハァハァ


「すみません、こいつこういう病気なんで放っておいてあげてください」


「白鳥沢って親衛隊気質な奴多くない? あの無駄に態度デカい若利くん親衛隊のセッターといい」


「臣くん的にはあれ親衛隊のカテゴリなんや…。変態のカテゴリに片足突っ込んでると思うねんけど…」


「何にせよ小見やんが役者頑張ってて可愛い彼女もいて、元気そーでよかったわ! また一緒に飯とか飲みに行こーな!」


「この流れでそれが言えるお前がすげーよ」







早房美羽(25)
シナリオライター。若くして数多くの青春ドラマのシナリオを手がける。相も変わらず小鳩厨。

今藤泉澄(25)
大手劇団の舞台美術スタッフ。小見やんと付き合ってる。相も変わらず美羽に辛辣。








「……」ズシーン


「まあ飲め賢二郎、お前の選択は間違ってなかったと思うよ。実際もう半年以上会えてなかったんだろ? いくら相手の為だからって、好きな人に別れを切り出すなんてなかなかできることじゃないよ。賢二郎の男気を見たね俺は」


「まあな…。だけどかなり無理して大人ぶったという自覚があるだけにしんどい…。俺まだ小鳩さんのこと好きなのに…」


「別にお互い嫌いになったわけじゃないんだし、ちゃんと小まめに連絡取ってアプローチかけつつ、お互いの仕事が落ち着いてきたタイミングで上手いことヨリ戻せば? っつーか何も別れなくてもこれを機に同棲とかしちゃえばよかったじゃん」


「太一、お前な…。研修医の俺と大企業でバリバリ働いて自分のマンションまで持ってる小鳩さんとじゃ、収入がまるで釣り合わないんだぞ。そんな状態で同棲でもしてみろ、男の面目丸潰れだろ」


「別にこのご時世、男が稼いで女を養おうなんて古い価値観気にしなくていいのに。っていうか今でもフリーター生活してる立派な低所得者の俺の前でよくそんなこと言えるなお前


「お前は好きでフリーター生活してるからいいだろ。今藤から聞いたぞ、舞台の打ち上げで使った居酒屋でお前が馬車馬の如く働かされてたって」


「あーそうそう、偶然だけど会ったわ。何故かMSBYの木兎と宮と佐久早も一緒にいたんだよな、あの時」


「は? 佐久早ってあの牛島さんに対してやけに馴れ馴れしい元井闥山の? 毒のひとつでも盛ってこいよ何やってんだ太一」


「お前その発言は医者として完全アウトじゃない?」









白布と小鳩が付き合った経緯はこちらの『白鳥沢主将が報われる話』を参照。



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